英語の「色」のイメージと、色名を使った慣用句【9色】

青・赤・黄といった色にある種の心情や性質を象徴させる表現は、英語でも日本語でも同様に見られます。ただし、どの色がどのような意味合いを示すかは必ずしも一致しません。

英語の色に対するイメージは、日本語と一致するものもあれば、日本語とは大きく異なるものもあります。色に込められた意味合いを理解することで英語世界の見え方もきっと違ってくるでしょう。

→英語で「明暗の度合い」を表現する言い方と、その具体的イメージ

Blue(青)

「青色」の主なイメージ

希望」「忠実」「優秀」といったプラスイメージ
憂うつ」「わいせつ」「陰気」といったマイナスイメージ

青色は、々しい(れやかな)前向きなイメージと、暗色らしい後ろ向きなイメージと、相対するニュアンスが共に連想される色です。

ヤらしいイメージもあるところは日本語には見られない独特の側面といえます。(英語では桃色は健康的なイメージです)

青色は海や空の色でもあり、定冠詞付き名詞「the blue」で「青空」「青海」転じて「はるか彼方」といった意味にもなります。ちなみに、日本語の「隣の芝生は青い」というような、みずみずしい緑を指す語としては用いられません。

「blue」を使った英語の言い回し

幸福
the Blue Bird  青い鳥 (幸福の象徴)

高貴
blue blood  名門、やんごとなき血筋

わいせつ
blue film  ピンク映画
blue jokes  猥談

憂鬱
blue Monday  憂うつな月曜日
feel blue  気分が塞いでいる

まれに
once in a blue moon  きわめてまれに

突然に
out of the blue  だしぬけに
a bolt from the blue  青天の霹靂

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Red(赤)

「赤色」の主なイメージ

「愛」「情熱」「血気」「興奮」「革命」

英語でも赤はアクティブなイメージです。「顔を潮させる」というような血気盛んなイメージが中心といえます。また「血」を暗に示す色として用いられることもあります。

信号機の「止まれ」に見られる警戒色、会計における損失(赤字)といった意味合いは日本語と共通です。

日本語の慣用表現にある「赤の他人」や「真っ赤な嘘」のような「無関係」のニュアンスは英語には特にありません。赤の他人なら「total stranger」、真っ赤な嘘なら「downright lie」というように、色でない形容詞を補って表現する必要があります。

「red」を使った英語の言い回し

怒り
see red 激怒する

危険
see the red light 危険を感じとる

赤字
go  into the red 赤字に転じる

喧噪
paint the town red どんちゃん騒ぎする

血塗られた
red-handed  現行犯で


Purple(紫)

「紫色」の主なイメージ

「高貴」「豪華」「帝王」といったプラスイメージ
「仰々しい」「俗悪」といったマイナスイメージ

日本にも古来から高貴で雅な色というイメージがありますが、英語でも紫には帝王のイメージがあります。

英語には purple に似た色に violet (バイオレット)があり、どちらも日本語の「紫」に含まれる色とみなされます。violet はいわゆる「すみれ色」で、より青みの強い紫。purple は相対的に、やや赤みの強い紫色です。

英語で表現する「紫色」、purpleやvioletその他の表現の違い

「purple」を使った英語の言い回し

高貴
Purple Heart 米軍の名誉負傷勲章
wear the purple  皇帝である
be born to the purple  王侯貴族の家に生まれる
be raised to the purple  帝位(枢機卿の位)に就く
marry into the purple  貴人と結婚する=玉の輿に乗る

仰々しい
purple patch   うるわしい文言=美辞麗句

怒り
go  purple with rage  怒りで顔が真っ赤になる

熱狂
with a purple passion  激しく、ひたすら

 

Green(緑)

「緑色」の主なイメージ

「活気」「歓喜」といったプラスイメージ
「未熟」「嫉妬」といったマイナスイメージ

緑色は「若草」のイメージが中心といえます。生命力に満ちた若々しさ・伸び始め・伸び盛りの象徴であり、同時にそれは成長途上の未成熟の象徴です。

植物の代名詞として緑と呼ぶ場合もあります。これは日本語における「グリーン」の扱いと同じ。

緑色は嫉妬心を意味する色でもあります。これはシェイクスピアの戯曲「オセロ」の一節から採られた表現とされています。

日本語では古来、緑は「あを」に含められていたこともあり、「緑」を使った慣用表現はまれです。が、日本語の青のイメージが英語の緑のイメージに通じます。たとえばポジティブな側面では「青年」「青春」、ネガティブなイメージでは「青二才」「青臭い」など。新緑の若々しさを緑にたとえた日本語を敢えて挙げるなら「嬰児」(みどりご)が該当するでしょうか。

「green」を使った英語の言い回し

嫉妬
green with envy  嫉妬にかられる
the green-eyed  嫉妬に満ちた目

未熟者
greenhorn 初心者
green youth 青二才
as green as grass まったくの青二才

承認、許可
green light  青信号、ゴーサイン

園芸
green fingers  園芸の才能

顔が青ざめる
green around the gills  顔色が悪い、青ざめている

Yellow(黄)

