英会話は英語の会話、すなわちスピーキングの実践です。英会話における「正しく伝わる英語」には、正しく伝わる発音が不可欠です。
英語の発音は音の種類も断然豊富、曖昧で繊細な言い分け・聞き分けが求められる音も多く、さらに《綴り》と《発音》の対応関係が単純でない等々、まったく一筋縄では行きません。
まずは発音の種類を知識として把握しましょう。次に正しい発音の方法(口や舌の形と動かしかた)を学びましょう。それから、単語と発音の関係、文章と発音の関係を把握しましょう。
発音が上達すれば、聞き取り(リスニング)力も向上します。学習もはかどるでしょう。正しく発話できると会話も弾みます。英語の語感が分かれば英語的な言語センスも養われます。まさに善循環。
発音の種類と発音記号の読み方
英語の発音は発音記号を使って表記されます。発音と綴りが一致しないように思われる語も、綴りが同じで発音が異なるような種類の語も、発音記号を使うことで明確に表記できます。
発音記号は記号に過ぎず、音声と一意に対応している(表記と発音が絶対に齟齬しない)ので、いちど把握してしまえばどうということはありません。
英語辞書には単語の意味と発音記号が並記されています。英英辞書でも英和辞書でも同様です。辞書で意味を引くついでに、発音記号にも意識を向けて、単語がどのように発音されるのか一緒に把握してしまいましょう。
まず覚えるべき発音記号
発音記号にはアルファベットにも似た形がない独特の記号があります。たとえば / æ / や / ə / や / θ / など。まずは大まかな要領を把握しましょう。
日本語の表記や発音は補足説明の手段として便利です。たdし、あくまでも便宜的な説明手段に過ぎないと心に留めておきましょう。
/ æ /
口を「え」と発する開き方にして「あ」と発音するような音です。
例:apple、casual、cat
/ ʌ /
力を抜いて短く「あ、」と発するような音です。
例:cut、love、up
/ ə /
ə はʌ よりも更に力を抜いて「ぁ」のように発音する音です。いわゆる「曖昧音」の代表格。わずかに口を開けてそのまま適当に声を出しましょう。
例:about、medicine、observer
/ ɪ /
「え」の口で「い」と発音するような音。
例:this、if、say、forfeit
/ ɒ / または / ɔ /
/ ɒ / と / ɔ / は口を「お」の形にして「あ」と発音します。この音はイギリス英語によく見らます。アメリカ英語の場合はよく / ɑ / の音で代用されます。/ ɑ / は / ɒ / よりもさらに日本語の「ア」に近い音です。
例:hot、lollipop、rock、want
/ ʃ /
おおむね「しーッ、静かにして」と言う場合の「し」の音です。舌の奥のほうに力が入っている状態です。
例:she、sure、delicious、conscious
/ tʃ /
日本語のチャ・チ・チュ・チェ・チョにほぼ対応する破擦音です。
例:touch、watch、cello
/ j /
/ j / は(アルファベットのJではありません)、 歯をくっつけないようにして / ʃ / を発音すると出せる音です。日本語の「やゆよ」の音に似ますが、/ ʃ /と同様に舌の奥のほうに力を入れて発音します。
例:you、year、yes、human、stew
/ θ /
上下の歯で舌を軽く噛んで出す音。声を乗せないようにして、息だけで音を出します。
例:think、theme、earth
/ ð /
上下の歯で舌を軽く噛み、声とともに出す音。
例:this、smooth、brother
/ ʒ /
日本語のジャ・ジ・ジュ・ジェ・ジョにほぼ対応する発音です。
例:pleasure、casual、version
/ dʒ /
舌を口蓋(口の中の上あご)につけるようにして /ʒ / を発音する音です。カタカナ表記で再現するならヂャ・ヂ・ヂュ・ヂェ・ヂョが近いでしょう。
アルファベットの J は単独では /dʒeɪ/ と発音します。つまり「ジェイ」よりは「ヂェイ」と表記した方が実際の発音ニュアンスに近づきます。
例:jeans、judge、change、psychologist
/ ŋ /
日本語で「あんこ」「まんが」と言う時の「ん」の発音です。
例:sing、sink、hunger
アルファベットと同じ表記の子音
発音記号は特殊な記号ばかりかというと、そうでもありません。だいたい子音は英語の表記に用いられるアルファベットに準じます。
