ビジネスメールでは末尾部分に署名(差出人情報)を記載する様式が確立しています。これは英語のビジネスメールでも同様で、やはり英文メールでも末尾に署名を記載します。
署名に記載するべき情報の種類は、日本のビジネスメールとほぼ同様です。しかし各項目の記載順序には微妙な違いも見られます。
ちょっとくらいテンプレートを逸脱しても、必要な情報を伝達するという観点では何ら支障はありません。とはいえ、ビジネス相手の心証をできる限り良好に保つには、署名欄の書き方なんかで違和感を感じさせるわけにはいきません。
署名欄は完全に事務的な用途で利用される部分です。個性を必要としません。むしろテンプレートに則った書き方が歓迎されます。最初に作法通り作ってしまえば、もうこっちのものです。
英語の署名に記載する項目、および記載順序
メール末尾にまとめて書く署名部分に、どのような情報を書くかは、英語でも日本語でも特に違いません。差出人情報と連絡手段ごとの連絡先が中心です。
日本語メールの署名では最初に会社名を記載し、続けて自身の部署名・役職名、そして担当である自分の個人名という順序が普通ですが、英文メールの署名では個人名を最初に、その次に所属に関する情報として部署名、会社名を、という順序で記載します。
特定しやすい狭い範囲から徐々に範囲を拡大していくような記載順、という意味では、英語の住所の書き方に通じるところがあるといえそうです。
英語の一般的な記載項目と記載順序の一覧
- 名前
- 部署名
- 会社名
- 会社所在地
- Eメールアドレス
- 電話番号・FAX番号
- WebサイトURL
Eメールドレスの記載順は電話番号・FAX番号と前後しても違和感ありません。電話、FAX、メールの順に並べてもよいでしょう。
FAXは半ば廃れつつあり、大部分はメールを使った連絡で代替されています。FAX番号がなくて困る場合はそうそうないでしょう。
具体例
Tarozaemon Yamada
Manager,Public Relations Department
Tokyo English Campus Co., Ltd.
123-4-5 Minami-Shinjuku, Shinjuku-ku, Tokyo 123-4567
E-mail: taro-z-y@t.englishcampus.com
Tel: +81-3-1133-5577
Fax: +81-3-0022-4466
URL: http://www.tokyo-e-campus.com
——————————————————–
———————————————————
東京イングリッシュキャンパス株式会社
広報部マネージャー
山田太郎左衛門
〒123-4567 東京都新宿区南新宿123-4-5
E-mail: taro-z-y@t.englishcampus.com
Tel: 03-1133-5577 Fax: 03-0022-4466
URL: http://www.tokyo-e-campus.com
———————————————————
要素別詳細解説
名前の書き方
はじめに個人名(担当者名)を記載します。
欧米の名前の書き方は、個人名を先に、氏姓を後に記載する順序が基本です。(やはり範囲の狭い情報から範囲を拡大するような順に記載するわけです)
日本語の氏名を英語で表記する場合、正順で記載する方法もありますが、ビジネスメールの署名欄に記載する書き方としては英語の基本的順序にならって名前-苗字の順序を取った方が無難です。正しく理解してもらえますし、違和感を持たれる懸念もありません。
苗字は全て大文字で表記する方法もあります。
部署名の書き方
個人名の次は、部署名および役職名を記載します。会社名の手前にです。
部署名にも豊富な種類があります。自分の所属する部署名は英語で何と表記するのか、あらかじめ確認しておきましょう。
部署・部門・課は department と表現します。
マーケティング部:Marketing Department
総務部:General Affaires Department (または Administration Department )
経理部:Accounting Department
財務部:Finance Department
広報部:Public Relations Department
同じ部署を指す英語表現が複数ある(訳語の選択肢がある)場合があります。そういう場合には自社がどちらの表記を採用しているか事前に確認しておくとよいでしょう。
→ ビジネスシーンでの自己紹介に役立つ英語の部署名・役職名リスト
会社名の書き方
会社名はバッチリ固有名ですから、英語表記をどのようにするかは会社次第です。あらかじめ確認しておきましょう。
法人の形態・種類・累計を表す表記は、Inc. だったり Co., Ltd. だったり Corporation だったりします。日本の法人格とは一概に対応づけられません。
商号の英語名は、登記はされていなくても、定款で定められている場合があったりします。適当に英語化するよりは事前確認を経た方が無難でしょう。
会社所在地の書き方
住所・所在地の記載方法は、日本語では「広範囲から徐々に狭める」順序で記述しますが、英語では「狭い範囲から徐々に拡大していく」順序で記述します。だいたい全く逆順になると捉えてしまってもよいでしょう。
(番地・号→字→市区町村→都道府県→郵便番号→国)
といった具合です。
国外に発信するなら郵便番号の後に国名=Japanを加えることもお忘れなく。
Eメールアドレスの書き方
電子メールアドレスの書き方は日本語とまったく同様です。行頭に E-mail: のように記し、後ろにメールアドレスを記しましょう。
英語では mail は「郵便」「郵便物」を指す一般的な語であって電子メールを意味しません。E-mail、e-mail、Email、といった表記揺れは十分に許容されますが、「e」を省いてしまう書き方は御法度です。
電話番号・FAX番号の書き方
電話番号を記載する行には、社内電話番号とファックス番号を並記するか、あるいはファックス番号を省いてしまって社内電話番号のみ記載する場合が普通です。
電話番号を記載する際の行頭の表記は Tel: が無難でしょう。
英語でビジネスメールを送る以上、もっぱら国外の相手へ連絡する場面が想定されます。電話番号は国際電話をかける場面を前提に記載しておくべきでしょう。
国際電話は、市外局番の初めの0を除いて、代わりに国番号を入力する形でかけられます。日本の国番号は81。東京23区(市外局番03)なら、833-****-**** のような電話番号が国際電話の番号となります。
Tel: +81-3-1133-5577
国際電話では一般的に、「+81」のように先頭にプラスを付けて記載されます。この「+」は、「国際電話をかける際に利用する通話サービスを指定できる入力箇所」であることを示します。
+ 記号があることで「国際電話番号です」と明示する役割も期待できます。省けるとしても記載しておいた方が親切でしょう。
FAXの記載方法も電話番号と同じく、市外局番の先頭の0を省いて国番号+81を記載します。
FAXは用途がほぼメールに取って代わられています。記載がなくて困る場面はそうそうありません。
WebサイトURLの書き方
ウェブサイトURLの書き方は日本語メールと同様です。行頭に URL: と記し、続けてホームページのURLを省略せず記載しましょう。
ビジネスメールは「個性」よりも「形式」と「作法」が重要
ビジネスメールで第一に確保すべき要素は、効率的で確実に情報を伝達することです。
ビジネスメールは、先人が研磨して洗練させてきた「型」や「作法」がすでに確立されています。この「型」を踏襲することで、最も無難かつ確実なビジネスメールが迅速に作成できます。相手方から折り返し連絡を(早々に)もらえる期待度も高まります。
署名の部分だけでなく、件名の書き方、本文の構成、本文で用いる主要な表現などにも「型」があります。既存の型を参考にして、うまく踏襲してしまいましょう。
この「型」は、日本語におけるビジネスメールと英語のそれとでは、要領が少し違います。文化の違いや英語と日本語の構造の違いなどを意識しながら比較対照してみると、理解が深まるかもしれません。
私的なメールの書き方は、ビジネスメールほど型に嵌まる必要はありませんが、ビジネスメールの書き方の要領は十分に活用できます。知人や恩師への連絡、各種問い合わせなど、さまざまな場面でメールの書き方の勘ドコロは役に立つでしょう。