「提案」は、ビジネスには欠かせない要素です。しかしながら、「提案する」という意味の英単語がいくつもあるため、その使い分けに苦労する人もいるでしょう。
使う相手や場面に応じて、適切に提案できるよう、「提案する」を意味する英単語の使い分けについて学びましょう。
また、提案に対する返答についても一緒に覚えておくと便利です。
「提案」の意味で使える主な英単語
suggest はやや控えめに考慮を促すニュアンス
suggest は「提案する」と訳される主な動詞のひとつで、自分の意見を述べたり、可能そうな計画を伝えたりといった場面でうまく使える動詞です。
suggest は日本語の「提案」に通じる意味合いもありますが、直接的な表現を避けて間接的に表現する、という意味合いも含みます。
suggest で表現される「提案」には、どちらかといえば控えめに、相手の意見を尊重しつつ「こんなのはいかがでしょうか」と案を差し出すようなニュアンスがあると言えるでしょう。
suggest の語は主に suggest to somebody that ~ あるいは suggest doing といった言い回しで用いられます。suggest は他動詞で、目的語には提案の内容が置かれます。(提案する相手を目的語に取る言い方は基本的にしません)
誰かに詳細を聞くことを提案します、そうでなければ何が起こったのか正しく知ることはできないでしょう
全てを明らかにするために、彼女を待つべきだと考えます
若者とお年寄りの顧客バランスは維持した方が良いと考えています
May I ~ から始めて May I suggest ? あるいは May I make a suggestion ? といった疑問形にすると、より丁寧で控えめな提案のニュアンスが表現できます。
再度この案についてご考慮いただければと提案申し上げたく存じます
propose は積極的に提起していくニュアンス
propose も「提案する」という意味で用いられる代表的な動詞です。suggest よりも能動的・積極的なニュアンスが多分にあります。
propose のニュアンスは、たとえばビジネスシーンで新企画を売り込んでいくようなイメージで捉えると上手く把握できるでしょう。あるいは、恋人に結婚を申し込む場面を想定してもよいでしょう。propose には「結婚を申し込む」という意味もあります。
propose は主に propose that ~、 propose to do 、あるいは propose doing の形で用いられます。
上司は、われわれはともに問題の解決に当たって協力しあうべきだと提案した
今後、公務員や政治家達の給料は減らされていくものと考えます
recommend は行動を促すニュアンス
recommend は、基本的には「提案」というより「勧める」「勧告する」と訳されることの多い単語でしょう。おおむね積極的に何らかの行動を促すという意味合いで用いられる動詞です。
recommend は主に recommend that somebody do something の形で用いられます。続く語の種類によって「推薦する」と訳すべき文脈か「勧める」と訳すべき文脈かを判断することになるでしょう。
recommend はおおむね put forward と言い換え可能でます。
あなたが現在使用しているソフトウェアを変えることを提案します
株券を買うことを勧めます
※当初「recommend somebody to do の形では使わない」との一文を記載しておりましたが、人を目的語に取って「人に何かを勧める」と述べる用法もある旨をご指摘いただき、確認の上、記述を修正いたしました。ご指摘に感謝申し上げますと共に、不正確な情報を発信してしまっていたことを謹んでお詫び申し上げます。
advise はやや上からの忠告のニュアンス
advise は日本語の「提案」「助言」「忠告」といった語に対応し得る動詞です。
advise は、基本的には、専門家や識者、経験者のような立場からの、素人に対する助言、というニュアンスのある表現です。たとえば、弁護士や医師が(専門家の立場から)顧客や患者に対して提案するという場合に、advise の語が用いられます。
対等の立場にある同僚へ何事か提案するような状況を advise の語で表現すると、微妙な違和感のタネになる可能性があります。場合によっては相手を下に見ているニュアンスが感じられてしまうかもしれません。
もし、意味ニュアンス的には advise がしっくりくる文脈だけど、あまり不遜な態度と想われたくはない、という悩み所があるなら、助動詞 would を加えたり、May I advise ~? のような言い方にしてみると、丁寧で控えめに助言するニュアンスが出せるでしょう。
advise は基本的に advise to do あるいは advise that ~ の形で用いられます。「しないようにと提案する」と述べる場合は advise against doing something という形で用いられます。
無駄な広告を減らすことを提案します
あなたがこの案を採用することは良いと思いません
もし彼がイケメンだと思っているのであれば、私は目の検査をすることをおすすめします
ちなみに、動詞の綴りは advise ですが、名詞の「アドバイス」は綴りが変わって advice になります。発音も異なり、 advise は /ədˈvʌɪz/、advice は /ədˈvʌɪs/ です。