「黄色」の主なイメージ

「裏切り」「卑劣」「臆病」といったマイナスイメージ

日本では黄色に活発・快活なイメージを想起しますが、英語ではそうしたイメージは希薄で、おおよそ小物じみた性格のイメージが中心です。

黄色信号で連想される「注意」「要警戒」といった意味も、英語には特にありません。(黄信号は英語では「yellow」ではなく「amber」で示されます)

「yellow」を使った英語の言い回し

臆病、卑怯
have a yellow streak  チキン野郎
yellow belly  臆病者

扇情的
yellow journalism  低俗なジャーナリズム(イエローペーパー)

Pink(ピンク)

「ピンク」の主なイメージ

「健康」「活力」「極致」 などのプラスイメージ

英語ではピンクは元気あふれる良いイメージが中心といえます。日本語の「紅顔」に近いニュアンスがあると言えそうです。

エッチいニュアンスは特にありません。

ただ「性」を連想させる節はあるようで、「pink collar」で(ホワイトカラーに対して)女性の社会進出を指したり、「pink pound」で同性愛者のコミュニティーを指したりします。

the pink pf ~ で「精華」や「極致」といった意味にもなります。

「pink」を使った英語の言い回し

健康・活動的
be pinky  快活な
be in the pink of health  健康そのものだ
be tickled pink とても喜ぶ

極致
the pink of fashion  流行の粋
the pink of perfection  完全の極致

女性・同性
pink color job  女性の進出しやすい(女性の多い)業種
pink pound  ホモセクシュアルのグループ

幻覚
see pink elephants  酩酊する、幻覚を見る

解雇
get the pink slip  クビになる

White(白)

「白色」の主なイメージ

「純潔」「潔白」「真実」など、プラスイメージ

白色は、英語でも日本語と同様に「清らかさ」や「汚れなさ」がイメージの中心にあります。「悪意(悪名)のない」「善意の」という意味合いもあります。これも清廉潔白のイメージですね。

水などを形容する場合、混じり気ののない澄んだ水を white water  と表現することがあります。日本語の「白湯」に通じますね。

人の血の気を失った様子も英語では(青ではなく)白で表現します。白衣から医者・医療の代名詞として用いられることも。

「white」を使った英語の言い回し

潔白、真実
white paper  白書
make one’s name white  汚名をそそぐ
white lie  罪のない嘘

青ざめる
be in white terror  恐怖で真っ青になる
go as white as a sheet  恐怖で真っ青になる

無色透明
white water  透んだ水
white glass  透明なガラス

Gray(灰色)

「灰色」の主なイメージ

「陰気」「陰うつ」「わびしい」「寂しい」「老成した」

白と黒の中間色にあたる灰色=グレーは、英語でも日本語と同じように「明るくない」という後ろ向きなニュアンスがあります。

「白黒ハッキリつかない微妙なところ」という意味もあります。

白髪交じりの頭髪や歳を重ねた様子もグレーと形容します。ただし、この意味合いにおいては(「老いぼれ」というより)むしろ「経験を積んだ熟練」という肯定的なニュアンスが中心です。

「gray」を使った英語の言い回し

陰鬱
very gray day  ひどく気が重い日
gray prospects  暗い見通し

曖昧
gray area  どちらとも言えない、不明瞭な

老い・円熟
graybeard  老人・賢者
gray experience  老練

Black(黒)

「黒色」の主なイメージ

「死」「不吉」「陰険」「悲哀」「失望」「不名誉」など

黒は英語においても死・不吉・邪悪・穢れ・暗黒といったネガティブイメージの巣窟です。黒色で形容されたら悲報かなと認識しておけば大体合ってる場合が多数です。

目の辺りを殴られてできるあざ(いわゆるパンダ目)は、英語では「black eye」と言いますが、これは不名誉の証というニュアンスを伴います。

とはいえ全部が全部ネガティブなイメージというわけでもありません。財政では黒字を意味します。星のない夜、ミルクや砂糖を入れないコーヒーのように、混じり気のない黒色を指す言い方もあります。

「black」を使った英語の言い回し

不吉・陰鬱
black augury  凶兆
black moods 暗澹たる雰囲気
black depression  光明の見えない不況
black sheep  嫌われ者、厄介者

悪・不正
black market 闇市場、闇取引
black economy
  ヤミ経済、隠し所得
blackmail  恐喝、ゆすり
Black Maria  囚人護送車
black lie 悪質な嘘

真っ黒・純粋な黒
black night
闇夜
black coffee ブラックコーヒー
go black
  失神して眼前が暗転する

* * *

ちなみに、Black Monday は1987年10月19日の月曜日に起きた、ニューヨーク証券取引所における空前の株価大暴落を指す語です。世界恐慌の引き金にもなった事件であり、black は絶望的イメージです。

他方 Black Friday は、感謝祭が終わって年末商戦が始まる11月の第4木曜日を指す語です。小売店にとっては一年で最も繁盛する大売り出しの日であり、こちらの black は会計黒字の意味です。

色のイメージが身につけば言語感覚もばっちり!?

色を使った慣用表現を覚えることは、必ずしも最優先課題ではないでしょうけれど、色に対するイメージが理解できると日常生活で接するさまざまな意匠(色使い)の感じ方が違ってきます。

英語の色に対するイメージが感覚的につかめるようになれば、もう英語の感性は体得したといっても言い過ぎではない、のかも知れません。




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