英語で考える「ブラック企業」と英語の「black company」

昨今の新聞やテレビでは「ブラック企業」というキーワードをよく目にします。ブラック企業は今や日本における大きな社会問題として認識されています。ところで「ブラック企業」を英語で表現する場合、どう言えばよいのでしょうか。安直に black company でいけるのかな、と思いきや、そうはいかない模様です。少し状況を探ってみましょう。

black company は「黒人の企業」と取られる

日本語の「ブラック企業」を安直に字面通り英語に置き換えるなら、 black company のような言い方が思いつきがちです。

実際、日本語の「ブラック」のイメージと同様、英語の black にも「凶悪」「悲惨」「あくどい」といったネガティブなイメージがあります。当たらずも遠からずという気がしないでもありません。

しかしながら、英語で何の前提もなく black company と述べた場合、いわゆる「あくどい会社」という意味よりも、むしろ「黒人の会社」もしくは「黒人の多い会社」という意味で理解される可能性の方が濃厚です。

「企業」を表現する英語は company の他に corporation や business などもありますが、これを言い換えても特に状況は変わらず、black corporation も black business も、「悪い企業」ではなく「黒人の企業」の意味で捉えられてしまいます。
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いわゆる「ブラック企業」の意味がないわけではない

英語の black company という表現も、日本語のいわゆる「ブラック企業」の意味合いで使えないわけではありません。

とはいえ、基本的には「黒人の企業」の意味で用いられている表現なので、あえて「ブラック企業」の意味で用いる場合には括弧で括って a “black company” と表現するなどの工夫が求められるでしょう。


海外で「ブラック企業」と表現するには

evil corporation

「ブラック企業」の「ブラック」は、「悪徳」や「悪い」という意味で使われています。

英語で「邪悪な」「悪い」を意味する evil を使って、evil corporationevil company と表現されます。

sweatshop

sweatshop は、「搾取工場(低賃金で長時間労働をさせる工場)」を意味します。

sweater は、私達の着る「セーター」を意味しますが、その他に「労働搾取者」も意味します。sweatshop は、19世紀半ば、イギリスにおいて sweaters の経営する企業、工場を指して使われ始めました。

sweatshop では、労働者らは長時間低賃金労働を強いられていたので、現在でも労働者達に悪い環境の企業や工場を sweatshop と呼んでいます。

exploitative enterprise

日本のブラック企業で働く女性が自殺した事件によって、海外でも「ブラック企業」の存在が注目されるようになりました。

ジャパンタイムズでは、日本の「ブラック企業」を exploitative enterprise と表していました。「労働者から搾取する企業」という意味です。

社外に対して「ブラック」な企業は?

「ブラック企業」は、一般的に社内の人間に対して悪い企業を指します。社外に対して悪い企業は、以下のように表現します。

  • rapacious dealer(強欲な、貪欲な、略奪する商売)
  • dishonest business(不正直な、誠実でないビジネス)
  • crooked company(不正直な、不正手段を使った、歪んだ企業)

「ブラック企業」を特徴・傾向から表現してみる

ブラック企業がどういう点において《ブラック》なのか、という側面に着目すれば、また違った言い方が可能です。

意味は多少限定されてしまうことになりがちですが、その分だけ具体的にもなります。

「使い捨て」(throwaway)要素に着目する

  • 長時間労働:excessive working hours、work overload
  • 低賃金:low wages、low pay
  • サービス残業:unpaid overtime work
  • 過労死:death from overwork

「無秩序」(disordely)要素に着目する

  • セクハラ:sexual harassment
  • パワハラ:abuse of power
    ※「パワハラ」(power harassment)も日本で作られた和製英語です。海外では使いません。

「ホワイト企業」を英語で表現する

「ブラック企業」の対義語である「ホワイト企業」、英語で直訳して white company も海外で通じない英語表現です。

「ホワイト企業」は、社員への待遇が良い企業を指して使います。つまり、「優良企業」とも言い換えられるのです。

そこで、英語で「ホワイト企業」を表現するときには、以下の表現を使います。

  • superior enterprise(優良な企業)
  • good standing company(良い状態にある企業)

ちなみに、イギリスのロンドンには、衣料品や雑貨などを扱った the white company があります。「ホワイト企業」を表現したくて white company と言うと、こちらのお店と間違えられてしまうかもしれません。

日本社会の「過労死」

2016年10月7日、電通の社員だった女性が自殺した件で、労災(work-related death)が認められました。彼女は月に100時間を越える長時間労働を強いられていたのです。

日本の過労死は、「日本社会の闇」として海外でも話題になっています。日本で過労死のニュースはしばしば聞かれますが、海外では珍しいようです。

過労死は、英語で death from overwork です。しかしながら、特に日本で多く見られる現象であるため、日本語の「過労死」を使って、karoshi と呼ばれることもあります。今では英語辞書にも載せられる言葉となりました。

This is the harmless outlet for their stress: karoshi, or death by overwork, is the darker, and until recently, more overlooked one.
これは、彼ら自身によるストレスからの脱出です。過労死や長時間労働による死は、希望がなく、そして最近になるまでは頻繁に見過ごされてきました。
Overdoing it―The Economist, October, 8, 2016

 




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