counsel は advise をもっとカタくした表現
counsel はおおむね「助言する」「忠告する」と訳される動詞ですが、とりわけ社会問題や個人的な問題に関して「熟慮した上で助言・忠告する」あるいは「知恵を貸す」というような意味合いがあります。
counsel は名詞としては「顧問弁護士」を指す意味でも用いられます。advise よりも大分カタイ表現といえます。
counsel は主に counsel somebody to do、counsel that ~、counsel doing の言い回しで用いられます。「しないように忠告する」という場合は advise と同様に前置詞 against を伴って表現されます。
その時、コーチは注意を促した
実を言うと、彼が叱責される前に、彼に指輪を外したほうがいいよとすすめたんだ
propound は学説の提起・提唱・提議
propound は、学説や理論を提起したり、問題を提議したり、という文脈で用いられる動詞です。訳語としては「提案」が穏当な場合も多いにせよ、硬い表現であり、使いどころは限られます。
相手の意見や考え方に対する反論を提起するような場面では propound の語がしっくり来る場合もあるでしょう。
彼は地球は丸いという学説を提唱した
urge は力強く(強引に)主張するニュアンス
urge は「主張する」「力説する」「強く促す」「しきりに勧める」という意味合いで用いられることのある動詞です。強引といえる押しの強さのニュアンスを含みます。
urge は名詞としては「強い願望」「衝動」というを意味で用いられます。動詞の「提案」の意味合いにも、突き動かされるような強さのニュアンスがあります。
urge の語が示す「提案」は、グイグイ推すタイプの、多分に押し付けがましい、必ずしも相手に歓迎されるとは限らないような提案です。自分が意見を述べるような場面でも I urge you ~ という風に表現することはまずないでしょう。
その弁護士は、両親に対してより法的措置を取ることを強く勧めた
登壇者は、治安は改善されるべきであると強く提案した
オックスフォードを選ぶことを強く勧めるよ
advocate は公の性格のある提案・提唱・唱道
advocate は、計画や案について「公に提案または支持する」という意味で用いられる動詞です。もっぱら、為政者や組織・学派の代表者のような責任のある立場の人物が、公的性格を持つ場において提案を発する、という状況で用いられます。
発言に責任を持って公の場で発するというニュアンスから、日本語では「主張する」「唱える」といった訳語も多く適用されます。
その商品を引き続き売り続けるべきだと考える
多くの有権者は、移民の受け入れを提案している候補者を支持していた
encourage は前向きな奨励・促進
encourage は主に「元気付ける」「励ます」という意味で用いられる動詞ですが、「提案する」「勧める」と訳し得る意味で用いられることもあります。
encourage で表現される提案は、相手のためになるような良いことを勧めるニュアンスが中心です。「奨励」のイメージで捉えるとよさそうです。
生徒達が新聞を読むよう促す必要がある
われわれの教師は、外国語を学ぶよう推奨した
submit は法律に関する脈絡における「具申」
submit は、基本的には「意見を提示・提出する」という意味で用いられる語であり、文脈によっては「提案する」と訳し得る意味でも用いられます。
弁護士などが法的意見を陳述するときに使われる表現でもあります。
私達の考えを変えない限り、その提案は上手くいかないと考えます
いくつかの証拠が見落とされていることを述べたい
move は議論の場における「動議」
move は「動く」「動かす」の意味を中心とする基礎動詞ですが、「提案する」という意味で用いられる場合もあります。ただし日常会話における「提案」を指す語ではなく、もっぱら会議などにおける「議案の提出」を指す語として用いられます。
会議において「(議案を)提案いたします」と述べる場合、I move that~ の形が定番の言い方です。
この案をすぐさま採択することを提案します
「提案する」場面で使う間接的な英語表現
「why don’t you?」「why don’t we?」
「why don’t you …?」(…してはどうですか?)、「why don’t we …?」(…しませんか?)は、何かを提案する際に頻繁に使われる表現です。
省略して「why not ~?」 という形で使われることもありますが、カジュアルな口語表現なので、ビジネスシーンでは使われません。
上司に聞いてみたらどうですか?
この議題は、後日改めて取り上げることにしませんか?
もし時間があるのなら、もう一度試してみたら?
「what do you think about …?」
「what do you think about …?」(…についてどうお考えですか?)も、何かを提案する際にしばしば使われる表現です。似たような表現に、「how do you feel about …?」(…についてどうお考えですか?)もあります。
「what about ~?」や「how about ~?」でも通じますが、これではカジュアルすぎるので、ビジネスシーン、特に取引先や上司に対して使うことは控えましょう。
ちょっとよろしいでしょうか。我々の若い顧客にターゲットを絞るという考えについてはいかがお考えですか?
