日本語の「音痴(オンチ)」に対応する英語表現は、 tone deaf のように表現できます。ただし「方向オンチ」や「機械オンチ」のような言い方は、もっと違った表現を探す必要があります。
「方向オンチ」のように接尾辞的に用いられる「オンチ」は not good at ~ あるいは have no sense of ~ のように叙述する言い方で適切に表現できます。品詞に囚われず言い換えられる柔軟な発想を鍛えましょう。
いわゆる「音痴」を表現する言い方
音痴の基本的な意味は、音感が鈍かったり人とは違ったりしていて上手く歌えない人、といったところ。
英語にも音痴な人を指す言い方はいくつかあります。
tone deaf
tone は「調子」を意味する語、deaf は「聾」(耳が不自由)という意味の語です。耳に音色を聞き分ける能力がない、といった意味合いで「音痴」の状況を表現します。
tone deaf は字面上かなりキツさのある表現といえます(日本語の「音痴」の字も大概アレですが)。とはいえ特にタブー視される表現というわけでもなく、日本語の音痴と同程度にはよく使われています。
tone deaf は「トンチンカン」程度のニュアンスで幅広く使われる言い方
tone deaf は、音感に関する「オンチ」の他にも、いろいろな種類の「感覚のズレ」「ダメさ加減」を述べる言い方として用いられています。
日本語で捉えるなら「~オンチ」よりも「トンチンカンな」という言い方の方がニュアンスが近そうです。
テスラにおけるセクハラ事件と、テスラそしてエロン(CEO)のトンチンカンな対応
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poor pitch singer
歌がヘタ!という意味合いなら poor pitch singer という言い方で表現してもよいでしょう。
pitch は「音程」を指す語。音の調子を曲や演奏に合わせる能力に乏しい人、調子はずれに歌う歌い手、という意味で音痴を表現する言い方です。
have no ear (for music)
have no ear も音痴に通じる表現といえるでしょう。ただし歌うのがヘタという意味合いよりは、「音楽を理解できる」「耳が肥えている」といった鑑賞力のニュアンスに寄る表現です。
日本語で「聞く耳を持たない」と表現する言い方のような(「助言などに耳を傾けない」といった意味の)用法で have no ear to hear ~ と述べる言い方も、ない訳ではないようですが、そういった意味合いで用いられている例は極めて稀です。
have a tin ear
have no earと同様の言い回しで have a tin ear と述べる言い方もあります。tin は「スズまたはブリキ(でできている)」という意味の語。
have no ear も have a tin ear も、通俗的な表現です。
「オンチ」は「苦手」「不得意」のように言い換えて考えよう
方向オンチ、運動オンチ、機械オンチ、味覚オンチ、恋愛オンチ、あるいは政治オンチ、といった言い方における「オンチ」の意味合いは、 tone deaf 等の表現ではイマイチ表現できません。
「オンチ」の含意を「~が苦手」「得意でない」あるいは「感覚が貧相」という風に捉え直してみると、その趣旨を英語で表現する言い方が見つかります。
- not good at ~ (上手でない)
- bad at ~ (下手だ)
- terrible at ~ (すごくヘタだ)
- can’t ~ (できない)
- poor sense of ~ (センスが乏しい)
- not ~ savvy (勝手が分からない)
not good at ~
not good at ~ は「得意でない」あるいは「上手でない」と叙述する言い方です。文脈によっては「苦手だ」と述べるニュアンスでも使えます。
私は絵が下手です
bad at~
not good at ~ よりも率直に bad at ~ と述べてしまう言い方もアリでしょう。
bad は not good よりもさらに苦手・不得意というニュアンスに傾き、「本当に苦手」「てんでダメ」くらいのニュアンスを醸します。「苦手だからやりたくない」という意味合いに受け取られる場合もままあります。
terrible at ~
not good at や bad at と同種の表現としては terrible at ~ も挙げられます。
terribleは基本的に「恐ろしい」「ぞっとするような」といった意味合いの語ですが、叙述用法で「恐ろしく下手」という意味で用いられることがあります。
terrible at sports と言えば「運動がからっきしダメ」ということで「運動オンチ」のニュアンスがそこそこ再現できそうです。
can’t ~
can’t ~(can not ~)は、「できない」「能力がない」といった意味の言い方ですが、得意・不得意について述べる文脈では「まともにできない(くらい不得意だ)」という意味で使えます。
彼女はまともに演技できない
彼は何のスポーツをやらせてもダメだ
have poor sense of ~
have poor sense of ~ は「感覚が貧相だ」という意味でオンチっぷりを表現する言い方です。
sense(感性)について言及する言い方なので、特に味覚や方向感覚といった「感じ取る」種類の能力について述べる場面で幅広く使えます。
私は味覚オンチだ
彼女は方向オンチだ
not ~ -savvy
savvy は主にアメリカ英語で「~に精通している」「通な」という意味で使われる語です。
savvy は名詞とハイフンで連結させて computer-savvy(PC通)や music-savvy(音楽通)のように表現する言い方でもよく用いられます。
そして、「savvy ではない」と表現すれば「通でない」「疎い」という意味が表現できます。
松尾芭蕉?誰それ?僕は歴史オンチなんだよ
new-fangled
new-fangled は「最新の」「今風の」を表す形容表現ですが「新しすぎて苦手だ、嫌いだ」というニュアンスも含みます。「自分には新しすぎて扱いきれないもの」を new-fangled で修飾すると、「機械オンチな自分には難しい」という文脈を表現できます。
機械オンチなので、娘からもらった携帯は今風過ぎてよく分らん