英語で読む時事ニュース:中東・シリア・アレッポ情勢

2016年半ば現在の国際的ニュースといえば、まずはアメリカ大統領選挙の話題などがよく取り沙汰されていますが、中東の地域では紛争が激化して混迷を極めていることもまた見過ごせません。

紛争の舞台アレッポ(Aleppo)の基礎知識

今般の中東情勢ではAlepo(アレッポ)という地名がよく登場します。アレッポはシリアの北西部に位置する都市です。トルコとの国境付近に位置しており、中東情勢に詳しいメディア「アルジャジーラ」の調べでは現在の人口は170万人ほどです。

この地域で、イスラム過激派の武装勢力「IS」と、ISの制圧に乗り出しているシリア・ロシア両国政府の連合軍が衝突しています。アレッポには非戦闘民もたくさん居り、爆撃の巻き添を食う危機に晒されています。

シリア情勢のアナリストである Ammar Waqqaf (アマール・ワクフ)はこう語っています。

Apart from Aleppo being the largest city in Syria and the economic capital, whose recapturing would be of a military and psychological significance, liberating this particular city would be a boost to the Syrian government’s popular legitimacy.
シリア一番の街であり、経済的な首都でもあるアレッポを奪還はシリア政府にとって軍事的および精神的な重要性があります。そしてこの街を反政府軍から開放することでシリア政府の支持率に多大な影響を及ぼすことが考えられます
――Why Aleppo matters―Al Jazeera
A win for the government in Aleppo would convince the armed rebellion that its fall is not imminent. People on the opposition side would be bound to ask questions on the sanity of continuing a fight and a suffering with no achievable goal on the horizon, which should lead to them attending the negotiations table with more realistic demands.
アレッポでの勝利は反政府軍に「もはや敗戦は必死」と感じさせることができるかもしれません。そして彼らは価値が見出せない紛争を続けることの意味を自問するようになり、これが彼らを現実的な要求をするための交渉の席に着かせることに繋がるかもしれません。
――Why Aleppo matters―Al Jazeera

このような事情があり、アレッポでとても過激な紛争が続いていると考えられます。

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衝突激化の前後の経緯

紛争が激化する以前、アメリカとロシアは一旦はアレッポの紛争を止めるように協議を進めていました。しかしロシア軍がアレッポに侵攻したことによってこの協議は中止になってしまいました。

On September 19th Syrian and Russian planes struck a convoy about to deliver aid to besieged parts of Aleppo. The attack wrecked the ceasefire brokered by America and Russia, and was followed by the worst bombardment that the ancient city has yet seen.
9月19日にアレッポで包囲されている地域の援助という名目でシリアとロシアは軍隊を送り込んだ。しかしこの行為がアメリカとロシアで進められていたアレッポでの停戦協議を台無しにしてしまい、それ以来アレッポは爆撃にさらされている
――Grozny rules in Aleppo―,October, 1, 2016
Bashar al-Assad, Syria’s president, is destroying his country to cling to power. And Vladimir Putin, the Russian president, is exporting the scorched-earth methods
シリアのアサド大統領は権力を手放すまいと自らの国を破壊することをやめず、さらに(連合関係にある)ロシアのプーチン大統領はその地で焦土作戦を決行している
――Grozny rules in Aleppo―,October, 1, 2016

国際情勢への影響

これを受けて国際情勢も反応しました。2014年のロシアのクリミア侵攻以来ロシアと旧西側諸国はアメリカやその同盟国がロシアに経済制裁をするなど緊張関係に陥っていましたが、ここ最近はそれが和らいできていました。しかし、ここにきてロシアがアレッポに爆撃を行ったことで、またもや両陣営に緊張が走っています。

その一端として、プーチン大統領は予定されていたフランス訪問を取りやめました。

Hollande said that Russian action in Syria in support of President Bashar al-Assad is “unacceptable”
(フランス大統領の)オーランド氏はシリアにおけるロシアのアサド大統領への援助を「受け入れがたい」と言った
――Hollande Weighs Putin Talks Amid ‘Unacceptable’ Syria Action―,October, 10, 2016
President Vladimir Putin canceled a visit to Paris, the latest turn in the downward spiral of Russia’s relations with the U.S. and its allies, after his French counterpart Francois Hollande scolded the Kremlin over its bombing campaign in Syria.
不のスパイラルに陥っているアメリカとその同盟国とロシアの関係の新たな局面として、ロシアのプーチン大統領はフランス訪問をキャンセルしました。これ以前に、フランスのオーランド大統領はシリア(アレッポ)への爆撃についてロシアを批判していました。
――Putin Cancels Paris Visit After Hollande Warns Russia on Syria―,October, 11, 2016

難度の高い記述の読み進め方

英語圏の一般向けの(学習者向けというわけではない)新聞・雑誌は、とりわけ政治経済や国際情勢などを扱った記事では、日常英会話とはまた違った語彙や文章表現が多く用いられる傾向があります。

精読か斜め読みか

記事を読み進める中で、よく理解できない文章表現に出くわした際には、「いったん立ち止まって詳しく分析する」方法と、「大まかな把握に留めてそのまま進む」方法があり得ます。

どちらか一方が絶対的に善であって他方が悪というわけではありません。どちらが適切かは、状況や好みによっても違ってくるでしょう。「情報を仕入れるために読み進める」、「英語の理解を深めるために立ち止まる」、どちらもアリです。そのつど方法を変える方法もあるでしょう。

ただ、モノによっては、一度理解できてしまえば次回以降は迷うことなく理解できるという性質の文章表現などもあるので、初めのうちはできるだけ精読寄りの読み方を意識した方がよいと言えるかもしれません。

日本の報道メディアからも中東情勢に関する情報は得られます。あらかじめ日本語ソースで概要を把握してから英語メディアの報道に接すると、文章の理解も捗り、知見も広がって、効率的なに知識が得られます。ぜひ試してみてください。

今回参照したメディア(雑誌)

The Economist

Bloomberg Businessweek


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