「脚フェチ」や「わきフェチ」のような表現で用いられる「~フェチ」に対応する英語表現としては fetish が挙げられます。fetish は英語でも「盲目的な愛好・崇拝」というような意味で用いられます。
I have a glasses fetish. あるいは I have a fetish for glasses. といった叙述で「めがねフェチです」という旨が示せます。
Yes I do have a glasses fetish pic.twitter.com/tmMYZfpR5N
— AHAM I L A A G (@AHAM_I_L_A_A_G) 2018年11月19日
貴方は何フェチ? おっぱい、ふともも、めがね、ポニテ、白衣・・・
Yes I do have a glasses fetish
はい私はめがねフェチであります
ただし fetish の語には多かれ少なかれ「性的倒錯」「性的興奮の対象」という性愛のニュアンスを含みます。基本的に赤裸々な話題です。言及するにしても時と場合を選びましょう。まあこれは日本語の「フェチ」も同様ではありますが。
べつに性的ニュアンスを含むわけではなく、単に「すごく好き」「グッとくる」くらいの意味合いを表現するだけなら、あえて fetish の語を用いることもなく、 have a thing for ~(たまらなく好き)とか obsessed with ~(夢中になっている)とか、very fond of ~(大好き)とか、あるいは love とか like とか、その手の語を使うのも手でしょう。
「フェチ」は英語では主に fetish で表現できる
日本語の「フェチ」は、フェティシズム(fetishism)ないしはフェティッシュ(fetish)を略した表現といえます。
fetishism は特定の対象に盲目的傾倒を示すというコト(概念)を指す語であり、fetish はそういう盲目的傾倒の対象となるモノそのものを指す語です。どちらも名詞です。
fetish の原義は「呪物」「物神」「物神崇拝(の対象)」という宗教学上の概念です。これがフロイト心理学において「倒錯的な性的嗜好」を指す語として転用され、さらに日常会話レベルでは「体の特定パーツ等に異様にソソられる」という意味合いで用いられています。
fetish の語には《異常なまでの執着や崇拝》のニュアンスがあり、かつ、多分に性的・倒錯的なニュアンスがあります。日本人が「わたし筋肉フェチなのよ~~」と言うような軽い使い方は、あまりしない、と考えた方が得策です。
とはいえ Twitter なんかでは軽いノリで fetish に言及したツイートも多々あります。
Twitter は個人の赤裸々な部分を打ち明けやすいメディアです。「fetish には性的倒錯とか熱狂的愛好のニュアンスが含まれる」という部分を念頭に起き、やっぱり fetish がシックリ来ると判断される場面も少なくないのでしょう。
「~フェチ」は ~ fetish もしくは fetish for ~ と表現できる
名詞的に「脚フェチ」「靴フェチ」のように述べる場合は、名詞の形容詞的用法、つまり leg fetish のように名詞を並べる形で表現できます。
‘My girlfriend said she’d indulge my women’s tights fetish but I’m still waiting’ https://t.co/p70vf5gdTD pic.twitter.com/Cg8K0gaNRe
— The Sun (@TheSun) 2019年1月8日
カノジョが僕のタイツフェチの欲求を満足させてあげるって言ってたんだけど未だに叶ってない
フェチの対象を後ろに配置する場合、前置詞 for を伴って fetish for leg のように表現します。文章として「~フェチだ」と叙述する場合は fetish for ~ の形も多く用いられます。
「フェチである」は動詞 have を使って叙述できる
「~フェチである」という風に文章で叙述する場合は have a ~ fetish という表現が使えます。同様に have a fetish for ~ とも表現できます。
彼女はにおいフェチだ
シンデレラは足フェチ王子の物語である
動詞 have は必ずしも「手に持つ」という動作を指すとは限らず、むしろ「そういう特徴がある」「そういう性質を備えている」「癖がある」というような、抽象的付帯の意味合いで多く用いられます。「おっぱいが大きい」も動詞 have で表現できます。
I have an underwear fetish ??♂️
— Django (@HabbySlap94) 2019年1月30日
下着フェチ、なんだよね
偏執的フェチは make a fetish of ~ と表現できる
動詞 make の目的語に fetish を置いて make a fetish of ~ と叙述すると「(~に)執着する」「(~を)盲目的に崇拝する」というような強烈な執着度合いを示す言い方になります。前置詞は of が用いられます。
