「病は気から」は英語では Fancy may kill or cure. あるいは Your mind controls your body. といった言い方で表現できます。どちらも定型的な英語ことわざ表現です。
定型フレーズでなくても、たとえば「心の持ちようが大切」という風に表現すれば、「病は気から」の趣旨は十分に表現できます。言いたいことをかみ砕いて言い換える力を身につけましょう。
「病は気から」に対応する英語のことわざ・慣用句
「気の持ちようは健康を左右する大事な要素である」という考え方は、洋の東西を問わず普遍的に見られます。最近では科学的にも妥当性が実証されつつあるそうです。
Fancy may kill or cure.
生きるも死ぬも考えかた次第
Fancy may kill or cure. は、文字通りに捉えれば「空想で人は死にもするし治りもする」といった意味合いの慣用フレーズです。少し気の利いた訳し方としては「死ぬか助かるかは考えかた次第」といった訳文にもできます。
fancy は多種多様な意味・用法のある語で、名詞としては「幻想」「気まぐれ」「恋愛感情」のような意味がありますが、Fancy may kill or cure. の fancy は「空想」「想像」つまり非現実的な思い巡らしを指しています。
kill or cure は、これ単独では「生かすか殺すか」すなわち「イチかバチか」を表現する語です。ハンパはあり得ない、大成功か壊滅かという2択になる状況を示します。
Care killed a cat.
心配事は体に毒
Care killed a cat. は、直訳すれば「気がかりが猫を殺した」といった感じでしょうか。これは「心配事は猫さえも死に追い遣る(くらい体に毒だ)」という趣旨を述べる英語のことわざ表現です。
西欧文化には、猫は9つの生命を持つ(めったなことでは死なない)動物である、という言い伝えがあります。それほどタフな猫ですら「心配事」にかかれば命を落とす、いわんや人をや、というわけです。
Care killed a cat. は、過度の心労・気苦労は体に悪いと戒める慣用表現といえます。「病は気から」とは部分的に相通じる表現といえるでしょう。
Curiosity killed the cat.
Care killed a cat. とほぼ同じ言い回しで、Curiosity killed the cat.(好奇心は命取り)という慣用表現もあります。実際のところ Curiosity killed the cat. の方が一般的で、Care ~ は Curiosity ~の類型(もじり)と言うべきかもしれません。
The Imaginary Invalid
The Imaginary Invalid は、17世紀フランスで活躍した戯曲作家・モリエール(Molière)の作品タイトル(の英語訳)です。原題は Le Malade imaginaire 。そして邦題が「病は気から」。
The Imaginary Invalid をそのまま和訳すれば「想像上の病人」あるいは「想像が人を病弱にする」とも訳せるでしょうか。いずれにせよ「病は気から」の主眼を言い当てた表現です。
The Imaginary Invalid はあくまでも戯曲のタイトルであり、日常会話で用いられるほど人口に膾炙した言い回しというわけではありません。ちょっと気取った場面では引き合いに出す機会があるかもしれません。
ちなみに戯曲「病は気から」は、主人公が医者に騙されて自分を重病だと思い込んだことから始まるドタバタ喜劇です。当時の権威主義に染まった医者を風刺した作品と言われています。
「心が体を左右する」という形で「病は気から」を表現する英語の言い方
ことわざ・慣用句として定型フレーズ化している表現に頼らなくても、自分の言葉で「病は気から」の趣旨を表現することもできます。
むしろ自分の言葉でかみ砕いて表現した方が、言わんとすることは伝えやすいかもしれません。平易な英語でも十分に表現できます。
Disease starts in mind.
病は心から生まれる
もし日本語表現の「病は気から」を英語に直訳するなら、Disease starts in mind. のような言い方になるでしょう。これはこれで十分に通じる言い方といえます。
この Disease starts in mind. という言い回しは、ことわざのような定型的フレーズとして確立しているわけではありませんが、「病は気から」的な趣旨を表現する言い方として用いられることはあります。
Disease starts in mind, even it is pathogens if one is aware of body and mental hygene then it never affects.Jey
— C.J.JEYACHANDER (@basixinc) 2012年9月18日
disease (病)は illness や sickness にも置き換えられます。
- Illness starts in mind.
