英語の中にもダジャレ系の言葉遊びがあります。そこそこ機知に富んだシャレもありますが、単に語呂をひっかけただけのダジャレもあります。
いうなれば「その手は桑名の焼き蛤」「さよなら三角」「そんなことはないですしお寿司」系統の言い回しです。
こういうもじり・ひっかけ・語呂合わせ系のシャレを日本語では「地口」といいます。地口は、まじめな会話ではまず登場しない、ある種のムダ知識です。とはいえ英語の音感的な感性をつかむ手がかりにはできそうです。
英語の地口ダジャレの主な例
地口系のダジャレ表現には、辞書に載るような固定された言い回しは少なく、むしろその場その場で当意即妙に編み出される種類の表現といえます。
例として挙げ得る表現も、これが正解(他は不正解)といえるようなものではなく、あくまでも「たとえば」と前置きした上で挙げるような表現です。
つまり、正解はありません。音の響きや言葉の選び方に関しては英語ネイティブスピーカーの好み・ツボのようなものはあるのでしょうけれど・・・・・・
Okie-dokie.
okie-dokie は「O.K.」の意味で用いられる言い回しです。意味は OK と同じ、同意や了承を示します。
ニュアンスとしては「オッケー」「はいよ」「らじゃ~」くらいの軽さのある言い方です。
実質、OK に対応する部分は okie だけで、続く dokie には特に意味はありません。
okie-dokie は英語の地口としてはかなり人口に膾炙している部類の表現であり、地域や年齢に制限されずに気軽に用いられています。
Okie dokie artichokie.
Okie-dokie. を発展させたような言い回しとして Okie dokie artichokie. というような表現も挙げられます。
artichokie は artichoke (アーティチョーク)の異表記あるいは幼児語的表現といえる語で、artichoke は和名をチョウセンアザミという植物の名称ですが、もちろん特に意味などなくて、-kie の音を畳みかけて面白がるだけです。
OK, croquet.
OK の意味で用いられるフレーズとしては ok, croquet も比較的メジャーです。こちらは O.K. の語末の音を「ケ」に近い音として扱っています。
croquet (クロッケー)はイギリス発のスポーツで、ゲートボールの源流といえる球技です。発音は /ˈkrəʊkeɪ/ 。これを「クロケット」のように読んでしまうと、OK と語呂が合いませんし、仏語の croquette (→ コロッケ)と勘違いされることになります。
What’s your number ? Cucumber.
What’s your number ? Cucumber. はアメリカの子供の、おうた遊びとして比較的よく知られた言い回しです。
Where do you live ? Down the drain
What’s your number ? Cucumber
きみの名前は? メアリージェーンよ
きみのおうちは? 流されちゃった
でんわは何番?きゅうカン番!
はじめから各所で韻を踏んでおり、それでも意味は一応通るように構成されていますが、オチ部分の number と cucumber は完全に無意味な(むしろ意味が通ることを拒絶するかのような)ダジャレです。
I’m the boss, applesauce. Understand, rubberband?
I’m the boss, applesauce. は boss と sauce の語末が音韻を、I’m the boss と applesauce が音節・アクセント的に韻を踏んでいる言い回しです。
applesauce (リンゴソース)に意味はありません。もしかしたら「俺がボスだ」にカワイイ雰囲気を加味する効果はあるのかも。
I’m the boss の I と you に代えた You‘re the boss ~版もあります。
rubberband (ラバーバンド)は「輪ゴム」のことです。もちろん無意味。
普通に I’m the boss. Understand ? とだけ言う場合、「俺がボスだ分かったな」という上からの物言いになりますが、いちいちワケの分からない言葉を挿入することで、威厳も深刻さも感じさせないオドケた雰囲気が漂います。
動物ネタ
この手のダジャレでは動物名を引き合いに出す言い方も比較的多く見られます。
See you later, alligator.
別れ際の挨拶といえば See you later.(またね)が定番ですが、これに alligator (アリゲーター)と言って韻を踏む言い方があります。もちろん alligator に意味は特にありません。
After a while, crocodile.
After a while, crocodile. は、別れ際に相手に See you later, alligator. と言われた場合の返し方として使える言い回しです。
「after a while」の意味は「またすぐ後でね」といったところ。In a while, crocodile. とも言えます。
alligator も crocodile も、共にワニの区分の呼び名です。
会話の意味をなす部分では真っ当に呼応しつつ、地口を使って相手と同じ土俵に乗る、そしてワニ繋がりという共通点。これには相手も思わず「我が意を得たり」「ピシガシグッグッ」という気分になるはずです。
別れ際の挨拶は割と絶好の機会らしい
別れ際の挨拶表現は、地口ダジャレ表現が用いられやすい機会といえます。ワニに限らず色々と語呂がアレな動物名が引き合いに出されます。
- Bye bye, butterfly.(蝶)
- Give a hug, ladybug.(テントウムシ)
- Blow a kiss, goldfish.(金魚)
- See you soon, raccoon.(アライグマ)
- Take care, polar bear.(シロクマ)
- Out the door, dinosaur.(恐竜)
別れ際はしんみりした空気になりがちですから、場の雰囲気を少し陽気にしてくれる冗談が好まれるのかもしれません。
Good night, sleep tight, don’t let the bedbugs bite.
Good night, sleep tight, don’t let the bedbugs bite. は、就寝前のやりとりで「おやすみ」と告げる場面で用いられるフレーズです。
bedbugs はトコジラミの類を指す語です。この表現においては無意味というわけではありません。
night 、 tight、 bite が共に韻を踏んでおり、かつ、「おやすみなさい、よく眠ってね、ベッドの虫に刺されないでね」という気の利いたメッセージにもなっているフレーズです。
食べ物ネタ
動物の名前の他に食べ物の名前もよく用いられます。
Easy-peasy lemon squeezy.
Easy-peasy lemon squeezy. は「とってもカンタン」という意味合いで用いられることのある言い回しです。主にイギリス英語で用いられます。
easy-peasy 自体がイギリス英語で「すごく簡単」という意味で用いられる表現です。すなわち lemon squeezy はなくてもいい部分です。
lemon squeezy は「レモンが絞りやすい」といった意味で使える表現です。が、ここでは単に韻を踏むために引き合いに出されているだけで、意味を考慮する必要はありません。
What’s the deal, banana peel ?
What’s the deal ? は「どうかしたの?」と問いかける言い方としてよく用いられる表現です。
banana peel (バナナの皮)は the deal と韻を踏むために登場した部分です。多少こっけいな雰囲気を演出する効果はあるかもしれません。
Do you know what I mean, jellybean ?
Do you know what I mean ? そのものは「私の言ってること分かる?」という問いかけです。mean と bean が韻を踏んでいます。
jellybean は豆の形をした、カラフルでポップなゼリー菓子の呼び名です。
jellybean と言い添えることで、へたすると詰問にも響きかねない問いかけを柔和な響きにするような効果はあるのかもしれません。
How you been, Jellybean ?
Jellybean つながりでは How you been, Jellybean ? という言い回しも挙げられます。
How you been の部分は How have you been ? を省略した言い方で、意味は「最近どうしてた?」といったところです。