英語で「硬い」と表現する語といえば、まずは hard が思い浮かびます。文脈によっては、 solid (「固体」「固形」)や strong (「強固」「堅固」)なども「かたい」に対応する表現になり得ます。
訳語(日本語)と英語を1対1で覚える形では、最適な表現はなかなか選べません。英語の意味合いをしっかり把握して表現を選べるようになりましょう。
hard
hard は日本語の「かたい」に対応する英語表現として幅広く使える基礎的な形容詞です。日本語の漢字づかいでいえば「硬い・固い・堅い」のどの字にも対応します。
hard は、「力を加えても容易には変形しない」「破壊が困難」といった性質を持つもの全般に対して使えます。多分に重厚なイメージも伴います。石や金属塊はもちろん、弾力性の乏しいクッション、硬質ゴム、固ゆでに茹でた卵なども hard で形容できます。「体つきが頑丈・屈強」という意味合いでも用いられます。
今朝は石のように硬いパンを食べた
hard は抽象的あるいは比喩的な表現としてもよく用いられます。たとえば、厳しい、辛い、猛烈な、といった意味合いで用いられます。これも「容易いには切り崩せない」というニュアンスが通底しています。
hard は soft (やわらかい)と対になる表現です。まとめて把握しておきましょう。
日本語の「かたい」も、対義語と一緒に覚えておくと使い分けに悩まなくなります。
- 硬い ←→ 柔らかい
- 固い ←→ 緩い
- 堅い ←→ 脆い
solid
solid も「かたい」(固い・堅い)の意味で用いられる語です。
基本的には(液体に対する)固体の状態を指す形容詞ですが、語の根底には「中身がある」「中身が密」「切れ目や中空がなく凝縮されている」というニュアンスがあります。
硬い岩石は hard とも形容できますが、高密度で締まっている感を表現する際には solid とも形容されます。中空のゴムタイヤに対して中身までゴムが詰まっているタイヤを「ソリッドタイヤ」と言いますが、これも「中身がある」「中身が密」という意味合いと捉えると腑に落ちます。
彼は体が頑丈でがっしりしている
分厚く濃密な雲を solid と形容することもあります。(雲は科学的にも微細な液体または固体として扱われます)
solid は抽象的な意味で「堅実な」と形容する場面でも用いられます。たとえば、信頼できる友人を solid friend と形容する言い方があがあります。
stiff
stiff は日本語の「硬」もしくは「硬直」に近いニュアンスを中心とする形容詞です。「強ばり(こわばり)」とも訳せるでしょう。
stiff は、hard と同様「容易には曲がらない」状況ではありますが、さらに「柔軟性が失われている」「もっと柔軟であるはずのものがカチカチになっている」というニュアンスを多分に含みます。
特に「身体の強ばり」は stiff がピッタリ当てはまります。たとえば肩コリ、寝違え、あるいは関節がバキバキになっている状況などは stiff と表現できます。
昨日、私は肩が凝っていた
ちなみに、「肩こり」は英語で stiff shoulders といいますが、「四十肩」は frozen shoulder といいます。五十肩も同じ。
stiff は、文章や所作の堅苦しさ・ぎこちない不自然さを形容する語としても用いられます。「凝り固まっている」「柔軟性に欠ける」というニュアンスで捉えるとよいでしょう。
firm
firm は「硬い」「硬く締まった」「堅固な」といった意味合いを中心とする形容詞です。「確り(しっかり)した」と英語で表現する場合の第一候補でもあります。
firm には「容易に変形しない」というよりも「容易に揺らぐことがない」「外からの力を跳ね返すだけの力がある」とでもいうべきニュアンスが多分にあります。firm promise(固い約束)、firm friendship(固く結ばれた友情)、firm faith(揺らぐことのない信仰)というように、意思を形容する表現としてよく用いられます。
ちなみに、コンピュータ用語では電子機器に組み込まれた制御用プログラムをファームウェア(firmware)といいますが、これはハードウェア(hardware)とソフトウェア(software)の中間に位置する存在という意味で用いられている呼び名と言われています。
strong
strong は「丈夫」「強い」という意味合いを中心とする表現ですが、文脈によっては日本語の「かたい」に対応する場面で用いられます。
特に城砦や信念が「容易に崩れない」という場合の固さ、堅固さ、丈夫さ、頑丈さは、「固い」という意味で strong が使えます。
強固な同盟関係