ここがポイント
- 英語で名前を書く場合の書き方は、「ヘボン式ローマ字で」「名前 – 苗字の順で」書くのが基本中の基本
- 姓名の順は「苗字 – 名前」で表記してもOK。こちらの文化を尊重して許容してもらえる。 ただ、誤解を防ぐためのひと工夫を心がけましょう
- もちろん入力欄や記入例が用意されていたり、記入方法が指定されている場合は、それに従いましょう
英語で自分の名前を書く場合、基本的には「ローマ字(ヘボン式)つづりで表記する」+「姓名は前後逆順にして《名前 – 苗字》の順で書く」のが普通です。
とはいえ、名前の書き方に「絶対唯一の正解」のようなものがあるわけではありません。特に氏名の並びは、西洋と東洋の文化の違いに基づくものですから、無下に否定はされません。
記入欄が分けてあって「first name」や「last name」のように指定されている場合は、その指示に従いましょう。
すでに多くの先例がある場合には、その先例に合わせましょう。
特にそういった手がかりがなければ、姓名を間違われないように工夫しつつ、最もしっくり来る書き方で書いてみてもよいでしょう。
英語の名前(氏名)の書き方に関する基礎知識
人名は基本的に「苗字(姓)」と「名前(名)」の2要素で構成されます。
苗字(姓)は「氏族を示す」要素であり、名前(名)は「個人を示す」要素です。
「姓」や「名」を意味する英語表現
苗字(姓)は英語では family name や last name といいます。
名前(名)は英語では personal name や first name といいます。
西欧キリスト教文化圏では、天使や聖人にちなんだ洗礼名(Christian name )を名前に用いる文化伝統があります。個人名を指して「クリスチャンネーム」と呼ぶこともあります。
- 姓 = family name / last name / surname
- 名 = personal name / first name / given name / Christian name
姓名の順序は基本は「名・姓」
日本では基本的に「姓・名」の順で、つまり氏族名を先に配置する形を取ります。英語では逆に個人名を先(first)に配置し、家を表す「姓」は最後(last)に配置します。
欧米ではミドルネーム(middle name)を持つ人も多くいます。ミドルネームがいくつも連なるような名前を持つ人もいます。
基本的な表記順序は first name – middle name – last name 。
日本人の名前を英語で表記する場合には「名・姓」のように配置する形が標準的です。
表記順序を例外的に姓名と配置する場合もある
英語圏でも「氏・名」の順で表記する場合はあります。たとえば、学術論文の文献表記では、姓を先頭に配置し、ファーストネームやミドルネームはイニシャルだけ記載する形が取られることがあります。
科学誌「Nature」に掲載された論文を例にとると、参考文献(Reference)に挙げられた著者 Paul W. K. Rothemund は Rothemund, P.W. のように記載されています。
日本人名を姓名と記述して許容される場合もある
最近では、個々の文化を尊重するといった観点から、英語で氏名を記述する場合でも日本語的に「姓・名」の順で記す場合が増えつつあります。
日本語と同様に姓名の順で名前を表記するアジア圏の国、特に中国や韓国の場合、英語で名前を表記する際に母国の表記順を踏襲する場合がよくあります。
たとえば、中国の国家主席(第7代)習近平は、英語では Xi Jinping と呼ばれています。韓国大統領(第18代)朴槿恵はPark Geun Hye。
日本の安倍晋三首相の場合は Shinzo Abe 表記の方が一般的という状況です。織田信長(Oda Nobunaga)のような歴史上の人物は姓名の順序を踏襲したまま表記される場合が多く見られます。
誤解されないための工夫は必要
英語では名-姓の順で名前を書く」というのは、基本的な指針ではありますが、絶対的なルールではありません。あえて「姓-名」の順で記載しても問題ありません。
もちろん、記入フォーマットが用意されていたり、先例がすでにできていたりする場合は、それに揃えるのが最善でしょう。
いくら順序を入れ替えてもOKといっても、単に順序を入れ替えて表記するだけだと「名-姓」の順なのか「姓-名」の順なのか分からなくなってしまいます。正しく判別してもらえるように表記を工夫しましょう。
カンマを打つ
姓を先に配置する場合、姓の直後にカンマ(,)を置くことで前後逆であることを示す方法があります。これは(先に挙げた Rothemund, P.W. の例のように)主に学術論文の引用スタイルで踏襲されている表記方法です。
このカンマは住所や日付の書き方にも通じる
姓名を「対象を特定する範囲の広さ・狭さ」という観点でとらえた場合、個人名の方が範囲が狭い(より個人が特定される情報)といえます。こう考えると、西欧式の「名・姓」という順序は、住所や日付の記載順と同じく「範囲の狭い方から(小→大の順に)書く」という原則にのっとっていると解釈できます。
住所でも日付でも、範囲の小→大という順序を敢えて破って記載する場合があり、その場合にはカンマを打って区切りを示します。この点を踏まえると、カンマを打つ意味が腑に落ちます。
姓をすべて大文字で表記する
カンマを打ち、さらに、姓の文字をすべて大文字で表記することで明示する書き方もあります。
補足説明を加える
特に制約のない箇所に記入するなら、Yamada, Taro のように書いた上で、「Yamada が姓です」と書き添えておく方法も一つの手です。
This is a Japanese name; the family name is Yamada.
