英語のブラック(black)のイメージと祭「ブラックフライデー」

色はマイナスイメージをもって連想されやすい色です。日本語の「黒」も英語の「black」も、基本的にネガティブなイメージが想起されます。

ところで、アメリカでは毎年11月の第4金曜日をブラックフライデー(Black Friday)と呼びます。陰惨な黒ミサ、ではありません。ブラックフライデーの「黒」が会計黒字の意味でありポジティブなイメージです。

じゃあ「ブラックマンデー」や「ブラックウェンズデー」はどうなのかというと、これは残念ながら暗黒面の意味合いです。

今年もブラックフライデーが間近。「ブラック」が示す意味をひもとき、アメリカ文化の一端を覗いてみましょう。

一般的な「黒」色のイメージは「暗黒」

英語の黒(black)を、単なる色ではなく色から連想されるイメージの比喩として用いる場合、たいていは悪い意味で使われます。

不吉。邪悪。犯罪。陰険。汚穢。無明。蒙昧。そして喪(死)。おそるべき暗黒のイメージです。

  • black augury 凶兆(よからぬ前兆)
  • black moods 暗澹とした雰囲気
  • black sheep 嫌われ者、厄介者
  • black market 闇市場、闇取引
  • blackmail 恐喝、ゆすり
  • black lie 悪質な嘘
  • black joke 悪い冗談
  • black heart 腹黒い
  • black humor 毒を含んだ笑い
  • black words 不吉な言葉
  • black-list 要注意人物リスト
  • black looks 険悪そうな表情
  • black despair 深刻な絶望感
  • in someone’s black books 快く思われていない
  • look on the black side 悲観的にとらえる

dark (暗闇)もおおむね同じネガティブなイメージで用いられます。dark の方が率直で強烈な比喩表現と言えるかもしれません。

ブラックマンデー、ブラックウェンズデーは「暗黒の曜日」

ブラックフライデーと同じく black+曜日で構成される語に、ブラックマンデー(Black Monday)、ブラックウェンズデー(Black Wednesday)という語もあります。

どちらも日本語では「暗黒の × 曜日」と訳されることの多い語です。つまり black はネガティブな意味合いです。

ブラックマンデーは1987年10月に起きた株価の大暴落、ブラックウェンズデーは1992年9月に起きたポンド通貨危機の異称です。(どちらも経済史上の事件を指す固有名です)


ブラックフライデーのブラックはきれいなブラック

black と形容される表現がすべてネガティブな意味とは限りません。端的な例が「字」(in the black)。増収増益を意味する嬉しい意味合いの表現です。

We are in the black this month.
今月は黒字だ
business in the black
黒字事業

「商機・かき入れ時の金曜日」

アメリカでは毎年11月の第4曜日に感謝祭Thanksgiving Day)と呼ばれる収穫祭が催されます。米国の年中行事の中でもかなり盛大に催されるお祭です。つまり、ブラックフライデーは感謝祭の翌日です。

(ちなみに、隣国カナダでは10月第2月曜日に収穫祭が行われます)

感謝祭はアメリカの祝日です。大半の州では翌日金曜日も祝日に定めており、土日も含めて怒濤の4連休になっています。そして連休が明けると、クリスマスまであとひと月。本格的な年の瀬シーズンの到来です。

感謝祭とブラックフライデーを含む連休期間は、クリスマスに向けて本格的な準備を始める最適なタイミングです。多くの家庭がクリスマスプレゼントや何かかやを購入するためにお買い物に出かけます。感謝祭の日どの家も家族で時間を過ごすため、翌日の金曜日から本格的な買い物需要が始まります。

そんなわけで、小売店は感謝祭の翌日のブラックフライデーを「1年で最大の商機」に据え、大々的なセールを展開します。そして大繁盛します。ブラックフライデーは、いわゆる「かき入れ時」なのです。

ブラックフライデーも当初はいやな意味だった

ブラックフライデーという言葉は、もともとは、ブラックマンデーやブラックウェンズデーと同様に「ネガティブな黒」のイメージで語られる言葉だったようです。

ブラックフライデーは大勢の国民が街に繰り出して買い物に興じます。街は買い物客でごった返し、おのずと事故やケンカ騒ぎなどのイザコザが多発します。1960年代頃は、こうしたトラブル多発の厄日というニュアンスを込めて Black Friday の語が用いられていたようです。

参照:
Black Friday ―― Oxford Dictionaries

ブラックフライデーは、街中はかなりの騒乱に包まれる日ですが(これは現在も大して変わっていません)、しかし小売店の側にしてみれば大繁盛は確実の待ち望まれる日です。そして Black Friday の語は意味合いを転じ、「最悪の日」ではなく、「お店が黒字でウハウハの日」という意味合いということで定着しました。

こうした経緯・意味の変遷を眺めていると、日本語の忌み言葉験担ぎにも通じる思考の脈絡が垣間見えそうな気がします。しませんか。

アメリカのブラックフライデーは、小売店にとっては笑いが止まらない黒字の日、一般消費者にとってはクリスマスに向けて買い物に熱が入る(そして小売店もセールを展開してくれる)黒字の日、そして警察にとっては事件や事故が起きませんようにとハラハラしながら見守る日です。

サイバーマンデー登場

2000年代半ば以降、サイバーマンデー(Cyber Monday)という言葉が登場して一気に浸透しました。

サイバーマンデーは感謝祭~ブラックフライデー~土日の連休を過ぎて迎える月曜日を指す語です。ほぼ11月末日の前後。

この日は特にオンラインショッピングの売り上げが伸びる日とされており、多くのECサイトはこの日からセールを開始します。

ウェブ上でサイバーマンデーが盛り上がる理由としては、「ブラックフライデーから土日にかけて買う物を検討したけど結局決めかねて購入を見送った消費者が、やっぱり買うことにして、お店に行けないのでオンラインで買い求める」という場合が多いのではといった見方があります。

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色というものはそれぞれ特定のイメージや気分が投影されるものです。どの色にどんなイメージが伴うかは、言語や文化によって違います。

ちょっとした表現にも意外と深い文化的背景が伺えます。そうした部分に興味を持って英語学習に取り組むと、回り道のように見えても抜群に効率的に知識を得ることができます。




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