- /b/ bed、beer、subtitle
- /d/ dig、bed、head
- /f/ finger、tough、phone
- /g/ king、gear
- /h/ hood、hit、hustle
- /k/ kick、chemistry、cricket
- /l/ land、hustle、fill
- /m/ meet、sum、comb
- /n/ money、train、knife
- /p/ pet、spirit
- /r/ rock、mother、spirit
- /s/ source、sick、loss
- /t/ teach、pet
- /v/ believe、vinegar
- /w/ wood、one、flower
- /z/ zip、rings、laser
こうした子音も英語独特の発音ですから、口の形や下の位置は正しく把握する必要があります。母音と合わさるとどういう口の動かし方になるのかも把握しましょう。
英語の母音の発音の区分
英語の母音は大きく「単母音」と「重母音」に分けられます。さらに、単母音は「短母音」と「長母音」に分けられ、重母音は「重母音」と「三重母音」に分けられます。
単母音と重母音
単母音は、他の母音とつながっていない母音を指す区分です。単母音の語の例としては hat や hot などが挙げられます。
日本語の「あいうえお」は、単母音か重母音かで言えば、単母音に該当します。
重母音は、複数の母音が連続している音を指します。a の発音(エイ)とか i の発音(アイ)が重母音であり、 take や ice などが単語例として挙げられます。
英語ではアルファベットの a や i の字は単母音で「ア」「イ」と発音することもあれば重母音で「エイ」「アイ」と発音することもあります。
単母音における「短母音」と「長母音」
単母音も音の長短によってさらに区分できます。
hat の a の音のように短く「あ」と発音する音は短母音と呼ばれます。father の a の音のように「あー」と伸ばして発音する音は長母音と呼ばれます。
三重母音
重母音 の中には fire /ˈfʌɪə/ (ファイア)のように母音が3つ連なる語もあります。これは特に三重母音と呼ばれる場合があります。
fire を三重母音と捉える見解では、 r に対応する音を母音と見なしているわけですが、これは母音でなく子音の一部として扱うべき(したがって fire は二重母音の語)とする見解もあります。
オックスフォード英語辞書は fire を三重母音とする見解をとっています。
英語の母音の発音記号一覧
英語には母音だけでも20前後の種類があります。オックスフォード英語辞書では23種類という数字が掲げられています。
音声学的な見解(分類方法)によって区分や種類が違ったり、地域によっては独特の訛りが加わったりするため、一概に数を特定することも容易ではありません。しかしひとまずは大手辞書にならって23種類と考えておいてよいでしょう。
短母音
発音記号 | 単語例 | 備考 |
/a/ | cat | 「あっ」のように音をブツッと切って発音する感じの音です。 辞書によっては /æ/ のように記されています。 |
/ʌ/ | cut | 日本語のアに近いハッキリした音です。 /ʌ/ と /a/ は cut と cat の違い、と捉えましょう。 |
/ə/ | about | ほんのちょっッとだけ「あー」と伸ばす感じの音です。 |
/ɪ/ | six | /ɪ/ は six や sit などの i に対応する音です。よく似た音に /i/ があります。/ɪ/と/i/ は特に区別されない場合もあります。 |
/i/ | money | i は country や happy などの y に対応する音です。 |
/ʊ/ | book | 日本語で言うところの「う」の音に似ています。 |
/ɛ/ | bed | 日本語で言うところの「え」の音に似ています。 |
/ɒ/ | hot | 日本語で言うところの「お」の音に似ています。 |
長母音
発音記号 | 単語例 | 備考 |
ɑː | car | ː この記号は日本語で言うところの「ー」のようなものです。伸ばすことをイメージしてください。 |
ɛː | hair | |
əː | bird | ɑː と əː の発音もとても似ていますが、 ɑː の方が口をさらに大きく開けます。 |
iː | see | |
ɔː | all | |
