和製英語に要注意! それはネイティブが使わない英語・ネイティブに通じない英語です。でも中には、いかにも和製英語っぽい響きのちゃんとした英語表現もあります。
そんな微妙な英語表現、今回のお題は「コストカット」。
「コストカット」はれっきとした英語だが基本的に使われない
日本語でいうコストカットは、日本語に置き換えるなら「経費削減」あるいは「費用の切り詰め」といった程度の意味合い。というよりも、「経費(cost)削減(cut)」と単に横文字で置き換えただけという使われ方をしているキーワードです。
cost reduction の方が無難
英語では、「費用削減」という意味では cost reduction が一般的に用いられています。
reduction は主に「削減」と訳される名詞で、「縮小」「低減」のニュアンスを中心とします。「緊縮」と訳してもよいかもしれません。
なお reduction の動詞形は reduce です。
でも cost cut も使われる
英語の cut は「切る」という意味を基本とする語ですが、「削減する」「切り詰める」という意味合いでも使われます。いわゆる「コスト削減」の意味で cut が用いられる場合もあります。
cost cutting という表現は一般的にも用いられています。また、 cut costs という言い方も普通に使われます。コストカッター(cost cutter)もかなり多く用いられている表現です。
日本人は cut の品詞に要注意
日本人が cost cut という表現で陥りやすい罠、それが cost cut を「コストをカットする」と直接当てはめて捉えてしまう考え方です。
英語は 主語 + 動詞 +目的語 という構成を基本とする言語ですから、cut が動詞であるならば cut costs のような語順が普通の形です。
cost reduction という表現は《名詞+名詞》、つまり この cost は「名詞の形容詞的用法」ということになります。そして cut は動詞としても名詞としても使える。cost cut の cut は動詞ではなく名詞であると理解しなければつじつまが合いません。
でもやっぱり cost cut は使われる
「コストカット」という表現は和製英語的な考え方に陥りやすい危険ワードです。しかし和製英語かというと必ずしもそうとは言い切れません。英語圏でも cost cut の語が用いられる例があります。
- Can Goldman Sachs Cost Cut Its Way to Profitability? – Bloomberg
- Cliffs Natural Resources Shares Soar on Cost Cut Boost – Bloomberg
- VW Identifies $2 Billion in Savings as Cost-Cut Push Takes Shape – Bloomberg
- Air France makes new cost-cut proposals to pilots – Daily Mail
- F1 teams agree engine cost cut plan to keep V6s until 2020 – Motorsport Network
- Anglo should cost cut – Independent Online
– Deccan Chronicle, Heart of the matter: Unwanted implant of stents raises concern
– Profit Confidential, TSLA Stock: Could This Country Curb Tesla Motors Inc’s Growth?
– BBC Sport, Kilmarnock playing to save jobs, says manager Lee Clark
cost cut の品詞扱いは微妙きわまる
英語圏における cost cut の使用例を見ていると、使われ方が幅広くて戸惑いを覚えます。
「A cost cut was done ~」や「some kind of cost cut」といった記述ではcost cut は名詞として扱われています。
「Anglo should cost cut」や「clubs are relegated and have to cost-cut ~」では動詞として扱われています。
「Cost Cut Boost」や「new cost-cut proposals」は、名詞が連なる、いわるゆ名詞の形容詞的用法。
この辺の感覚はネイティブスピーカーならではの言語感覚というか機微が発揮されていると考えないと仕方ない域ではと思います。
結論
「コスト削減」を英語で表現する言い方としては、ひとまず cost cut は避けて cost reduction と表現するのが無難でしょう。