野球(baseball)はアメリカの国民的なスポーツ。生活文化にも深く浸透しており、ビジネスシーンでも野球に因んだ表現が慣用表現として用いられることがしばしばあります。
野球もビジネスも技術と駆け引きがモノをいう勝負の世界。通じるところは多いのかもしれません。
あくまでも口語的な比喩表現であり、多分にジャーゴン的な言い方でもあるので、かしこまった場面でことさらに使おうとはしない方が無難でしょう。
球場・塁・回に関する表現
in the ballpark
おおむね正確・妥当な範囲内
in the ballpark は文字通りにいえば「球場の中で」という意味ですが、ビジネスシーンでは「妥当な範囲内で」「数量がほぼ正確で」といった意味合いの表現として使えます。
彼女の返答はまあ妥当なものだった
この数字は正しいの?
? They are in the right ballpark.
ほぼ正確です。
ballpark 自体、球場という意味の他に「おおむね正確」という意味合いがあります。主に価格やコストといった金額的な数値を形容する言い方のようです。
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off base
見当違いもいいところ
off base は、出塁した走者が塁(ベース)から離れている状態を指します。ビジネスシーンでは全くの見当違い、アテが外れているさま、明後日の方向を向いている様子を指して用いられることがあります。
彼の説明は的外れだったため困惑してしまった
私自身が間違っていることに気が付いた
見当違いという意味合いの他に「不意に」という意味合いもあります。
touch all the bases
手順通り全てこなす
touch all (the) bases は、塁をすべて踏むということを指しますが、他方「完璧に行う」「必要な承認をすべて得る」という意味もあります。
手続きを全て経て本塁に帰還する(得点する)というニュアンスの感じられる言い方です。
cover all the bases とも言い換えられます。
打ち合わせが始まる前に、全て必要なことを準備したのか確認し直しなさい
the bottom of the ninth
最後のチャンス
the bottom of the ninth (inning) は「9回裏」、つまり、もう後がない最後の行動機会を意味します。
この提案をする最後のチャンスになるでしょう
野球の回の裏表は「裏」がbottom、「表」は top といいます。「回」は inning(イニング)。
投・打・走に関する表現
right off the bat
すぐに、ただちに
right off the bat は「すぐに」(immediately)に対応する意味合いの口語表現です。打ったボールがすぐに飛んでいく、という意味合いが土台にあるのでしょうか。
off the bat でも同じ意味、right off も同じ意味です。
彼に手伝ってくれるよう頼んだら、すぐに良いよと返事をくれた
彼が嘘を付いていることはすぐにわかった
throw a curve
くせのある事をする
throw a curve (throw a curve ball)は「カーブボールを投げる」という意味の表現。ビジネスシーンなどでは「予期せぬことをして驚かせる」といった意味で用いられることがあります。
日本語で「思わぬ変化球が飛んで来た」というような言い方をすることはあります。
あの会社は、去年の夏、空前の売り上げで私たちを驚かせた
play hardball
毅然とした態度を取る
play hardball は「硬いボールで試合をする」つまり「硬球を使用する」という意味で、ビジネスシーンではこれが「厳しく扱う」「断固とした態度をとる」という意味で用いられることがあります。
軟式ではないよ、強硬な方で臨むよ、という感覚が伝わります。
経営陣は私たちとの交渉で強硬姿勢を見せています
彼は彼に逆らう人たちには手加減をしない人です
hit it out of the park
素晴らしい成果をあげる
hit it out of the park は直訳すると「ボールを球場の外に飛ばす」つまり「場外ホームランを飛ばす」という意味の言い方です。転じて、「華々しい成果を達成する」「劇的な成功を果たす」という意味で用いられることがあります。
その新人は、プレゼンテーションで劇的に成功した
彼は私たちのオフィスで華々しい成果を達成した