ことわざ(諺)を英語では proverb といいます。英語のことわざには日本語とはまた違った独特の良さがあります。短い端的なフレーズの中に込められた含蓄や洞察は、英語だけでなく人生観そのものを鍛えてくれそうです。
英語のことわざの中には、表現も意味も日本語のことわざと共通していて、ほぼ英和直訳の関係といえるようなことわざもあります。
英和共通のことわざの多くは西洋から日本へ伝わったことわざ・格言(つまり英→和の方向)といえます。英語のことわざも必ずしも英語オリジナルとは限らず、有史以来の西欧の歴史に負うところが大きいのですが、その辺はいったんおいておきましょう。
ことわざを覚えると要約力が身につきます。日常会話の中で披露する機会はそう多くはないでしょうけれど、日常の場面を想定しながらことわざを考えると、機転の効き方が違ってきます。
もうほぼ直訳の英語ことわざ
率直に訳すだけでもう現地版のことわざになっているようなことわざ。その多くは文明開化以降に西洋から日本語へ伝わって日本語に翻訳されて定着したものです。例外もあるでしょうけれど、基本的には西洋由来と考えておいてよいでしょう。
「時は金なり」
Time is money.
時は金
時間は金とおなじぐらい大切であるから浪費するものではないという戒めです。フランス語、ドイツ語でもおなじみのことわざのようです。
やらないといけないことをぐずぐず引き延ばしてはいけない。時は金なりだよ。
「隣の芝生は青い」
The grass is always greener on the other side of the fence.
柵の向こうの芝生はいつもこちらより青い。
他人のものは何でもよく見えてうらやましく思ってしまうこと、
また他人の持つ珍しいものをすぐに欲しがることを言います。
A:私の仕事はとってもつまらない。彼女みたいに自営業だったらなあ。
B:She probably wishes she had the security of her old job. The grass is always greener on the other side of the fence.
B:彼女は前の仕事のような安定を求めてるかもよ。隣の芝生は青いものよ。
「鉄は熱いうちに打て」
Strike while the iron is hot.
鉄が熱いうちに打て。
鉄は熱して柔らかいうちには、打っていろいろな形にすることができます。人間も、若く柔軟性のあるうちに心身を鍛えることが大事です
また物事をなすときにも、熱意が冷めてしまわぬうちに実行することが大事、という意味のことわざです。
鉄は熱いうちに打たねばならない。我々がどんなに怒って裏切られた気分でいるか見せてやろう。
「ローマは一日にしてならず」
Rome wasn’t built in a day.
ローマは1日で建てられたのではない。
「すべての道はローマに通ず」と言われたほど繁栄したローマ帝国も、完成までには約七百年もの月日を費やし、長い苦難を乗り越えて築かれたそうです。大事業は長年の努力なしには成し遂げられないという意味のことわざです。
今回は目標に届かなかったが、ローマは一日にしてならずだ。
「ペンは剣より強し」
The pen is mightier than the sword.
ペンは剣よりも強い。
言論の力は武力よりも大きい力で世論を動かすことができるという意味のことわざです。イギリスの小説家ブルワー・リットンの戯曲の中に出てくる言葉に由来します。
The pen is mightier than the sword.
その記事のせいで多くの人が北部へと移住した。
ペンは剣よりも強しだ。
「氷山の一角」
the tip of the iceberg
氷山の先端部分
海面に見える氷塊は小さなものでも、その下には大きな氷山が隠れている様。たまたま表面に現れた事柄は好ましくない大きな物事のほんの一部であるということです。
多くの行方不明者がまだ報じられておらず、これは単に氷山の一角にすぎません。
「転石苔むさず」
A rolling stone gathers no moss.
転がる石には苔が生えない。
石には苔が生えるものですが、常に転がっている石であれば苔が生える暇がないことから、職業や住まいを転々とする人は成功できないという意味で使われます。
実はこのことわざはイギリスとアメリカで意味が違います。イギリスでは日本と同じくネガティブな意味で使われますが、アメリカでは「活動的にいつも動き回っている人は能力を錆びつかせない」というポジティブな意味で用いられています。
彼は頻繁に仕事を変えていて、いつも貧乏なんだ。転石苔むさずだよ。
表現は違うけれど同じ含蓄を持った日英のことわざ
表現・言い回しに違いは見られるものの、意味するところは同じというタイプのことわざもあります。こうした事例は、言語や文化に左右されない人間の本質的な部分を示しているような気にさせてくれます。
「こぼしたミルクに泣くな」
It’s no use crying over spilt milk.
こぼしてしまった牛乳について嘆き悲しんでも仕方がない。
そのまま、日本語の「覆水盆に返らず」と同じ意味のことわざです。
こんな風に使えます。
あなたがすることは、落ち込むことではなく次に頑張ることです。覆水盆に返らずです
「予防は治療に勝る」
Prevention is better than cure. 予防は治療に勝る
Look before you leap. 飛ぶ前に見よ
この2つのことわざは、どちらも日本語の「転ばぬ先の杖」に相当する意味で用いられます。つまり、悪いことが起こる前に十分に備えておきなさい、あるいは、何か行動を起こすに当たっては事前に十分に前に気をつけなさい、と忠告する場面で使われます。
彼に事前に了承を得たほうが良いでしょう。転ばぬ先の杖とも言いますからね。
「卵から孵る前に鳥を数える」
Do not count one’s chickens before they hatch.
鶏が孵化しないうちに数え始めるな
日本語でいえば「捕らぬ狸の皮算用はするな」という意味と同じことわざです。タヌキでなく家禽で喩えられている点に文化差を感じます。
捕らぬ狸の皮算用をすべきではないね。念入りに調査しないと。
「一つの絵は千の言葉に勝る」
To see is to believe. 見ることが信じることである
A picture is worth a thousand words. 一枚の絵は千もの言葉に勝る
言葉でどれほど説明しても、実際に目の当たりにする説得力にはかなわない。つまり日本語の「百聞は一見に如かず」に相当することわざです。
特に「A picture is worth a thousand words.」は文意としても「百聞は一見に如かず」に近いといえます。英語の thousand は日本語の「百」と同じく、膨大な数を示す喩えとしてよく用いられます。
簡単に説明していただけますか? 正しく理解していないので。百聞は一見に如かずと言いますからね。
「最後に勝つのは忍耐である」
Perseverance will win in the end. 忍耐が最終的には勝利する
Be patient and persistent. 粘り強く辛抱強くあれ
日本語の「石の上にも三年」と同じ意味で用いられる表現ですが、比喩的な表現ではなく、率直に忍耐の重要性を説いています。
石の上にも三年というでしょう。もう少し続けましょう
英語のことわざ・慣用句の多くは韻を踏んだ軽快な語呂のフレーズが中心です。