英語で「(人の心や性格が)優しい」と表現する単語は複数あります。kind (親切な・思いやりのある)だけでも十分に「優しい」の意味合いが表現できますが、他の表現も覚えておくと細かいニュアンスに応じた使い分けができます。
ここがポイント
- kind / kindhearted(親切な)
- gentle(紳士的な)
- considerate (思慮深い)
- thoughtful (気が利く)
- attentive (よく気がつく)
- tender (慈愛に満ちている)
- compassionate (共感力が高い)
- have a heart of gold (心美しい)
- nice to ~ (~に対して優しい)
- good to ~ (~に良くしてくれる)
- generous(気前がよい)
- bighearted (心が広い・寛大だ)
- warmhearted (心温かい・思いやりのある)
- sympathetic(共感力・思いやりがある)
- good‐natured(気立てがよい・人がよい)
- affectionate (愛情がこもっている)
- sweet (主に女性が、親切な)
- friendly(友好的・親しみのこもった)
- amiable(好意的・気立ての優しい)
- soft on ~(甘い・鷹揚すぎる)
- indulgent to(甘い・甘やかしがちな)
単純に「優しい」の直訳を探すのではなく「どういう種類の優しさか」を具体的に表現する考え方を持つようにすると、「温和な」「寛大な」「思慮深い」「相手の痛みが分かる」と言った細かいニュアンスに対応する表現が見つかります。
思いやりのあるいい人。穏やかで柔和な人。配慮してくれる気づかい上手。ひとごとを自分のことであるかのように気に掛けてくれる慈悲深い人。そんなニュアンスが英語では形容詞ひとつで言い分けられます。
「彼は優しい」「あなたは優しい」「優しい人だ」と述べる場合の英語表現
人の心の優しさを「優しい」と評する単語の代表格は kind といえますが、kind は基礎的表現であるだけに「どういう風に優しいか」を表現しきれない側面があります。
ニュアンスに応じて他の表現で形容できると、「優しい」と言って伝えたい趣旨をより具体的に伝えられるようになります。
kind は汎用的に使える基本表現
kind は、いわゆる「優しい」の意味を表現したい大半の場面で無難に使える表現です。
懇意、懇切、有情、厚情、親身、寛大、などなど、あらゆる種類の「優しさ」が kind には含まれます。表現に迷ったら kind の語で形容してしまいましょう。
語弊を恐れずにいえば、いわゆる「いい人」に該当する要素ならまず問題なく kind で表現できます。
彼女は優しい人だ、私が困ったときはいつも手をさしのべてくれる
kind‐hearted
人の性格を表現する言い方は接尾辞 -hearted を付けて「~の心を持った(人)」という風に表現されることがよくあります。kind も kind‐hearted と表現されることがあります。
kind のようにもともと人の性格を形容する表現は kind だけで十分に意味が通じますが、接尾辞 -hearted と付けると、やや比喩的な表現も「~みたいな心」という意味合いで使えます。たとえば warm-hearted、soft-hearted など。
kind は表現形式(言い回し)が特徴的な場合がある
kind の語を使って「あなたは優しい」と述べる場合、It’s kind of you to ~ という表現方法がよく用いられます。
字面どおり訳すると「それは貴方の優しさです」というような叙述になるわけですが、これは「どうもご親切に」という趣旨を述べる定型的な言い方です。表現自体を(そういうもんだと捉えて)そのまま覚えてしまいましょう。
(手伝ってくださるあなたは親切だ)
ご親切に手伝ってくださって(ありがとうございます)
gentle は穏やかで柔和な優しさ
gentle は、温和・柔和・穏便・寛大、といった穏やかな物腰を形容する表現です。
gentle な人は安易に激高したりせず、あくまで上品で余裕のある姿勢を保ちます。これすなわち gentleman(ジェントルマン)の資質です。
優しく接する対象を明示する場合は前置詞 with あるいは to を伴って述べられます。
彼は女性と子どもには実に優しく接する
gentle は人以外にも使える表現
gentle は人物の性格・態度を形容する言い方だけでなく、雨風の穏やかさ、地形の傾斜の緩やかさ、動作の勢いの優しさなどを形容する表現としても用いられることがあります。
地上に降り立ったとき、かすかな風を感じた
gentle の語は元々はフランス語で「良家の」という意味合いだそうで、人以外の対象を形容する用法は一種の擬人化のような感覚といえるかもしれません。
considerate は思慮深く思いやりのある優しさ
considerate は、相手の気持ちを汲み取ろうとする優しさ――思いやりのある性格を表現できる言い方です。
considerate は動詞 consider から派生した語です。consider は「よくよく考える」「熟慮する」という意味合い。considerate も同じニュアンスを引き継いでいます。
他人に不快・不便な思いをさせたり不利にさせたりしないようにと気遣うような優しさは considerate と表現するとよいでしょう。
電車内ではもっとお年寄りや妊婦に対する思いやりを持つべきだ
thoughtful は配慮があり気が利く優しさ
thoughtful は、considerate と同様「思慮深い」「配慮に富む」というニュアンスの「優しさ」を表現する語です。「思いやりがある」、あるいは「気が利いている」とも訳し得るでしょう。
thoughtful は though(思慮・思索・熟考)+ -ful(~に富んだ)という構成の通り、よく考え、他人に配慮を示し、良識を持って行動できるようなさまを的確に表現できます。
やつらが上手くやっていけないのは無理もない、互いに思いやりがないからねえ
attentive は「よく気がつく」気配り上手
配慮・気配りのニュアンスを表現する言い方としては attentive も挙げられます。
attentive は attend(注意する) → attention(注意)→ attentive (注意深い)という流れで派生した語と解釈されます。思慮・思量というよりは「よく気がつく」という種類の配慮のニュアンスに近いでしょう。
tender は繊細な慈愛に満ちた優しさ
tender は「柔らかい」「か弱い」という意味を基本に色々な意味合いで用いられる語です。文脈によっては「優しい心」とか「寛大で愛情深い心」とかいう意味合いでも用いられます。
愛情を込めて優しく繊細に接する、か弱いものや感じやすい心にそっと触れる、というイメージで捉えると、優しさのニュアンスが掴みやすいでしょう。
母親は子どもたちに優しい声で話しかける
tender の語できっと連想される「Love Me Tender」はアメリカの映画のタイトル。邦題は「やさしく愛して」。
なお tender はお肉などの「やらかい」さまを表現する語であり、食感を表現する語としても用いられます。対義語は基本的に tough 。
compassionate は人の苦悩を共有・共感できる優しさ
compassionate は、他人の感情を我がことのように感じ取る情け深さ・優しさを指せる表現です。「同情的」「哀れみ深い」とも訳せます。
compassionate の語構成は com – passion – ate と分解できます。接頭辞 com- は「共に」という意味。passion は「感情」。接尾辞 -ate は「~がある」という意味合いを付与します。
誰かが苦しみや悲しみに苛まれているとき、相手の立場で考えてあげられる、そういう種類の優しさが compassionate です。
have a heart of gold (美しい心)と表現する手も
親切とか思慮深いというよりは「心が美しい」「やましいところがない」というべき人柄を表現するなら、have a heart of gold という英語の言い回しを使う手もアリでしょう。
have a heart of gold (黄金の心を持つ)という表現は、美しい・優しい心を形容する言い回しとして用いられます。高貴な、尊い、汚れのない、賞賛に値するような精神という感じの伝わる表現です。
彼女はほんとうに優しい心の持ち主だ