英語で「ごまかす」と表現する場合、その意味やニュアンスに応じて表現を使い分ける必要がありそうです。どういう意味で「ごまかす」と言いたいのか意識しつつ、対応する英語表現を把握しましょう。
日本語の「ごまかす」は、虚飾・粉飾・偽装といった意味で用いられることの多い表現といえますが、具体的な意味合いは文脈によって「真実がばれないように隠す」、「表面・体面をとりつくろう」、「数を偽る」、「不正な手段で金品を手に入れる」あるいは「負債や責任からうまく逃げる」といった意味だったりします。こうしたニュアンスによって英語表現を選ぶ余地がありそうです。
目次
ニュアンス別「ごまかす」に対応しする英語の動詞
cheat
cheat (チート)は「自分の利益のために正当でない方法で人をあざむく」といった意味合いで幅広く使える動詞です。具体的には、「不正をする」「うまく逃れる」「(金品を)だまし取る」といった意味で使えます。意味・用法ともに日本語の「ごまかす」に最も近い英語表現といえそうです。
(〜で)不正をする
cheat には自動詞の用法も他動詞の用法もあります。他動詞としては「だます」程度の意味で用いられます。自動詞の用法は「不正をはたらく」といった意味合いで、日本語の「ごまかす」の意味合いにかなり近いニュアンスで使えます。
自動詞の cheat で「何に関して(不正をするのか)」という部分を表現する場合、前置詞句を伴って表現することになりますが、この前置詞は対象に応じて at、on、in などが使い分けられます。
ズルいあなたへ:ゴルフでズルをするための13の方法、そして、ズルに対してどれくらい罪の意識を持つべきか
― Golf.com 2017/10/09
金品をだまし取る
《cheat+人+out of one’s+(金品)》の形で表現すると「人から金品をだまし取る」という意味が表現できます。
ホテル比較サイトはこうやって人から休日のためのお金をだまし取る
― Express.co.uk 2017/11/04
責務からうまく逃れる
「(本来背負うべきものから)うまく逃れる」という意味で「ごまかす」と表現する場合、背負うべき対象を目的語にとった他動詞の cheatを使うことができます。
他動詞の cheat で「cheat tax」と言うと、「税金をうまくごまかして逃れる→脱税する」という意味になります。cheat を名詞化して「tax cheating」とすると「脱税」、a tax cheat で「脱税者」となります。
浮気する
やや口語的な表現になりますが、「cheat on 人」で人の部分に文の主語のパートナーにあたる人が入る場合には、「浮気をする」という意味になります。「パートナーをあざむく、パートナーにおいてごまかしを行う」というところから「浮気」という意味につながったものと思われます。
女性たちは自分たちが浮気をする理由についてより開示的だ
― Grobalnews.ca 2017/11/05
disguise
disguise も「ごまかす」に近い意味合いを持つ言葉です。もとは「変装させる」「覆う」などの意味があります。disguise A with B で「A を B でごまかす」というニュアンスになります。
彼は自身の知識不足をくだらない極端な多弁でごまかそうとする
― Lexington Herald Leader 2017/11/01
embezzle
「ごまかす」には「金品を不正な手段で手に入れる、横領する、使い込む」などといったニュアンスもあります。このニュアンスを表現するのが embezzle です。
警察発表:女、15000ドル以上を病院のシステムから横領し、結婚式やバカンスなどのために使った
― Fox Carolina 2017/10/21
見落としがちですが、pocketには「ポケットに入れる」という意味の動詞もあります。
動詞のpocketは単純に「ものをポケットに入れる」「ものを手に入れる」という意味で使われることも多いですが、文脈によっては、ポケットに入れるしぐさからの連想で「金品を不正な手段で手に入れる」や「気持ちを隠す」→「金品をごまかす」といった意味合いで使われることがあります。
地元の政治家らが基金設立者たちの利益を着服していたことがわかった
― Oxford Living Dictionary
彼女は偽の小切手にサインし、金をだまし取った
― Oxford Living Dictionary
bluff
bluff の元の意味は「からいばり・こけおどしをする」というものです。「ごまかす」のうちの「表面・体面をとりつくろう」にあたる意味を表現するのにbluffの入った言い回し bluff one’s way+前置詞 を使うことができます。後ろにつく前置詞には文脈により、out of, into, over, through などさまざまなものがあります。
大統領はもはや、友好的なメディアからの質問さえうまく切り抜けることができない。
― Politics USA 2017/10/22
lie
lie は「嘘をつく」という意味の単語ですが、lie about 〜 で「〜についてごまかす、でっちあげる」という意味合いで使うことができます。
シニッタは「First Dates(テレビ番組)」で年齢をごまかしていた
― Evening Standard 2017/11/04
警察発表:郵便局員、銃で脅されて(郵便物を)奪われたことをごまかしていた
― NBC4i.com 2017/11/04
グレンフェル・タワー:火災で息子と妻を失ったとでっちあげていた詐欺師、詐欺行為を認める
― the Guardian 2017/11/02
deceive
deceive は、だます、詐欺を行う、人・信頼などを裏切る、といった意味を示す単語です。deceive が「ごまかす」に近い意味で使われるのは、 deceive oneself という表現においてです。「自分自身をだます」という意味から、「本当の気持ち・知っている真実を自分の中でごまかす」というニュアンスで訳すことができます。deceive oneself はやや形式ばった言い回しのため、普段の会話よりも文章表現や改まった会話表現に使われることが多いと言えます。
ごまかしても無駄だった。彼女は彼を心から愛していた
