「パイ」や「ケーキ」は焼き菓子の定番。デザート、スイーツの代表格です。欧米では古くから親しまれています。
パイやケーキを使った英語イディオムはたくさんあります。嗜好品なだけあって、「ご褒美」や「ご馳走」の代名詞として使われている場合が多いようです。
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take the cake
主にアメリカ英語で、That takes the cake! のような言い方で用いられます。直訳すると「ケーキがもらえるよ」くらいの所ですが、これは「飛び抜けている(すごい)」という意味で用いられるフレーズです。
イギリス英語では、ビスケット(biscuit)を使って That takes the biscuit! のように言います。意味は同じ。
take the cake は、コンテストの1等の賞品として菓子(ケーキ)が授与されるという古い習らしに由来するそうです。つまり「1等賞がもらえるくらい」すごい・抜きん出ている・突出している、というニュアンスです。
1等賞に値するくらいスゴい、といっても、必ずしも褒めているとは限りません。むしろ、皮肉を込めて「とんでもない」という場面、あるいは「飛び抜けてアホらしい」という意味で使われることのほうが多いようです。
シンプソンズを一度も観たことがない? あんたが優勝だわ
like hot cakes
like hot cakes は主に商品の売れ行きを表現する言い方で、主に sell や go を伴って sell like hot cakes や go like hot cakes のように用いられます。「ホットケーキのように」すなわち「飛ぶように売れる」という意味の言い回しです。
hot cake は「みんなの大好物」の代名詞。
このジャケットは値引きしないよ。飛ぶように売れるんだもの
他の言語でも「お菓子のように」よく売れると表現する言い方があり、国柄によって例えに挙げられるお菓子が違っています。ドイツ語では「温かいロールパン」(warme Semmeln)、フランス語では「ロールパン」(petit pains)、スペイン語では「チュロス」(churros)、などなど。
pie in the sky
pie in the sky (空の上のパイ)は、空想的な表現そのまま「非現実的なもの」「手に入らないもの」「絵に書いた餅」を意味する表現です。
真剣に行動しなければ彼の計画は画餅に終わるだろう
cakes and ale
ケーキ(cakes)とお酒(ale)は、至福のひとときをもたらしてくれるもの。cakes and ale は「人生の快楽」「浮き世の楽しみ」を意味する表現です。
シェイクスピアの劇「十二夜」(Twelfth Night, or What You Will)に由来する表現です。
人生は楽しいことばかりじゃないんだよ
a piece of the pie
a piece of the pie は「パイの一切れ」という意味で、ここでは「仕事で得た利益」「分け前」を指します。日本語でもビジネス用語として「パイを奪い合う」などのように言うことがありますが、これと同じニュアンスです。
パイは切り分けて食べるもの、みんなが欲しがるもの、というイメージが前提にあります。
彼は会社に多大な貢献をしたので、ボーナスが貰えることを期待した
円グラフを指す英語「パイチャート」(pie chart)は、円形の全体像と放射線状の区切りがパイに例えられた語です。
have cake and eat it too
英語には You can’t have your cake and eat it too. ということわざがあります。文字通りに訳すれば「ケーキを持っていることとケーキを食べることは同時にはできない」。これは、同時には実現できないこと、両立しがたいことのたとえです。
ケーキは食べたら無くなります。そのまま持っておくことはできません。そのまま置いておきたいなら食べずに我慢しなくてはなりません。食べる楽しみと手元に残しておく楽しみは同時には味わうことはできない、というわけです。
彼はあの豪華な家を買うために一生懸命働いたけど、そのせいで少しもその家をゆっくり楽しめなかったって。両取りはできないものだね
a piece of cake / as easy as pie
それぞれ直訳すると「ケーキ一切れ」「パイみたいに簡単」。ケーキもパイも食べるのは簡単、おいしく平らげてしまえるお菓子。a piece of cake と as easy as pie はどちらも「とても簡単なこと」「朝飯前」「お茶の子さいさい」という意味で用いられます。
Today’s exam is a piece of cake.
今日の試験なんか朝飯前だよ
He did it as easy as pie.
彼はそれをいとも簡単にやってのけた
eat humble pie
パイの中にも遠慮したくなるパイだってあります。eat humble pie (粗末なパイを食べる)という言い方は「屈辱的なことを甘んじて受け入れる」「恥を忍んで平謝りに謝る」といった意味で用いられる言い回しです。
この humble(粗末な)には、umble(臓物)が掛かっています。モツは本来は食べずに捨てるはずの部分ですが、パイの具材としてやむなく使うこともありました。臓物パイは「粗末な食べ物」の代表格だったようです。
彼らの子供がクラスメートをいじめていたと聞いた時、彼らは平謝りに謝った
【訂正】当初「burried」を「bullied」と誤記しておりました。お詫びして修正致します(2016年4月13日)