口頭で名乗る場合には、カンマや大文字小文字の表記を使った区別は難しいので、名乗った後に補足を加えるか、あるいは、「苗字は山田で名前は太郎」のように言う方法が穏当でしょう。
イニシャルを交えた表記
姓名を表記する際に逐次書き綴るのではなく先頭1文字(イニシャル)だけ使用する書き方もあります。
イニシャルは名前を省略した記号なので、後にピリオド (.) を打って T. Y. のように表記します。姓を先頭に記述する場合にはカンマを優先して YAMADA, T. のように表記することになります。
使い所はやや難しい
自分の名前をイニシャルで表記すべき場面は基本的には限られると考えてよいでしょう。特にイニシャル表記が求められる場合を除き、普通に表記したほうが無難です。
学術論文では、既出の人名を再掲する場合に、ファーストネーム(およびミドルネーム)をイニシャル表記にする様式があります。
ニックネームを使った表記
親しい間柄同士のやりとりではニックネームを用いることが多々あります。
ニックネームは名前の省略形でもあり、同時に愛称でもあります。ニックネームで呼び合うことはある種の親密さの証です。
日本人名も欧米式のニックネームをつけることで親密度が増す期待が持てます。英語のニックネームの使い方を参考に、自分の呼び名もアレンジしてみるとよいでしょう。
仲の良い友だちができたら、その方がニックネームをつけてくれるかもしれません。
英語圏のニックネーム文化
英語名(クリスチャンネーム)の大多数には、お決まりのニックネームがあります。日常会話では正式なファーストネームよりもニックネームの方が中心的に用いられます。
ひとつの名前に複数パターンのニックネーム候補があることも多いので、名前からはニックネームを特定しにくい場合もあります。いっそ本人に尋ねてしまいましょう。ニックネームで呼び合うきっかけにもなって一石二鳥です。
- What’s your nickname? (あなたのニックネームは?)
- What can I call you? (何てよんだらいいかな?)
- How can I call you? (どう呼んだらいい?)
- Can I call you Mike?(マイクって呼んでいいかな)
- How do your friends call you? (友達からはどう呼ばれてる?)
自己紹介のタイミングで向こうから「~って呼んでね」と言ってくれる場合もままあります。
教えて、と尋ねても言葉を濁して教えもらえない場合のあり得ます。そのときは深く気にせず、もっと仲良くなってから改めて尋ねましょう。
周囲から特定のニックネームで呼ばれている人を他のニックネームで呼ぶことは勧められません。呼びかけても気付いてもらえなかったり、違和感を与えて心証を損ねる原因になったりする可能性があります。
ニックネームのパターン
英語圏のニックネームと本名の関係にはいくつかのパターンに区分できます。自分の名前からニックネームを考える手がかりになりそうです。
- 前半部分を取り出す。Elizabeth → Eliza (イライザ)、Elsie (エルシー)
- 後半部分を取り出す。Elizabeth → Beth(ベス)、
- 半ば部分を取り出す。Elizabeth → Lisa (リサ)、Liz (リズ)
- 語尾を長音化する。Elizabeth → Betty(ベティ)、Lizzy(リジー)
この方法に沿うと、たとえば隆義(Takayoshi)という名前なら、タカ、タッキー、ヨッシーのような呼び方が候補として挙げられそうです。
Taro のように短く収まっている名前なら、ことさらニックネームを用意しなくても十分に気さくに呼んでもらえるでしょう。
ニックネームで呼んでもらう
ニックネームは、日本語の場合よほど親密な交友関係がある間柄で用いられるものという感覚がありますが、英語では社会の幅広い範囲においてニックネームが用いられます。
出会い方や間柄にもよりますが、最初の自己紹介のタイミングで、本名を知らせる代わりにニックネームで自己紹介する人もいます。
マイクです(※本名は マイケル)
まずは本名を名乗り、続けてニックネームを伝える人もいます。
マイケルです。友達からはマイクって呼ばれます
ビジネス上の相手やフォーマルな場で知り合った人とは、特にニックネームを教え合わない場合もあります。
公的書類ではフォーマルな表記方法が無難
パスポート、クレジットカード、履歴書などのような公的性格を持つ書類には、奇抜な書き方を試さずに、正式な名前の表記を、欧米の記載方式に則って記すようにしましょう。姓名の順序も欧米式にファーストネームを先に配置した方が無難です。
あらかじめ、どこに何をどのように記載するべきか指定されている場合も多々あります。
パスポートには戸籍上認められている名前を使用します。ニックネームでは申請が認められません。
履歴書もニックネームの使用は原則的に避けられます。ただし、ニックネームを使ったからといってパスポートのように効力を損なうこともありません。
名刺やメールの署名部分のように、ビジネス的性格の強い媒体に記載する場合にも、本名を略さずに記載する書き方が基本です。
各界の著名人といえるクラスの人物になると、ニックネームの方が知名度を持ってくることもあり、本名とニックネームを併記して Rentaro “Taro” Yamada のような表記が用いられるようになったりもします。ただし一般人には縁の遠い表記と考えてよいでしょう。
他人の名前を書くことになった場合の対処法
英語の人名を本人の代わりに自分が書くことになった場合。
英語は人名も綴りと発音とのギャップがあるため、発音から綴りを特定できない場合がままあります。たとえば、「スティーヴン」の綴りがSteven ではなくStephen だったりする場合があります。
名前の書き間違いはやはり失礼なことであり、避けたいところです。可能であれば事前に確認しましょう。
名前の綴りを尋ねることは、なんら失礼に当たりません。
あなたの名前はどう綴りますか
あなたの名前の綴りを教えていただけますか
特に丁寧に訪ねたい際には could や would を使った丁寧表現を用いましょう。