学術的な(アカデミックな)文章には書き方のルールがあります。このルールを英語ではアカデミックライティング(academic writing)と呼びます。学府に提出する文章は、論文であれレポートであれ、所定のルールを踏まえて記述しなくてはなりません。
作成する文書の種類によって体裁は違ってきますが、基礎的な考え方やルールは共通です。アカデミックライティングの基本を踏まえた上で、適格な文章を提出できるようになりましょう。
アカデミックライティングの根本は日本の(日本語の)論文・レポートの書き方にも通底します。特に海外の大学へ正規留学するわけではない方も知っておいて損はありません。
論文・レポートに必須の要素
論文やレポートを書くにあたってなくてはならない要素として、タイトル、序論と結論、参考文献といった要素が挙げられます。
タイトルや結論は、ただ不可欠の要素というだけでなく、書き方に所定の「型」あるいはルールがあります。
タイトルをつける
タイトルは、当の論文・レポートの内容を端的に示す部分です。主題や観点を的確に示し、興味を持たせるようなタイトルを付けましょう。
タイトルに含まれる単語は、冠詞、接続詞、前置詞を除いてすべて頭文字を大文字にします。英語論文でサブタイトル(副題)を付ける際には「~」や「―」といった記号は用いず、コロン(:)を使って示します。
タイトルの中でも大文字にならないもの:
冠詞 a, an, the
接続詞 and, but, or など
前置詞 on, at, to, from など
新しい女性の創造―19世紀の消費主義、教育、国家アイデンティティ―
序論と結論をつける
アカデミックな文章では序論(Introduction)と結論(conclusion)が必須です。
序論は「今からこういう事を書きます」と宣言する導入部分です。論文・レポートを書いている目的や、研究・調査・考察の背景、方法を明らかにして、論文・レポートの方向性をはっきりと示します。
結論には、ここまで書いてきたことを踏まえた上でどのようなことが言えるかをまとめる部分です。本文の総括であるため、本文中で言及されなかった新しい情報を盛り込んではいけません。
参考文献をつける
論文・レポートを書くに当たっては、多かれ少なかれ、先人がものした論文や書籍を参照して調査の手がかりにすることになります。調査・執筆の際に参考にした論文や引用した書籍は、必ず参考文献として掲載します。
参考文献は Bibliography、Works Cited、または Reference と表記します。
他所の文献の情報や記述を、参考文献として出所を明示せずに盛り込んでしまうと、剽窃(plagiarism)に該当してしまいます。剽窃と認められたらそれだけで論文としては失格です。
論文で使ってはいけない表現
アカデミックな文章では基本的に口語的な表現を使ってはいけません。口語的と思われる表現はフォーマルな表現に置き換えるようにしましょう。また論文やレポートは感想文ではないため、客観的な記述を心掛けましょう。
意味の広い基本動詞は避ける
アカデミックな文章では、日常英会話で用いるカジュアルな英語表現は使いません。それなりに品格のあるフォーマルな表現を使います。
have、do、make、get、give、put、take といった動詞は、基礎的であり普段よく使う単語ですが、アカデミックな文章では敬遠されます。できるだけ別の表現に置き換えましょう。
たとえば、have to (~しなければならない)なら must に、had to は was required to や was forced to などで言い換えられます。get(得る)はobtain(獲得する)に、take off(取る)はremove(除く)にすると、より論文として適切な表現になります。
基本的には「意味の幅が広すぎる表現は避ける」「文意が曖昧にならない明確な表現を使う」ことを意識すると、要領は掴みやすくなるでしょう。
接続詞 and、but、so を文頭に置かない
and、but、so といった接続詞を文頭に置く(「And, ~」のように始まる)文章は、アカデミックライティングでは御法度とされています。
文頭では、andの代わりにmoreoverかIn addition、butの代わりにhoweverかnevertheless、soの代わりにthereforeかhenceを使います。
×And,…
○Moreover,…/In addition,…
×But,…
○However,…/Nevertheless,…
×So,…
○Therefore,…/Hence,…
主語は I を使わない
論文やレポートでは、基本的に一人称の I を主語に置きません。
「私は~」と始まるような文章は、どうしても主観的な記述になって独りよがりな印象を与えてしまいます。文章に客観性を与える記述方法として、無生物主語を使った書き方が多く用いられます。あるいは、自分も査読者も含めて「我々」という意味で we を用いる書き方も使えます。
→ 英語の「カジュアルな表現」と「フォーマルな表現」の違いと使い方のコツ
論文でよく使う表現
英語で論文・レポートを書くときによく使われる定番の表現もたくさんあります。
論文は正確に伝わる記述が根幹です。文体や表現の詩情やユニークさは不要です。型どおりの表現がむしろ好まれるという点は、ビジネス文書の書き方に通じるところもあるでしょう。
論文の目的を述べる
この研究の目的は~だ
この論文は~について調査する
この論文の主な目的は~だ
この論文では、~を中心に議論する
比較する
~と比較して
~と対照的に
一方では~だ。もう一方では~だ。
表で示す
表Aは~を示している
図表Aは~と示している
引用する
Aによると、~
Aが~と言っている
Aは~と言及している
Aは~と指摘している
例をあげる
例えば~
例えば~
簡単に例をあげると、~