スマートフォン向けゲームアプリ「ポケモンGO」(Pokemon GO)が、2016年7月に米国などで先行配信されました。リリース直後からたいへんな人気で、すでに社会現象と化しています。大小さまざまなポケモンGO関連ニュースが連日のように報じられています。
7月半ば現在、日本での配信開始はまだ準備中。詳しい情報もなかなか日本語では見つかりません。こんな状況だからこそ、英語圏のニュースメディアを直接読むことに大きな価値が見いだせます。
ポケモンGOはどんなゲームか、海外におけるポケモンGOの評価や受け入れられ方、米国社会などで生じつつある影響や余波なども合わせて知ることができるでしょう。そして首を長くして国内配信を待ちましょう。
Pokemon GO とは
ポケモンGO(正式な表記は「Pokémon GO」)は、株式会社ポケモンが提供するスマートフォン向けのゲームアプリです。基本無料で遊べます。2016年7月6日に米国、オーストラリアなど数カ国での配信が開始されました。
ポケモンGOは、任天堂の代表的コンテンツの一つであり世界的知名度を誇る「ポケモン」の最新作であり、任天堂がスマホゲーに初めて参入したタイト ルでもあります。さらに、GPSにより取得される位置情報との連動・連携、カメラを通して現実と仮想世界を融合させる「仮想現実」(AR)技術の高度な導入といった画期的な要素が、話題性を高めています。
言ってしまえば、スマホ越しとはいえ現実世界を舞台に野生のポケモンを探して「ポケモン ゲットだぜーッ!」ができるゲームなのです。
自分があの「ポケモントレーナー」になれるという醍醐味。かつてポケモンに熱中した世代が熱狂するのも無理はありません。
「AR」とは
ポケモンGOの機能的特徴として上げられる技術がAugmented Reality 、略してAR、日本語でいうなら「拡張現実」です。
ひと昔前にバーチャルリアリティ(Virtual Reality)が次世代技術として注目されましたが、ARとVRはちょっと違います。ひとことで言えば、VRは完全な仮想世界・仮想空間であり、ARはあくまで現実世界に依拠しつつ仮想世界を重ねた、いわば「拡張された現実世界」です。
The Wall Street Journal はARを次のように解説しています。
これは拡張現実(ARともいう)である。スマホのカメラとGPS、位置センサーが、ゲーム画面の表示や位置を告げる。現実世界の上にデジタル世界を上乗せしているのだ。バーチャル・リアリティは人を異次元の世界に連れて行くが、それとは違って、自分自身の世界でゲームを楽しむことができる。
―― ‘Pokémon Go’: Why You Should Play
ポケモンGOの影響
リリース直後からポケモンGOは単なる人気ゲームの枠では語れないほどの影響をもたらしています。全米がポケモンフィーバー。実際に Pokémon fever と形容されている記事も多数見られます。
リリース直後からものすごい勢い
先行配信の中心的地域となったアメリカでは、配信から1週間も経ないうちに750万ダウンロードという数字が記録されています。
ポケモンGOが米国だけで少なくとも750万ダウンロード、一日あたり売り上げが160万ドルに達する ―― Forbes, JUL 11, 2016(※リリース5日後の報道)
スマホゲーのビッグタイトル「パズドラ」の場合、日本国内で配信開始から累計DL数が500万を突破するまで約10ヵ月かかっています。条件が異なるため単 純な比較はできませんが、それでもポケモンのバケモノ度合いが分かります。(パスドラは2016年前半までに累計4000万DLを突破しています)
The Wall Street Journal は、ポケモンがもたらした熱狂を craze と表現しています。
「ポケモンGO」は、アメリカを始め、オーストラリア、ニュージーランド、ヨーロッパ諸国の一部で大流行しています。そのゲームは国から国へどんどん広まっています。 ―― The Wall Street Journal, July 15, 2016
この一文で動詞として用いられている roll out は、マーケティング用語としては「新商品や新サービスを初めて世に出す」という意味で主に用いられますが、名詞 roll-out の「徐々に広がって(拡散して)いく」という含意も読み取れそうです。
ポケモンGOはリアル交流をもたらす
拡張現実+位置ゲーという要素により、ポケモンGOは「屋外に出て自分の足で探検する」という醍醐味を人々に与えています。
そして「引きこもりの息子が久々に外出した!」という話や、公園でポケモン探索していた女の子と仲良くなれた!」といった話もチラホラ出ています。
ポケモンGOにドハマリする人も多く、仕事を辞めてポケモン収集に取り組む人も出始める始末です。
ポケモンGOは中毒者を量産する
The Wall Street Journal では、「これに当てはまったら助けが必要」として、「ポケモンGO」中毒者の特徴を挙げています。
- After walking into your 47th lamppost, you no longer notice the shooting pain in your leg.
