英語で「弱い」と表現する場合、だいたい weak が無難に対応します。弱い・弱々しい・もろい・こわれやすい・脆弱・苦手、等々、幅広いニュアンスが weak で表現できます。
もちろん、文脈によっては、もっと適した表現もあります。たとえばコワレモノ注意のシロモノは fragile 。虚弱・薄弱は frail 。「環境の変化に弱い」というような文脈では sensitive と表現してもよいでしょう。
「弱い」「脆い」の意味で使える主な形容詞
weak はさまざまな意味合いで使える基本表現
weak は日本語で「弱い」と形容する場面で広く使える、最も基礎的で一般的、かつ汎用的な形容詞です。
weak は strong(強い)と対比される語で、根本には「力がない」「力が足りない」「十分な力が備わっていない」という意味合いがあります。
腕力がない(虚弱)、健康を損ねやすい(脆弱)、性格が頼りない(軟弱)、あるいは、味や弱い(薄い)、影響力が弱い(弱体の)、苦手だ、劣っている、といった意味で用いられることもあります。
何日かきちんと食べていなければ弱ってしまいますよ
手術の後で少し気持ちが弱っています
濃いお茶が好きなんだけど、このお茶は濃い?薄い?
fragile は壊れやすさ・損なわれやすさを表現する語
fragile は、ダメージを受けやすく、たやすく壊れてしまうさまを表現する形容詞です。外部から加わる力に弱い、外圧に屈しやすい、踏ん張りがきかない、といった脆さ・儚さ・繊細さが表現できます。
訳語の対応関係としては日本語の「脆い」に対応する表現といえるでしょう。意味合いは「ワレモノ注意」「コワレモノ注意」のニュアンスで把握すればほぼ間違いありません。
そのグラスには気を付けてください、壊れやすいので
祖母が亡くなってから何日か、かなり気が弱っていた
彼はインフルに罹ってしまい、現在健康状態が悪い
breakable は「壊れ物注意な《モノ》」を表現する語
breakable も fragile と同様「壊れやすい」「コワレモノ注意」という意味・ニュアンスの語です。break+-able で「おおいに壊れる可能性がある」という構成なので理解しやすい語といえます。
breakable はもっぱらモノの壊れやすさを形容する場面で用いられます。物理的な物体に限らず、暗号(が突破されやすい)とか、人間関係(に亀裂や入りやすい)といった抽象的な事柄を形容する場合が多々あります。fragile のように人の内面の繊細さを形容することは稀です。
もしあなたの大きなカバンに壊れやすいモノが入っていたら教えてください
どんなにその飾りが壊れやすいか、言ったでしょうに
frail は虚弱・か弱いニュアンスを表現する語
frail は「もろい」「はかない」「病弱である」といった意味で用いられます。もっぱら人の様子を形容する表現です。
OxfordDictionaries は「(of a person) weak and delicate」と定義しています。人の体の弱さ、虚弱さ、健康の損ねやすさなどを特に形容する表現といえます。
先月彼を見たときに、彼は老けて弱々しそうであった
彼は絶望的に病弱であり、腕や足を動かすことができない
frail について、
frail の語源をたどると仏語の fraile に、さらにラテン語の fragilis に行き着くようです。つまり、もともとは fragile と同根の語彙です。
friable は砕けやすいモノを表現する語
friable は、壊れてバラバラになりやすいモノ、容易に粉砕できるものを形容する語です。脆い岩石などを形容する文脈でよく使われます。
壊れてバラバラになりやすい脆さ、を表現する形容詞としては crumbly もあります。これは crumb(パン粉) → crumble(砕く)→ crumbly と派生した語で、特に焼き菓子のような軽いモノを形容する際に用いられます。
OxfordDictionaries によれば friable の語源はラテン語の friabilis だそうで、微妙に frail とは趣を異にするようです。
brittle は「硬いけれど脆い」さま
brittle は、硬質さもあり、かつ、(弾力性がないため)壊れやすくもある、という種類の脆さを表現する形容詞です。