「don’t you think it might be a good idea to …?」
「don’t you think it might be a good idea to …?」は、直訳すると「この案についてあなたは良いとお考えですか?」となります。
自分の提案を相手がどう思うかを尋ねる表現です。とても控えめな提案なので、穏やかに物事を進めたいときに重宝するフレーズと言えるでしょう。
全てを決めてしまう前に、あなたの同様に話した方が良いとは思いませんか?
「提案」への返答フレーズ
波風立てないように弱く断る場合
「それは現実的ではないですね」
「it is just not practical to …」は、相手の意見が現実的でない、つまり不可能だろうという考えを伝えることができます。
just を入れることで、「あなたが間違っているわけじゃないけれど、状況がそれを許さないのだ」というマイルドな言い方になります。
「それはちょっと難しいですね」
「it is just difficult to …」は、「それはちょっと難しいですね」と相手の意見に対して難色を示すことができます。
構造的には、上の表現に似ています。こちらは、「not practical」(現実的でない)ではなく、「difficult」(難しい)という表現を使っていることから、上の表現よりも曖昧な言い方となります。
「難しいが、頑張れば出来ないこともない」という意味にも捉えられるので、賛成する気が全くないのであれば、使うのは止めておきましょう。
「良いお考えなのですが…」
まずは相手の案を受け入れてから、その後に、自分がダメだと思うポイントを伝える表現もあります。
- that is a good point, but…(それは良い指摘なのですが…)
- that is a good idea, but…(それは良い案なのですが…)
- I understand what you mean, but…(あなたのおっしゃることは分かるのですが…)
などの表現が挙げられます。
「申し訳ありませんが、致しかねます」
相手の案を受け入れられないことに対して、まず先にお詫びをしてしまう表現もあります。「I am sorry but…」、「I am afraid but…」、「I apologize but…」などが使えます。
申し訳ありませんが、我々はそれについて時間を割くことができないのです
申し訳ありませんが、それは不可能です
大変申し訳ありませんが、あなたの計画は我々にとって好都合ではありません
「もし完璧な世界にいるんだったらね…」
相手の提案を断る際に、少し面白い言い方で「in a perfect world it should work, but…」という表現 があります。日本語では「完璧な世界にいるのであれば、それは上手くいくのだろうけれど…」と訳せます。
言い方によっては皮肉に聞こえてしまうので、ジョークを言い合える仲間内で使うと良いでしょう。
再提案を促す場合
再提案を促すことで、間接的に断ることも出来ます。
さらなる検討が必要ですね
まだ議論が足りていない状況ですね
断固とした態度で強く断る場合
「I can’t accept your proposal」(あなたの案は受け入れかねます)という言い方があります。直接的な言い方で、攻撃的な印象を与えてしまいかねません。ビジネスシーンでは、このような表現はあまり好まれないようです。
提案を受け入れる場合
「提案を受け入れる」は、直訳すると「I accept your proposal」です。しかしながら、この表現は堅苦しく上から目線の印象を与えてしまいます。
実際には、まずはじめに相手方の案を褒め、その後に「受け入れます」という意味の英語フレーズをつなげる表現がよく使われています。
同僚や部下へのカジュアル表現
同僚や部下の提案を受け入れる際には、「Sounds good.」や「Sounds great.」のように、「それいいね」「良いと思うよ」と気軽に褒めるフレーズが使えます。
相手の提案を褒めた後に、「I will run with that.」(それでやってみるよ)や「Let’s try your idea.」(あなたの案でやってみようよ)と提案を受け入れるフレーズをつけましょう。
私の提案についてどうお考えですか?―いいと思うよ。やってみようか
取引先や上司へのフォーマル表現
取引先や上司には、もう少し硬い表現を使いましょう。褒める際には、「Thank you for your proposal.」(ご提案いただきありがとうございます)や「Your proposal was insightful.」(洞察に富んだ提案でした)などが使われます。
その後に、提案を受け入れる旨を示す「I would like to follow it.」(あなたの申し出を受け入れます)や「I agree with your opinion.」(あなたの意見に賛成です)を付けましょう。
また、上司が部下に対してフォーマルな場で賛成する場合には、「You have my permission.」(許可します)という表現が使われることもあります。
ご提案いただきありがとうございました。我々はその申し出を受け入れたいと思います
とても詳細で洞察に富んだ提案でした。あなたの提案に賛成です
面白い案ですね。許可します