uː | soon | noon, group, do などの oo, ou, o の文字のつながりがこの音を出すことが多いです。 |
二重母音
発音記号 | 単語例 | 備考 |
ʌɪ | my | |
aʊ | how | 「あう」と言うイメージです。 |
eɪ | day | |
əʊ | home | ə の方が a よりもほんの少し伸ばすイメージだったので、「あ-う」と言う感じです。 |
ɪə | beer | |
ɔɪ | join | |
ʊə | tour |
三重母音
発音記号 | 単語例 | 備考 |
ʌɪə | fire | |
aʊə | hour |
英語の発音をプロに教わる
英語ネイティブスピーカーの動画レッスンで発音を学ぶ
ウェブ上には英語圏で制作された英語レッスン動画がたくさんあります。活用しない手はありません。
「English pronunciation」のようなキーワードで、Google(動画検索)や YouTube あたりで検索すれば、手頃な動画や動画チャネルが見つかります。
当方のオススメはこの方。
見つかる動画は、サイズ(時間)も編集方法も多種多様です。お気に入りのレッスンを探してみましょう。先生が美人という動機だってアリでしょう。
複数のレッスン動画を視聴して聞き比べてみる方法もオススメです。色々な声質の発音を聞くと理解が深まります。
日本人の「英語の発音のプロ」にコツを学ぶ
英語圏の発音レッスン動画は、当然ながら、講師の説明も英語です。発音の音(サウンド)は聞けますが、説明を聞いて理解するハードルは高めです。
本場の発音を聞いて音を把握したら、次の段階として、日本語で日本人向けに英語の発音の要領を解説してくれる人の出番です。
ICLP® 一般社団法人国際発音検定協会の代表理事・奥村真知先生が、英語の発音の(特にコツの要る発音の)しかたを解説してくれています。
概要・基礎知識
母音の発音
子音の発音
- [r] の発音の方法とコツ
- [l] の発音の方法とコツ
- [v] の発音の方法とコツ
- [f] の発音の方法とコツ
- [ð] の発音の方法とコツ
- [θ] の発音の方法とコツ
- [ʃ] の発音の方法とコツ
- [s] の発音の方法とコツ
英語の発音の練習方法と発音に関する注意点
まずは発音記号と実際の音を一致させる
そもそも母音の発音方法をしっかり認識していないと、発音記号を見たときにどのようにその音を出すのかが分かりません。
発音記号ごとの代表的で簡単な単語を覚えておくことで、それらの記号の正しい音を認識しましょう。
次に実際に声に出してみる
単語を勉強する際に、実際の音声を聞き、声に出してその音を再現することでその音の出し方を習得しましょう。その発音記号単体では発音できるようになっても、組み合わせる子音によっては発音が困難なものもあります。
sit で使われる ɪ は s と使われるとき日本人にとってとても発音が難しいです。というのも日本語での「し」は実際の音は shi のような音であり、発音する際に無意識に shi の様になってしまうのです。
sit は sɪt のように発音されますが、日本語の「し」の発音が抜け切っていないと shit 「ʃɪt」のような発音になってしまうのです。
このようなミスを防ぐためにも単語ごとの発音も怠らないようにしましょう。
その際には weblio 英和和英辞典や weblio 英単語帳を活用し、音声を再生、発音、を繰り返し行うことで効率よく正確な発音が身に付くでしょう。
早口言葉もイイ練習になる
発音や発声の練習方法としては早口言葉(tongue twister)もオススメできます。
英語の「早口言葉」(tongue twister)で発音練習
口や舌も身体の一部。身体的動作は体を酷使すればするほど洗練されていきます。
スマホの音声認識AIを活用するのも手
スマートフォンには音声の聞き取り機能が搭載されています。それを英語モードに切り替え、聞き取ってもらえるかどうかで自分の発音が正しいかどうかが確認できます。
英会話練習をiPhoneの「Siri」に付き合ってもらった件
発音練習で見落としがちな点
会話では「文章単位の発音」が求められる
英語の発音に用いられる個々の音素を完璧に習得しても、あるいは単語レベルで正しく発音できるようになっても、まだ全然ゴールには至っていません。
英語の文章を発する場合、単語が連なって音声が変化するリエゾン(liaison)、脱落(elision)といった現象が生じます。