47本目の街灯柱にぶつかっても、もはや足に痛みを感じない。
- The backup battery you bought because your phone keeps dying is three times the size of your phone.
スマホの電池がすぐに切れるため新たに購入した予備のバッテリーはスマホの3倍の大きさだ
- When driving, you ignore Waze’s suggested route because, come on, have you ever seen a street with this many Poké Stops lit with Lure Modules?!
運転中、ルアーモジュール(ポケモンを集めることができるアイテム)が使用されたたくさんのポケストップがある通りを見つけたため、カーナビが提案したルートを無視した
12 Signs You’re Playing Too Much ‘Pokémon Go’-The Wall Street Journal, July 14, 2016
「ポケモンGO」中毒を示す12の兆候-The Wall Street Journal, July 14, 2016
アメリカンジョーク的な誇張めいた話っぽい、という所感と、天下のWSJ(日本でいえば日経新聞みたいなもん)が冗談を飛ばすかしら?という所感が入り交じって、冗談とも本気とも取れない文言になっています。
ちょっとした騒動も出始めている
ポケモンGOは「歩きスマホ」状態を誘発する、という側面もあります。対策は講じられていますが、防ぎきれない部分はどうしても出てきているようです。
カリフォルニアで男性が海に転落
配信開始から1週間くらい経過した頃、ゲームに熱中しすぎた男性らが海に落ちる事件がありました。
サンディエゴで、「ポケモンGO」で遊んでいた2人の男性が40フィートほど海の絶壁から落ち、救助された
―― California Men Fall Off Ocean Bluff While Playing Pokémon Go in Fenced-Off Area; TIME, July 14, 2016
ピッツバーグで女の子が車にはねられる
往来の激しい道路を渡っていた女の子が車にはねられる事故が起きました。道路を渡る際に「ポケモンGO」で遊んでいた、と見られています。ただし本人は否定していますが。
(事故に遭った女の子の母親は)「親御さん方、子どもたちにこのゲームをさせてはいけません。私が昨晩体験したような思いをしたくないのでしょう。私は本当に娘を失ったかと思いました。」
―― Pennsylvania Teenager Hit By Car While Playing Pokémon Go-TIME, July 13, 2016
個人宅が公共施設と認識されて人だかりを招く
内部データに現実との齟齬があって住民の困惑を招いたという事例も報じられています。
彼は何かがおかしいことに気が付いた。自宅がアプリ内でゲーム利用者達がポケモンで戦える「ジム」に設定されていたのだ。・・・彼が BuzzFeed に話したところによると、日曜日の夜までに50人ほどの人々が歩いたり車に乗ったりして彼の家に来て、ゲームをするためになかなか帰らなかったそうな。
――Pokémon Go Players Converge on Man’s Home After It Was Marked as a Gym-TIME, July 11, 2016
なぜか韓国北朝鮮でもブームの兆しが早々に
ポケモンGOの人気は、先行配信地区に指定されていないはずの朝鮮半島にも及んでいます。韓国と北朝鮮の国境にほど近い一部の地区でなぜかポケモンGOがプレイできることが判明し、国境付近を訪れる韓国人が続出しています。
平和といえば平和なニュースなのでしょう。
今回紹介した主なメディア(定期購読の勧め)
「ポケモンGO」はスマホ向けゲームのタイトルであり、娯楽産業やコンテンツといった部類の話題なのですが、社会的にも経済的にも他のゲームとは桁違いの影響を及ぼしています。
任天堂の株価は急増し、Pokenomics(ポケノミクス)という造語まで登場する始末です。今後もリアル店舗の集客に寄与するビジネス展開や、ポケモン事態の育成・バトル・交換といった機能の実装が控えており、ますます世間を賑わしていくことが予想されます。
興味ある話題を追跡するという動機は、学習を苦学と意識せず継続する絶好の要因です。海外のポケモン情勢がちょっと気になった方は、ニュースメディアで動向をつぶさにチェックしてみてはいかがでしょうか。