卵のカラ(eggshell)や板ガラス(sheet glass)などは brittle なモノの典型といえるでしょう。骨粗鬆症を患った骨は brittle bones と表現できます。
brittle は薄焼きビスケットのサクサク感を表現する語としても用いられます。
brittle は総じて「しなやかさに欠ける」「ちょっとしたことで損なわれる」というニュアンスがあり、「怒りっぽい人」や「付き合いにくい人」、「あてにできない約束事」、「人情味の薄い酷薄さ」を表現する意味で用いられることがあります。扱いに細心の注意を要するというニュアンスが感じられます。
祖父の骨は歳のせいでもろくなってしまった
湖は、壊れやすい氷の層によって覆われている
父は冷たい笑いを浮かべて、何も言わずに部屋を出て行った
彼女は口を開き話し始めたが、彼女の声は冷たかった
powerless は「無力さ」を表現する語
fragile や breakable は外部から力が加わった影響で「壊れる」といった種類の弱さ・脆さを表現する語といえますが、powerless は外部に影響を及ぼすだけの力がコチラにないという種類の弱さ・無力さを表現できる言い方です。
power+-less、すなわち、無力。非力。あるいは、無能。手も足も出ないという弱さがアリアリと伝わる語です。
helpless
powerless と同様に「無力な」と形容する表現としては helpless も挙げられます。
helpless は主に「救いの手をさしのべてくれる者がいない」という意味合いで用いられますが、他者の助け如何によらず「我と我が身を救うことのできない」という無力さを形容する意味合いでも用いられます。
文脈によっては「心許ない」あるいは「救いようがない」と訳されるような意味合いでも用いられます。
vulnerable は攻撃の標的になる弱さ
vulnerable は、身体的に、精神的に、感情的に影響を受けやすい、傷つきやすいという意味があります。また、弱みがあるために攻撃されやすいという意味でも使われます。
大勢の人の前に立ち、弱々しい気持ちである
彼らはどこが安全なのかを知らないため、攻撃されやすい
文脈に応じてうまいニュアンスの出る言い方
肯定的ニュアンスを込めるなら delicate
delicate は日本語の「繊細」に対応する語、あるいは日本語で、細やかな美しさや上品さと、それに伴う脆さや弱さを表現します。
物体の脆さの他、体のか弱い様子や、感じやすい心なども delicate と形容できます。
この果物の皮は簡単に傷がついてしまうもろいものである
この植物はとても繊細なため冬のあいだは温室に入れなければならない
「気弱」の意味なら timid
日本語で「気が弱い」と表現される意味合いは「小心」「臆病」と言い換えた上で対応する表現を探しましょう。shy や timid といった語が気弱なニュアンスをうまく表現できます。
shy は内気・恥ずかしがりといった種類の気弱さを表現する語です。timid は臆病・小心・びくついた感じの気弱さを表現します。
アルコール度数の弱い酒は light
お酒のアルコール度数に関して強い・弱いと述べる場合、「強い」は strong と表現しますが、弱いは weak よりも light (軽い)と表現する方が一般的です。
つまりアルコール度数については《strong ― light》が対比関係にあるわけです。
度数の少ない=弱い酒を weak と形容する場合も一応あるようですが、weak は「薄い」「薄まっている」という意味でも用いられることがあり、いくぶん語弊の余地があります。
もっとも、名詞を修飾して「アルコール度数が低い」と形容する場合には low-alcohol wines のように述べる言い方の方が一般的でしょう。
弱風・微弱な風・そよ風は light、gentle
風の吹き方の強さ・弱さも、《strong ― light》の対比関係で表現されます。
weak wind (弱風)と表現することもありますが、これは「風力発電のブレードを回すに足る風力がない」というようなニュアンスで用いられがちです。
心地よく肌をかすめるそよ風のニュアンスを表現するなら、gentle と形容するとよいでしょう。穏やか・静か・温和・優しげなニュアンスが表現できます。