つまり、文章単位で捉えないと最終的に正しい発音が把握できないのです。
英語の会話文ではリエゾン(リンキング)が生じる
リエゾンは、前の単語と次の単語の子音と母音がくっついて、ひとつの単語のように繋げて発音される現象です。リンキング(linking)とも呼ばれます。
たとえば、It is it. の文では t と i が連結して変化し「イリィズト」のように発音されます。
英語の発音における「リエゾン」(リンキング)の特徴と主なパターン
英語の会話文では脱落も生じる
脱落は、前の単語の次の単語で同じ発音・似た発音が連続した場合に、片方の音が抜け落ちる(発音されない)現象です。
たとえば、Get the chance. の文では重複した t が1個脱落し、結合した形になって「ゲッザチャンス」のように発音されます。
文意を正しく伝えるには抑揚・強弱・アクセントも重要
会話における文章表現は「声の調子」も重要な表現要素になります。これは書き言葉では表現されない、会話独特の要素です。
単語はアクセントを適切に置くことで素早く正確な伝達が実現されます。
英語の「アクセント」の考え方・基本ルール・効率的な身に付け方
文章の前後の関係に応じて、発音が変わる(弱形になる)種類の単語もあります。
そして、文全体を尻上がりで述べるか、尻下がりで述べるか、これだけで文の主旨が違って伝わる場合もあります。
声の調子を操る方法は、面倒といえば面倒ですが、使いこなせるようになれば文章を格段に正確かつニュアンス豊かに表現できるようになります。ぜひ把握しましょう。
実践的な会話練習・聞き取り練習が必要
英語の辞書には単語の発音が記載されていて、単語レベルでは正しい発音が学べます。が、文章としてどういう風に発音されるのかを具体的に知ることは困難です。
単語レベルで発音を身につけたら、長文リスニングを通じて文章単位の発話要領を習得する練習にも取り組みましょう。
発音をないがしろにするとどうなるか
読み書き中心の学校英語で育つと、発音をないがしろにしたままになりがちです。
読み書きできる英語力があれば十分じゃん? といって発音をないがしろにしていると、思わぬ苦労を強いられるかもしれません。
スピーキングでコケる
正しい発音はスピーキングの上達に直結します。逆にいえば、正しく発音できないとスピーキングがいつまで経っても上達しません。
日本語風のカタコトの英語でも伝わればいい、伝える気持ちがあれば通じる、そうした姿勢はもちろん大切ですが、それは大々大前提の話です。英語でコミュニケーションを図る意志を持ったなら、発音を改善する努力は必要です。
逆の構図を考えると辟易する
外国人と日本語で会話する場面(自分がネイティブスピーカーの立場)で、相手が日本語を変な風に発音している、という状況を想定してみましょう。
もし「旅館」を「り よ かん」と発音されたり、「おもてなし」を「おもちなす」のように発音されたりしたら、どうでしょうか。文脈から言いたいことは察しがつくでしょうが、どうしても苛立ちが募ります。
会話のたびにほんのわずかなササクレが生じるようなコミュニケーションは、やはり、できれば早々に克服したいところです。
リスニングでもコケる
リーディング面では、簡単な文章・簡単に読めるはずの文章が発音の知識不足のせいで聞き取れない場合があり得ます。
単語の意味を知っていても、その単語の正しい音を認識していないと、耳から聞いた音が単語と結びつきません。
たとえば bottle は、アメリカ英語では /ˈbɑdl/ や / bˈɔtl/ のように発音されます。これはカナ表記の「ボトル」とは全然違って、極端な話「バーロー」くらいに聞こえます。(イギリス英語では bottle は「ボトル」に近い音なのですが・・・・・・)
はじめに日本語として知った英単語はゼロから把握し直しましょう
日本語に外来語として導入され定着している英語表現の大多数は、発音よりも綴りに寄ったカナ表記が用いられています。
McDonald’s なんか発音は全然「マクドナルド」ではありません。Costco も英語圏では「コスコ」と発音されています。
日本語の中で用いられる英語表現は、発音もさることながら意味・用法が英語そのものとはかけ離れている場合が多々あります。ほぼ必ず大きな隔たりがあると言ってしまってよいかもしれません。
日本語から得た英語知識はいったん無かったことにして、むしろ余計な知識くらいに考えて、英語の辞書を引き直し、正しい意味、用法、そして発音を学び直しましょう。