サラリーマン(salaryman)は《和製英語》です。とはいえ英語圏では全く理解されない、というわけでもありません。かと言って通じるとも言い切れません。その辺わりと微妙な語彙です。
salaryman に相手が理解を示したとしても、語弊がないとも限りませんし、あらためて「伝わる言い方」を考えてみましょう。
サラリーマンは「逆輸入」された英語表現
「サラリーマン」という言い方はもともと英語にはなく、日本で使われ出した言い方であり、すなわち和製英語です。戦前にすでに登場しています。
salaryman は和製英語、とは言っても、英語にも名詞 salary の派生語として salaried (給料をもらっている)という形容詞があります。サラリーマン → salaried man のことかな、という流れでの理解は十分に期待できます。
英英辞書にも掲載されている
時代が下って、日本の企業文化や労働文化が海外に紹介されるようになると、日本の勤め人の典型的あり方として「サラリーマン」の語が英語圏に伝わりました。
そして、今日では、Oxford Dictionaries、Cambridge Dictionary、
Macmillan Dictionary などの英語辞書に「salaryman」の語が所収されるに至っています。
もっとも、サラリーマンという語は「日本のサラリーマン」という意味合いが付随します。基本的に日本文化を前提した語彙として導入されているわけです。(しかも karoshi のような概念がしばしば連想されます)
英語で、単に「企業に勤務している」という意味合いを表現するなら。salaryman よりも他の表現を使った方が無難でしょう。
「サラリーマン」に対応する英語表現
日本語の「サラリーマン」に1対1でバッチリ対応する英語表現は、なかなか見いだせません。サラリーマンの語に含まれる範囲が、英語の各種表現の含む範囲とズレるためです。
white-collar worker
white-collar worker (ホワイトカラー)は、企業勤めのいわゆる「会社員」全般を指す比較的無難な表現です。
white-collar worker は、もっぱら、blue‐collar worker と対比して扱われる表現です。ブルーカラーは肉体労働者を指します。
nine-to-fiver
nine-to-fiver は「朝方9時から夕方5時まで(勤務する人)」という意味で、フルタイムで勤務する人(regular worker)を指す言い方です。基本的にサラリーマン型の会社員を指します。
5時を過ぎても残業しまくる社畜は nine-to-fiver と言えるか?という疑問は、この際スルーしておきましょう。
英語で考える「ブラック企業」と英語の「black company」
office worker
一般企業に勤めている「会社員」という意味で、 office worker と表現する手もあります。
office worker は、単に「会社員」という意味で用いられることもありますが、特に事務的な仕事に従事する一般事務員という意味合いで用いられることもあります。
businessman または businessperson
会社勤めという意味では businessman あるいは businessperson もサラリーマンに対応する語になり得ます。
昨今では性差是正の観点から businessman は避けられ、 businessperson の語への置き換えが進んでいます。
ただし、英語における businessman(businessperson)は、基本的に経営者や管理職のような、企業経営に携わる立場の人を指します。日本語の「ビジネスマン」とは齟齬がある点に注意しましょう。
英語でも日本語でも一般的に用いられていて、意味に乖離がある、という意味では「サラリーマン」よりもむしろ「ビジネスマン」の方が要注意ワードといえるかも知れません。
職業まで具体的に表現してしまう手もある
日常会話でシゴトの話題になる場合、「会社員」「サラリーマン」というような抽象的な捉え方でなくて、具体的にどういう会社に勤めているか、どういう仕事に携わっているかに言及した方が理にかなう場合が多々あります。
「どこそこの会社に勤めています」とか、「エンジニアとして働いています」という風に述べてしまえば、あえてサラリーマンに対応する英語表現を模索する必要もありません。