― Oxford Living Dictionaries
彼女は彼が帰ってくると思っている。しかし彼女は自分自身をだましている【本当は帰ってこないことを知っているのにそれをごまかしている】
― Cambridge Dictionary
chisel
chiselは「彫る」「刻む」といった意味を持つ単語です。chiselを使った「ごまかす」を意味する言い回しがあります。北米のエリアの俗っぽい表現なので、使う際には多少の注意が必要です。
「chisel 金品 out of 人」で、「人から金品をだまし取る」という意味になります。
彼も含めた多くの議員は最初の日から、ニューヨークの人々から金をだまし取ろうとした
― Oxford Living Dictionaries
「ごまかす」の意味を持つ英語慣用句、ニュアンス別
とりつくろう
「keep up appearances(体裁をよく保つ)」、「patch 物 up(物を修復する)」「smooth over(ことを丸くおさめる)」という言い回しは基本的に良い文脈で使われますが、文脈や読み方によってはマイナスの意味にもなりえます。keep up appearances や patch 物 up 、smooth over がたとえば「for the moment(その場だけ、一時しのぎの)」や「devious(よこしまな)」などといった表現とともに使われたりすれば「とりつくろう」「ごまかす」という意味にも読むことができます。
アメリカ合衆国は、伝えられるところによると、状況を丸くおさめる/とりつくろうためにこっそりと動いていた
― the Drive 2017/11/06
(負債・質問などから)うまく逃げる
evade, dodgeは「(うまく)回避する」という意味です。
evade/dodge (a) question/answer で「(質問への)答えをごまかす」という意味になります。
それについて私が考えている本当のことについて明確な立場を表明させてください。私は答えを逃れるつもりも、ごまかすつもりもありません
― APA 2017/10/24
dodge a tax で「税から逃れる→脱税する」、tax dodge で「脱税」となります。
私はU2のボーカルのボノを脱税では許すことができるが、彼の偽善を許すことはできない
― the Sun 2017/11/06
laugh off〜 で「〜を笑い飛ばす」ですが、「疑いを(suspicions)」「質問を(questions)」などと共に使われた場合、「〜を笑ってごまかす」というニュアンスになります。
笑ってごまかすな。質問に答えろ
「ごまかし」を英語で表す
「cheat」「cheating」で「ごまかし」「詐欺」「いかさま」「カンニング」などとなります。
「trickery」は「ペテン」「詐欺」「策略」などの意味があり、「ごまかし」と近い意味を持っています。
ミサでのローマ法王:偽善とごまかしは私たちにとって悪です
― Vatican Radio 2017/10/20
「deception」は「ごまかし」の形式ばった言葉で、「欺瞞」などと訳されます。
サムスンのiPhone X バッシング広告の真実と欺瞞
― iDropNews 2017/11/07
「chicanery」というと、政治・法律上の言い抜けやごまかしを意味します。
銀行は担保におけるごまかしについて正義と向かい合わねばならない
― Independent.ie 2017/11/07
「fraud」は、「詐欺」「欺瞞」「不正手段」などの意味を表します。
FIFAのスキャンダルが法廷に現れたとき、FBIはこうして「詐欺のワールドカップ」で優勝した
― the Guardian 2017/11/06
「shenanigan」は聞き慣れない言葉ですが、「ごまかし、偽り」という意味があります。
新作「Daddy’s Home 2」の予告編、ごまかしに満ちたあるクリスマスの休暇をからかう
― Collider 2017/11/01
名詞としての「fake」は「ごまかし」や「ニセモノ」という意味です。
1800年のものと言われていた一杯1万ドルのマッカラン・スコッチはニセモノだった
― Men’s Journal 2017/11/07
「ごまかし、いんちき」を指す言葉として、ほかに「sham」も挙げられます。
「ごまかしの」を英語で表す
「ごまかしの」「偽の」を表す言葉には、fallacious, fake などがあります。
「悪い科学」という考えはごまかしで、科学のプロセスにそぐいません
― Maine Public 2017/10/20
Twitterがこっそりとボットと偽アカウントから利益を得る方法
― The Intercept 2017/11/06
deceptive とは、「人をあざむく・惑わすような」という意味の言葉です。語源は「道から外れた」というところにあります。これも「ごまかしの」に近いニュアンスです。
創造的なマーケティング? それとも人をあざむく広告?
― Dermatology News 2017/11/01
devious には「ごまかしの、回避的な、素直でない、あざむくような」といった意味があります。
下宿屋の殺人の目撃者は「よこしまな嘘つき」
― the Barrie Examiner 2017/10/17
「回避的な、こそこそした」という意味を表す言葉には、evasive もあります。ごまかそうとしたりして相手と目を合わせようとしないような回避的な態度を表すケースが多いです。
furtive は「コソコソした」「ごまかしの」「うさんくさい」という意味を持つ言葉です。
メイ夫人は、この結果が彼女のコソコソした仕事ぶりに対する告発だということを受け入れなければならない
― Prothom Alo 2017/06/10
「ごまかして…する」を英語で表す
on pretext of〜 , under the cover story that〜は「〜という名目で」という意味です。どちらももともとの意味は中立ですが、名目のもとに悪いことをした場合は「〜という名目でごまかして…する」という意味になります。
人を「助ける」という嘘をついて拉致した4人、ノイダで逮捕される
― Hindustan Times 2017/11/02