JR東日本の Suica あるいは PASMO や JR西日本の ICOCA に代表される「ICカード型乗車券」は、英語では prepaid transportation cards のように表現できます。「プリペイド式交通カード」と述べるわけです。
場面によっては単に IC card(ICカード)というだけでも十分に何のことか伝わるでしょう。 train cards のような言い方で通じる可能性も十分にあります。文脈次第では electronic tickets のような言い方がバッチリ趣旨を汲んだ表現にもなり得ます。
「チャージ式 + 交通 + 券」を英語でしっかり説明する言い方
Suica などの交通系ICカードを改めて言うと(1)あらかじめ入金(チャージ)しておき(2)主に交通機関(や買い物)で用いる(3)カード、と説明できます。これらの要素をそれぞれ英語にする発想で、もっとも標準的・説明的な言い回しがいくつか考えられます。必ずしも決まりきった言い方はありませんが、例えば、prepaid transportation cards や rechargeable train passes といった熟語的な英語表現が挙げられるでしょう。
ちなみにJR東日本の英語版サイトでは、Suica を英語で a prepaid e-money card for moving around and shopping(移動や買い物に使えるプリペイド式の電子マネーカード) と説明しています。これを一応、Suica 系ICカードを余すところなく英語で説明した言い方と考えてもよいでしょう。
prepaid transportation cards
prepaid transportation cards は「事前入金式の交通カード」とでも訳せる英語の言い方です。prepaid の接頭辞 pre- は「あらかじめ」「~以前の」といった意味合いを表します。
訪日外国人観光客を対象にした交通機関の紹介サイト Japan Station でも、交通系ICカードの紹介記事のタイトルに「prepaid transportation cards」が使われています。
rechargeable train passes
rechargeable train passes は、あえて漢字熟語っぽく訳せば「再入金可能乗車券」となるような英語の言い方です。Suica系ICカードをやや改まって言ったものといえます。rechargeableは、動詞の charge(請求する、充電する、チャージする)を核に、繰り返しを表す接頭辞 re- と「~できる」の意を表す接尾辞 -able を付加した英語表現です。
いささか背景知識に任せた英語で伝える言い方
交通系ICカードは、諸外国の大都市圏でも普及しているところがあるため、なんとなくは知っている人が多いと予想されます。日本語の熟語を作るような要領で、なんとなく transportation(交通)や train(電車)あたりの英語と、cards(カード)や tickets(券)あたりの英語を安直に並べても通じてしまいそうです。
もう少し習慣的に使われている英語の言い方として electronic tickets 、IC cards 、train cards 、smart cards などがあります。
一方で、Suica系のICカードサービスに全く馴染みのない人に対して英語で話す場面、あるいは交通系ICカードの紹介を英語でしたいような場面では、不親切で粗略すぎる言い方といえます。また、必ずしも交通系カードだけを指す訳ではない言い方も含みます。
IC cards
IC cards は、日本語の「ICカード」にそのまま対応する英語表現です。IC は「集積回路」を表す integrated circuit の頭文字をとった英語の言い方です。必ずしも交通系カードとは限りませんが、文脈があれば自ずと Suica などを指すことになります。外国人観光客を対象にした交通機関紹介サイト Japan Station でも、総称的な英語表現として IC cards が使われています。
electronic tickets
electronic tickets は「電子乗車券」を英語で表した言い方です。自国に交通系ICカードが普及しているような人であれば、これだけの英語でもSuicaに類するサービスをイメージできるでしょう。ちなみに、electronic はよく精密機器などについて「電子の」という意味で用いる形容詞で、electric(電気の、電力の)との混同に注意が必要です。
smart cards
smart cards は、お店や交通機関などの様々な場所で使える便利なカード全般を指しうる英語表現です。特に「ピッ」とかざすだけのカードを contactless smart cards ということもあります。必ずしも Suica などを指す英語表現とは限らず、交通系ICカードは smart cards の1種といった関係です。
海外・英語圏の類例を引き合いに出して「アレみたいなの」と説明する英語表現
海外にも交通系ICカードが導入され普及している国・地域があります。たとえばロンドンの「Oyster Card」、米国はワシントンD.C.の「SmarTrip」などが挙げられます。
Oyster Card あるいは SmarTrip を知っている人が相手なら、「Oyster Card みたいなシステム」とでもいえば、Suica はどういう風に使われるものなのかは端的に伝わるでしょう。
Suicaはイギリスのオイスターカードみたいな乗車券です
海外の類例を引き合いに出す方法は、相手がそれを知っていて初めて通じるという前提があります。「Oyster Card って知ってる?アレみたいなもんだよ」という風に半ば探りつつ説明する努力が別途必要になってきます。
いずれにしても、相手がどの程度の知識・情報をすでに持っているか、そして相手がどの程度の情報をいま必要としているか、という点に応じて、英語表現の角度や詳細さは違ってきます。