make a fetish of ~ の偏執的ニュアンスは、もはや日本語の「フェチ」の軽さからは懸け離れています。性的倒錯の意味合いに限らず、幅広い対象に「異常なまでに執着心を持つ」という意味で用いられます。
過去を美化するとき、人は苦しみに執着している
――The Guardian, 16 Sep 2012
make a fetish of は動詞 fetishize で言い換え可
fetish を動詞化した fetishize という語もあります。これは「執着する」「崇拝する」「やみくもに崇拝する」というような意味で、ほぼ 《fetishize = make a fetish of》の同義語関係と捉えられます。
つまり fetishize も日本語の「めがねフェチ」「おなかフェチ」のような軽さで使うには難があります。
fetishism は英語ではあんまり使われない硬い表現
fetish に関連する語としては fetishism (フェティシズム)も挙げられますが、fetishism はもっぱら学術的な文脈で用いられるカタい語彙です。日常会話レベルではもっぱら fetish が用いられます。
なお英語では fetish や fetisism を略して feti のように言うことはありません。「フェチ」は日本語における省略形です。たまに見られる「フェチズム」という表記は誤記の類といってよいでしょう。
あえて fetish と言わずにフェチを表現する言い方
なんか無性に好き、というようなニュアンスの「フェチ」なら fetish という語を用いることなく表現する手も選べます。
have a thing for ~ で「~が好き」
「~が好きである」という意味を表すイディオムに have a thing for ~ があります。 a thing は抽象的で想像力を掻き立てる表現です。英語にはこのように、あえて明言しないという粋な言い回しが時折登場します。
have a thing for ~ は日本語で言うならば「特別な感情を持っている」に言い換えられます。ただもう少し軽く、口語的に用いられることの方が多いイディオムなので、「~に目がない」「~に夢中」「~が好きでたまらない」などと訳されます。
I have a thing for girls who have glasses
— Alexis (@alexis6_) 2019年1月30日
メガネっ娘がこの上なく好き
この単純に強く好きであるという気持ちがより深く怪しい方向性に進んでいくと、 thing はもっと明確な fetish に置き換えられ、have a fetish for ~ という表現に変わるわけです。
obsessed with ~ で「~に取りつかれている」
「~で頭がいっぱいである」「~中毒である」という状態は英語で obsessed with ~ と表されます。obsess は「取りつく」という意味の他動詞で、受動態に変えて「~に取りつかれている」と言い換える大げさな、でもとても頻繁に用いられるイディオムです。
obsess の単語自体はネガティブなニュアンスを持ちますが、「好きすぎて頭から離れなくて困っている」のように逆手にとって良い意味を表すこともできます。
名詞形は obsession
obsess の名詞形は obsession です。fetish より語義は広いのですが、ほぼ同義として用いられる場合が多いと言えます。
体の部位などへのフェチを表す際に用いると、性的な意味合いが非常に濃くなるので使いどころには注意が必要です。
シンプルに「大好き」と表現するなら love
偏執的な意味合いはないものの、強い「好き」という気持ちを表す love もフェチを表現する際に使える英語表現です。
むしろ日本語の「~フェチ」という話題は、「~好き」とほぼ同じ程度の軽さで話されているように思われます。好きなものについて気軽に話すような場面ではぴたりとくる表現だと言えるでしょう。
変な趣味なんだけど…と前置きを入れるなら I know ~ but …
フェチについて語られる際に多分に含まれる「人にはない変な趣味」的なニュアンスをもっと強めたいという場合、その旨をそのまま前置きとして述べてしまうことができます。
I know it’s weird but … のように述べることで「変だっていうことはわかってるんだけど…」という前置きができます。
weird は「変な」「奇妙な」などを意味し、日常会話の中でよく用いられるカジュアルな表現です。strange は似た意味で、もう少し丁寧な表現として用いられます。
「私ってちょっとおかしいよね」ぐらいの自虐のニュアンスを含めるのなら、「おかしい」を意味する crazy や 「気持ち悪い」を意味する creepy なども使えるでしょう。
自分でも変だと思うけど私ってなんか汗臭いのが大好きなのよね