国際発音検定協会・代表理事が「英語の発音」の観点から「通じる英語の効果的な学習法」をお教えします。
発音の観点から見た英語教師の3区分
英語話者の発音にも色々なタイプがあります。意識をして区別してみましょう。
まず、世界中の英語話者は、次の3つのグループに分けることができます。
- いわゆる「inner English」、つまり、北米の英語、ブリティッシュ英語の中の標準語を話す人
- inner English ではないが英語を公用語として用いている人
- 外国語として英語を話している人
英語のネイティヴスピーカーと呼ばれる可能性がある人は、「(1)inner English」、そして「(2)英語を公用語とする人」です。日本人は「(3)外国語としての英語を話す人」に該当します。
昨今では、「(1)inner English」の人たちと話をする機会よりも、むしろ「(3)外国語としての英語を話す人」同士で話をする機会のほうが増えてきています。
また、小学校、中学校などに派遣されるALT(外国語指導助手)は、ネイティヴスピーカーと呼ばれる場合が多くても、実際は「(2)英語を公用語とする人」に区分される先生の方が多いということも知っておきましょう。
英語の発音は音声教材から学べ
英語を最初に学ぶ段階では、標準的で模範的な英語、つまり inner English の音を習得しておく必要があります。
そのためには、標準語で録音された「教科書の英語」が頼りになります。
学校の英語の先生は全員 inner English とは限りません。もし「(2)英語を公用語とする人」か「(3)外国語としての英語を話す人」に該当する方だった場合、その発音には、英語の標準的な(音声学で正しい)音だけでなく、自身の母国語の「なまり」が含まれてしまっています。
英語にも「標準語」と「なまり」があります。標準語となまった言葉では会話が通じても、なまった言葉どうしでは通じない、という場合があります。これは日本語の異なる地方のお年寄りの人同士で会話する場面をイメージすれば想像できます。これと同じことが英語の、「(2)英語を公用語とする人」と「(3)外国語としての英語を話す人」の場合にもあてはまるのです。
ただし、これは標準的な模範的な発音という点にのみ着目した見方です。決して「英語の先生は inner English に限る」とか「それ以外の人は教師にふさわしくない」といった話ではありませんので、誤解されませんようにお願いいたします。
学校はアウトプットの場に
学校の英語の先生が inner English でない場合、学習した英語のアウトプットに大いに協力をしてもらうようにしましょう。伝わる(理解してもらえる)ように発音することは、それだけ標準語の英語に近づく練習になります。
もしも、あなたが学校関係者で、ALTの先生方の活用の仕方などでお悩みの場合には、教材、日本人の先生、ALTの組み合わせで、生徒たちの英語を標準語にすることができます。詳しくは一般社団法人 国際発音検定協会へお問い合わせください。
日本人には日本人の先生が頼れる
母国語が学習者と同じで、しかも「通じる英語の発音」を習得した先生は貴重で頼りになる存在です。日本人が英語を学習する際には、日本人の英語の先生方が頼りになります。
日本人の英語の先生は、日本人の英語学習者と同じクセに苦しみ、発音を習得する苦労を知っています。発音方法を説明するにしても日本語を使って説明できるため効率的です。
英語の発音はネイティヴが一番正しくても、本当のネイティヴスピーカー(北米や英国の出身の人)は最初から自然体で標準的な英語が話せてしまっており、どうすれば標準語になるのかを学習者にうまく伝達できないことがあります。
まとめ
話をまとめますと、次のようになります。
- 発音は、教材から標準語を学習しましょう。
- inner English でない先生方は、発音のしかたを教えてもらうよりも、自分の発音を聞いてもらって伝わるかどうかを判定してもらう形で学びましょう。
- 日本人の先生で、英語の標準語を話せる先生は貴重です。発音方法についても教わるべきことがたくさんあります。
もし、あなたが一般の英語学習者の場合には、ラジオ、テレビの英語学習番組は標準語です。また、映画の英語もたとえばアメリカなら、東海岸、西海岸、または中北部の英語であれば真似をしても大丈夫です。英国の映画であれば、まず、アメリカ英語の発音を習得してから英国英語の特徴をまねしましょう。その方が無難です。
