英語で「どうぞ座ってください」「お掛けください」という風に着席を促す場合の表現としては、Please have a seat. がいちばん使いやすいと言えそうです。
Sit down please. のような言い方は失礼な表現になりがちなので避けた方が無難です。
着席を促す際に使える英語表現は複数あり、ニュアンスに応じて使い分けられます。いくつか把握して使い分けられるようになっておきましょう。
目次
Please have a seat. は穏便で丁寧さのある表現
Please have a seat. は、相手に座るように勧める(促す)無難な言い方といえます。
Please have a seat. はやや遠回しな表現であり、遠回しな分だけ相手を尊重するニュアンスがあります。それだけに丁寧な表現として響きます。
have は「経験する」ニュアンスで表現を婉曲的にする
なぜ Please have a seat. が丁寧な表現になるのか。have a seat と同じ《have a +名詞》型の表現が、理解の手がかりになるかもしれません。
have a drink のパターン
have a seat のように《have a +名詞》の形を取る言い方は、他にも沢山あります。
- have a drink (飲む)
- have a walk (歩く)
- have a dance (踊る)
- have a sleep (眠る)
- have a doze (微睡む)
have a drink や have a walk のような表現は、名詞部分が「動詞としても名詞としても使える語(の名詞の用法)」という共通点があります。
名詞が動詞としても使えるなら、端的に drink (飲む)とか walk (歩く)とだけ述べてもよいわけです。それを、敢えて《have a ~ 》の形にすることで、一歩か半歩くらい遠回しなニュアンスになります。
have a nice day のパターン
have a nice day や have a nice trip のような表現は、ほぼ定型句のような言い回しではありますが、動詞 have の意味合いが「経験する」「過ごす」という意味で理解されます。
前述の have a drink や have a sleep のような表現も、「動作を経験する」というニュアンスを加えることで、動作を直接に使う言い方よりも少し遠回しに表現する言い方、というような捉え方が可能でしょう。
日本語でも「寝る」よりは「睡眠を取る」と述べた方が、いくらか穏やかに響きます。
Please take a seat. は指示するニュアンスを少し含む言い方
Please take a seat. も着席を促す表現として使えます。
Please take a seat. は、Please have a seat. と比べると、相手が当然のごとく座るという期待や前提がある場面で使われやすい表現とされます。
たとえば、医者が患者を診察する際に「どうぞお掛けになって」と伝えるような場面では、Please take a seat. はピッタリの表現でしょう。
相手を尊重するニュアンス(=丁寧さの度合い)という点では、やはり have a seat の方が上です。
take は have よりも動作主体を意識させる言い方
have a ~ と take a ~ のニュアンスの違いについて、「Eゲイト英和辞典」は「take には主語が自ら動作の主体になるイメージがある」と解説しています。
(Eゲイト英和辞典「have」の「【語法】have a+名詞」の記述)
have a seat と対比すると、take a seat の方が「動作主体と動作との距離が近い」、つまり動作主体が動作するということを意識させやすい、その分わずかに婉曲的な度合いが低い、という風に捉えることができそうです。
Please sit down. はかなり直接的な指示
着席を促す表現を安直に考えると Please sit down. とでも表現したくなるところですが、この言い方は使い所を選びます。
Please sit down. は直接的に座るよう指示する言い方に聞こえがちです。日本語的でいう「お掛けなさい」「お座りください」に近い響きがあります。
学校で教師が生徒たちに向かって「席に着きなさい」と指示するような場面なら、ぴったりハマるでしょう。親友に「座りなよ」と言う場面でも適切に響くでしょう。でも、来訪いただいた客人への言葉としては、適切とは言いがたいものがあります。
相手に伝える場面以外では sit down は標準的な言い方
相手に「お掛けください」と促す表現としては、sit down は多分に失礼な響きを伴う危険がありますが、それ以外の文脈において人の「座る」という動作を表現する場合は sit down が普通に使えます。当人に失礼というような事は一切ありません。
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なお sit と seat は共に「座る」という意味ながら自動詞・他動詞の違いによって語形が異なる種類の語彙です。
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表現とニュアンスに絶対はない、最終的には状況による
Please sit down. は多分に失礼なニュアンスを与えやすい表現ではありますが、「Please sit down. は失礼な表現」と木で鼻をくくったように捉えてしまうのも考えものです。
Please sit down. も、相手が友達や目下の者なら特に問題なく使えます。抑揚や間の置き方、あるいは表情や身振りの具合によっては、「さ、どうぞ座って座って」というような気さくで親密な表現にもなり得ます。
こうした些細なニュアンス差をあまり気にするとコミュニケーションに臨む姿勢も萎縮してしまいがちです。失敗を恐れず、実践を通じて修正していくつもりで臨みましょう。
イギリス英語には Take a pew. という言い方もある
親友に「座りなよ」と言う場面に適した言い方としては Take a pew. という表現もあります。イギリス英語やオーストラリア英語で用いられる言い方です。
Take a pew. は友達に「座ってよ」と伝えるような場面で使えます。相手を選ばないとぞんざいな奴と思われます。
ちなみに pew は教会などに置いてある木のベンチを指す語です。
Please be seated. は直接的で硬めの表現
Please be seated. という言い方も、Please sit down. と同様、相手に指示するニュアンスの色濃い表現です。そして、フォーマルな響きのある言い回しです。
Please be seated. は式典や会議のような(多くの人が集う)場で司会進行が用いるような種類の言い方です。日本語でいう「どうぞご着席ください」に近い表現と捉えてよいでしょう。
もっと丁寧に述べるなら疑問文もアリかも
丁寧さに重点を置いた表現としては Would you like a chair? のような疑問文で述べる言い方が挙げられます。
疑問表現を使うと、相手に「座らず立っている」という選択の余地を与えることになります。命令形の表現に比べて相手の主体性が尊重され、その分だけ英語的に丁寧な意味合いが強まります。
とはいえ、相手が座る前提で「お掛けください」と伝える場面では、やはり Please have a seat. 辺りの表現が一般的です。
「どうぞお掛けになったままで」と表現するなら
すでに腰掛けている人に「どうぞ(そのまま)座ったままで」と伝える場合、remain、stay、keep といった「そのままの状態を維持する」意味合いの動詞を使えばうまく表現できます。
- Please remain seated.
- Please stay seated.
- Please keep seated