「天下一武道会」を英語で表現する場合、趣旨伝達を重視するなら World Martial Arts Tournament 、そうでないなら the Tenka-ichi Budoukai、どちらかを選択すると考えてよさそうです。
「天下一武道会」は鳥山明のマンガ作品「ドラゴンボール」に登場する架空の武術大会の名称です。すなわち固有名です。訳語に《正解》があるとは限りません。
固有名を英語でうまく表現する言い方は、「会話の脈絡」「伝えたい趣旨・内容」それに「相手側の情報量」などに応じて最適な表現が変わってきます。公式の表現が100%最適とすら言い切れないわけです。
もちろん相手が「ドラゴンボール」の濃厚なファンであるなら「Tenka-ichi Budoukai」で通じることもあるでしょう。通じなかったら適宜補足すれば事足ります。《日本語表現をそのまま用いる+最初に補足的に言葉の意味を説明する》という方法は、あらゆる場面で最適に近い方法といえます。
「天下一武道会」の英語訳の事例集
「天下一武道会」(というか固有名全般)を、どう英語に訳すかは、話者の立場や考え方などによって微妙に違ってきます。
ウェブ上に散在する英語圏の訳例は、実際的な表現を参照する上で非常に有効な方法です。ひとまず有名どころを探ってみましょう。
World Martial Arts Tournament
英語圏のファンサイト「Dragon Ball Wiki」では、用語解説ページとして「World Martial Arts Tournament」という項目が設けられています。
Martial Arts は「武芸」の意、そして World と Tournament の語が「世界一を決める大会」である旨を示します。
天下一武道会は「ドラゴンボール」のマンガおよびアニメシリーズに登場する武芸大会である
―― Dragon Ball Wiki
Dragon Ball Wiki (を擁する Wika プラットフォーム)のコンテンツは一般ユーザーによって制作されていますが、テレビアニメ版「ドラゴンボール」の第101話「武道会終了!そして…!!」は英語版では「The Martial Arts Tournament Comes to an End! And Then…!!」と訳されています。
“The Number One Under Heaven Martial Arts Gathering”
「Dragon Ball Wiki」の記述には「lit. “The Number One Under Heaven Martial Arts Gathering”)」というくだりも見えます。
lit. は literally の略で「文字通り(にいえば)」という意味。つまりこれは日本語の字義に即した補足です。
Under Heaven は「天下」すなわち「全世界(で)」という意味を指す表現です。Gathering は「会」「集会」「会合」。
Tenka’ichi Budôkai(Tenkaichi Budoukai)
北米に VIZ Media (ビズメディア)という、日本のマンガやアニメを翻訳・配信・販売している企業があります。もちろん公式にです。「ドラゴンボール」は VIZ Media の主力コンテンツのひとつ。
VIZ Media ウェブサイトの「ドラゴンボール」の単行本(第3巻)の紹介文に、「天下一武道会」に言及したくだりがあります。そこでは「天下一武道会」は固有名+補足的な意味解説という形で記述されています。
天下一武道会、世界最強の戦士を決定するための大規模なトーナメント
―― Dragon Ball, Vol. 3 (VIZ)
VIZ Media はいわば正規に翻訳を手がけている事業者です。そこで用いられている表現は、原典にはなり得ないにせよ、一次資料と呼べるだけの信頼性が見出せると言ってよいでしょう。
Tenkaichi Tournament
「天下一武道会」を Tenkaichi Tournament と表現している例も見られます。
アニメ「ドラゴンボールZ」の第205話「悟空も復活!? 天下一武道会出場だ!!」の英語版タイトルでは「天下一武道会」が Tenkaichi Tournament と表現されています。
悟空も復活!? 天下一武道会出場だ!!
―― List of Dragon Ball episodes (Dragon Ball Wiki)
ちなみに、長期連載に及んだ「ドラゴンボール」のストーリーを舞台ごとに各編に分けて呼ぶ場合、「天下一武道会編」は Tournament Saga と呼ばれます。