発音練習の順番
発音の練習にも効果的な順序があります。当たり前のようにも思われる部分ですが、あらためて振り返っておきましょう。
アルファベットの読み方を学ぶ
まず、アルファベットの読み方と、アルファベットを音素として読むときの読み方を学習します。
下記は文字が単独で、たとえば両側を子音に挟まれたときに多く読まれる読み方です。
- a [æ]
- b [b]
- c [s] [k]
- d [d]
- e [e]
- f [f]
- g [g] [ʤ]
- h [h]
- i [i]
- j [ʤ]
- k [k]
- l [l]
- m [m]
- n [n]
- o [ɑ]
- p [p]
- q [kw]
- r [r]
- s [s]
- t [t]
- u [ʌ]
- v [v]
- w [w]
- x [ks]
- y [j]
- z [z]
単語の読み方を学ぶ
単語の読み方を練習しましょう。そのときに、覚えている単語でも、改めてひとつひとつの文字を認識して、発音記号に置き換えて読みましょう。
単語を調べる際には、発音記号もしっかり調べて正確な発音を知る習慣をつけましょう。
文章単位の読み方を練習する
単語が正確に音素で読めるようになったら、文を読む練習をしましょう。文を読むときにも、単語で気を付けた発音記号は正確に読みましょう。
日々の学習で心がけるべきこと
普段の英語学習や学習教材選びにおいて、留意しておいていただきたいことがあります。
7箇条
1
どんな教材も素晴らしいものですが、自分の学習フェーズにあったものを選ばないと、上達の効果があらわれにくいかもしれません。
2
英語の学習について、もし、旅行英語ぐらいを話したいのであれば、楽なものを選ぶとよいかもしれませんが、本気で習得をしたいのであれば、ある程度の努力を惜しんでいては、上達はできないという認識を持ってください。
3
語学学習は、知識ではなく、むしろ、楽器の練習とスポーツが一緒になったようなものだという認識をしてください。人にも聞かせられるぐらいに楽器の演奏を上達させたいと思ったら、あるいは、スポーツである程度、強くなりたいと思ったら、それに応じた練習をされると思いますが、語学学習も同じです。
4
楽器、スポーツと同じように、まず、正しい「型」である「通じる発音」の型を覚えてください。
5
カタカナ英語がたくさん日本語の中でも使われています。気が付いたときには、もともとの英語を調べる習慣をつけましょう。
6
ラジオやテレビの英語学習用の番組を見ていない場合には、できるだけ、英語の映画、TVドラマなどを観るようにしましょう。
7
映画の俳優さんたちの英語の発音をまねるときに、できれば、自分の顏の骨格に似た人を選んでみましょう。そのほうが、同じような周波数を出せる可能性が高いので、まねをしやすいと思います。
「通じる英語」に効果的な音読の仕方
- 最初に、目標とするべきネイティブが読む音を教材などで何度も聞きます。
- ひとつひとつの単語の発音に気を付けながら読みましょう。
- 正確に読めるようになったら、少しずつ速度を上げましょう。
- ネイティヴの音を聞いては、自分で音読する、を繰り返します。
- 発音も正確に読めるようになって、ネイティヴが読んでいるスピードに近づいたら、発音の正確さをくずさずに、ネイティヴの音に沿って読みましょう。
いわゆる「シャドーイング」の方法で学習する場合、この5手順をきっちり意識して取り組むよう強くお勧めします。
シャドーイングに取り組む場合、大抵の場合はじめから同じ速さで読もうとしてしまいがちです。こうなると発音が大きく崩れ、ひとつひとつの音が明確に発音できなくなってしまいます。この状態を続けると、普段の音読、会話も、発音が不明瞭なままで早口の、非常に聞きづらい音になってしまいます。
英語の「正しい発音」方法の身に付けかた・矯正方法・練習方法【もくじ】
- [r] の発音の方法とコツ
- [l] の発音の方法とコツ
- [v] の発音の方法とコツ
- [f] の発音の方法とコツ
- [ð] の発音の方法とコツ
- [θ] の発音の方法とコツ
- [ʃ] の発音の方法とコツ
- [s] の発音の方法とコツ
ICLP® 一般社団法人 国際発音検定協会
代表理事 奥村 真知