- Sickness starts in mind.
動詞は、start や begin のような「始まる」といった意味の単語を用いると「気の持ちようが病気の発端である」という意味合いを色濃く示すフレーズになりますが、これを be動詞にして Disease is all in mind. のように表現すると「病気に関わることは全て気の持ちよう次第である」というような普遍的ニュアンスの濃い英語フレーズにできます。
Your mind controls your body.
心が体に影響を及ぼす
Your mind controls your body. は「心のありようが健康を左右する」という意味合いで「病は気から」の趣旨を表現できる英語表現です。
動詞 control は「支配」「操作」とも訳せますが、相互に影響し左右し合うという程度の意味合いとも捉えられます。
The mind controls the body.
英語の格言・ことわざ系のフレーズでは、主語・主格に you や your ~ が用いられます。「(君も含めて)人は皆」というニュアンスでしょう。
学術的な記述では your のような表現は避けられ、替わりに定冠詞 the を用いて The mind controls the body. のように述べる言い方が好まれます。
The mind controls the body. は実際に医学的な(主に体と心の関係性についての)論議において用いられる表現でもあります。
心が体に影響しているのかそれとも体が心に影響しているのか?
――The Planning Lab, March, 2008
「病は~」を「何事も~」に換えた方が通りのよい英語になるかも
Your mind controls your body. は特に「病」について述べているわけではないので、「病は気から」の趣旨に限らず、「気落ちが体に影響を及ぼす」という趣旨で幅広く使える英語表現です。
たとえば「気合いを入れれば肉体の限界を超えられる」というような激励のフレーズとしても使えますし、無理と思われたことを成し遂げた要因として「あれこれ考えず気持ちだけで乗り切った」と述懐するフレーズとしても使えます。
試合の間は勝つことだけ考えてました。気合で体が動いたって感じです
Your mind controls your health.
body を health と言い換えれば、「心が健康に影響を及ぼす」ということで、より「病は気から」に近い趣旨が表現できます。
It’s all mental.
全ては精神的なこと
「何事も気の持ちよう次第だ」という趣旨を表現する言い方としては It’s all mental. も挙げられます。
mental は「精神の」「精神的な」「心的な」といった意味の形容詞です。対義語が physical (身体的な)。
It’s All Mental: On the Power of the Mind
ぜんぶ気の持ちよう、精神力次第
―― Huffpost, 04/28/2014
It’s all up here.
全てはココ次第
It’s all up here. は「ぜんぶこの中だよ」という趣旨で用いられる英語表現です。
この表現そのものに「病は~」という趣旨は含まれておらず、単に場所を指し示すだけの意味で用いられます。
頭(脳)を指して「ここだよ」と示すような動作と共に使えば、文脈によっては十分に「それは精神的な部分によるものだ」=「気の持ちようだよ」という趣旨が示せます。
Neil: "You've got to have some sort of system"
David: "It's all up here" pic.twitter.com/Qhonl73W2c— David Brent (@DavidBrentMovie) 2014年10月4日
「幸せな気持ちが健康にとって一番」と述べる英語表現
あくまでも前向きに捉えるなら、「笑うことは健康にいい」(笑う門には福来たる)という切り口で表現する手もあります。
「ものごとを悪く考えるのはよくない」という言い方は、どうしてもネガティブ寄りの発言になってしまいます。「心が元気ハツラツなら体もイキイキするよ」という風に言い換えれば、純粋にポジティブな発言に転換できるというわけです。前向きな方が
Laughter is the best medicine.
笑いは最高の良薬
Laughter is the best medicine. は「笑うことが一番の薬」という意味合いの慣用フレーズです。「病は気から」をポジティブにひっくり返した言い回しとして使えそうです。
Fortune comes to a merry home.
円満な家庭には幸運が舞い込む
Fortune comes to a merry home. は「笑う門には福来たる」に対応する英語の慣用表現です。home (家庭)に関する表現なので、個人的事情としての「病は気から」に対応させようとすると難しい部分もありますが、文脈次第では有力な言い換え表現の候補になるでしょう。