英語の助動詞「can」の意味・用法ごとの具体例

英語の助動詞can」の意味合いは多岐にわたり、文脈によって違ってきます。しかし言葉の中核にあるニュアンスは根本的に同じです。いっそ和訳をやめて英語のままニュアンスを把握しましょう。訳語に振り回されなければ感覚も把握しやすくなります。

英語の「助動詞」を本当に理解する学習のコツ

英語の助動詞 can の中核的イメージに最も近い表現は「できる」でしょう。日本語表現の「できる」と直接に対応づけないように注意しつつ、実際の can の使われ方の《幅》を確認しましょう。用法のおおまかな全体像を捉えることで、ニュアンスの広がり・広げ方が掴めます。

おおざっぱなニュアンス別文例集

実現する相応の能力があるから「できる」

助動詞 can の基礎的な意味合いは「できる」と訳せます。相応の能力を備えているかどうか(できる・できない)という尺度に焦点が当てられており、意志(する・しない)や実績(した・しなかった)は特に問われません。

才能・資質がある」、「方法を心得ている」(知識が技術を獲得している)、あるいは「条件が整っている」という意味でも can が使えます。

I can’t eat soba because of my allergy.
蕎麦が食べられません、 アレルギー持ちなので
He can crush an apple with his bare hand.
彼はリンゴを素手で砕くことができる
I can go home early this very night.
今晩こそは早く帰れるぞ
I can hear you clearly.
よく聞こえます

知覚を示す動詞と併せて用いられる場合、能力的なできる・できないという意味合いよりは「音がする」「においがする」といった知覚体験を示す場合が多々あります。

I can hear something.
何かが聞こえる

この「能力があるので可能」という意味合いを示す can は、意味上はほぼ be able to と等価といえます。can の過去形 could は仮定表現として多用されるため混同を防ぐ意味で避けられやすく、また can には未来形や完了形がないので、時制が絡む表現では can の代わりに able が用いられます。

許可が得られたから「できる」

can には許可のニュアンスを中心とする用方もよくあります。日本語では「してもよい」のように訳されるところですが、根幹には「してもよい → できる」という脈絡があることを意識しましょう。

You can use the phone if you want to.
電話を 使いたかったら使ってもいいよ
Teenagers can’t go into pubs and clubs without ID.
未成年は身分証を持たずにパブやクラブへ入ってはいけません
You can open the door at any time you wish, but only once, and only briefly.
ドアは いつでも開けていいけど、ほんの1回ちょっとの間だけだよ

助動詞 may も許可の意味合いを持ちますが、can の方が mayよりも口語的な言い方とされます。

軽い命令を表す「していいよ」

can が指示・命令のニュアンスを伴って用いられる場合もあります。「命令 → 許可 → 可能」という脈絡で中核的な「できる」のニュアンスと結びつきます。

許可の意味合いとはかなり近接していると言えます。というか日本語で「もう行っていいよ」という場合と同様の表現方法です。

命令表現に区分されるとはいえ、「あなたは~できますよ」と述べて行動を促す言い方であり、遠回しに柔らかく述べる言い方です。

Now, you can go away.
もう行っていいよ(ほらお行き)
Okay, you can quit.
わかった、辞めていいよ(君、クビね)

否定の形を取ると「不許可」の意味合いとなり、命令と許可の意味合いはほぼ不可分になります。

You can’t run here.
ここで走ってはいけないよ

可能性があると言う意味で「し得る」

助動詞 can は「可能性がある」と述べる(推量する)意味で用いられる場合もあります。この推量の確度はかなり低めで、「~かもしれない」という程度、「まあないとは思うが可能性は捨てきれない」という程度です。

その事態が発生するか否かを「する・しない」ではなく「できる・できない」の尺度で捉えた場合、できないわけではない → できる、のように考えると、can が「起こり得る」程度のニュアンスを持つという感覚も理解に近づけるのではないでしょうか。

Antique clocks can seem out of place in modern homes.
アンティークの時計はもしかすると現代風の家には合わないかも
Discussion can be of no use.
議論は不毛なまま終わることもある
Immediate entering into cold water can be harmful.
急に冷水に入ると危険です
Smoking can cause cancer.
喫煙はがんの要因になることがある

このニュアンスの can を否定形で用いると「あり得ない」というニュアンスが出ます。

It cannot be true.
そんなの本当のはずがない

さらに疑問形だと可能性を模索するニュアンスが出てきます。往々にして「そんなはずがあるだろうか」という驚きのニュアンスを含みます。

Can it be true?
いったい本当だろうか

疑問文は「できますか」と尋ねる依頼表現

疑問文のうち特に Can you ~ ? もしくは Can I ~ ? の形を取る場合、多くは丁寧な依頼表現として用いられます。can のニュアンスは「許可」に絡めて把握すると、根幹イメージと結びつきやすいのではないでしょうか。

can を使った依頼表現は「しなさい」ではなく「できますか」とい婉曲的に尋ねる形になり、その分だけ丁寧な表現になります。can の過去形 could を使うといっそう丁寧な表現にできます。

Can I have some water?
お水をもらえますか
Can you open the window?
窓を開けてもらえますか

提案を表す「できるよ」→「しようよ」

can は文脈によっては「~しなよ」あるいは「~しようよ」という提案のニュアンスを含むこともあります。実現できるよ、と可能性を相手に伝えて行動を促すイメージと捉えるとよいでしょう。

We can have another drink if you like.
よろしければもう1杯いかがですか(もう1杯お飲み頂けますよ)
You can try calling him if you want to.
電話してみたいならしてみればいいさ(できることだよ)
I can go a lot slower if you want.
もっとゆっくりにしてほしかったら言ってね(ゆっくりにできるからね)

意味を切り分けようとし過ぎない構えがコツ

助動詞は文脈によってさまざまな意味合いを取ります。しかし、「可能」や「許可」というような区分・切り分け方は、語義を切り分けて整頓するための便宜的な区分に過ぎません。後付け的に設けられた区分に過ぎません。

can には可能・可能性・許可・命令・提案・依頼といった意味合いを(見出そうとすれば)見出せますが、いずれのニュアンスもひとつの根源的な意味合いに基づいています。その根源的ニュアンスそのものは、言葉で端的に表現することはできません。「できる」という語も便宜的な訳に過ぎません。

複数の意味合いを見出してもよい

言葉のニュアンスをどれかひとつに特定することが困難な文章もあります。むしろ特定しない方がよい場合もあるでしょう。

可能とか、許可とか、穏便な命令とか、そんな風には切り分けられないニュアンスをひっくるめた言い方も、実際の英語の中では遭遇します。

You can come tomorrow, right ?
明日は来れるよね

この You can come tomorrow, の can は、純粋に来られるか否かを訊ねているのでしょうか、「来てもいいよ?」という許可のニュアンスを含むのでしょうか、あるいは「来てちょうだいね」と促しているニュアンスまで含むのでしょうか。―― おそらく、それら全てのニュアンスを感じ取るべきでしょう。もちろん文章の前後の脈絡次第ではありますが。

英単語に含まれる本質的なニュアンスは、それ自体は和訳できず、英語でも言い換えは容易ではありません。できるだけ多くの文例に接して、抽象的な把握をモノにしましょう。

英語は躰で覚えるもの。場数をこなせばきっと身につきます。




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