英語の動詞 break は「コワス」という大きい概念として把握しましょう。日本語の「壊す」にとらわれることなくより広い意味で捉えやすくなります。
break の代表的な意味合いとしては、「モノをコワス」と「流れをコワス」の2つが挙げられます。実体の有無にかかわらず何かの形や機能を損なうことを意味する「コワス」と、継続してきた流れを絶つという意味の「コワス」です。
「PEN英語教師塾」の動画レッスンを紹介する大好評コラボレーション企画より「基本動詞BREAKの世界」をご覧いただき、break を使いこなせるようになりましょう。
→基本動詞BREAKの世界
※動画の閲覧には、PEN英語塾へのログイン(有料)が必要になります。
動画は15分弱。講師は田中茂範先生です。以下は動画レッスン内で紹介されている内容を抜き出したものです。
break のコア図式は「モノや流れをコワスこと」
動詞 break は、何らかの力を加えて「コワス」というコアイメージでとらえることができます。ただし壊すと言ってもただ物を壊すだけでなく、もっと広い意味を表します。日本語の「壊す」という言葉だけにとらわれず、「コワス」という概念を意識することがポイントとなります。
break の使われ方は、大きく2つに分けられます。モノをコワス場合と流れをコワス場合です。モノの場合は形や機能を損なわせることを意味し、流れの場合は動いていたものを止めたり中断したりすることを意味します。
モノをコワス場合の使われ方
「壊す」以外の日本語も意味する
何らかのモノをコワスことを意味する break ですが、この破壊の方法や対象は多岐にわたります。「壊す」以外にも「割る」「折る」「破る」「ちぎる」など「形をコワス」ことに共通した動詞であれば基本的に break で表現できます。
逆に言えば「コワス」という共通した概念を念頭に置かず用例だけ覚えようとすると、日本語の表現の違いにいちいち左右されることになってしまいます。
窓を割る
パンをちぎる
足を折る
また物体が壊れる状況の中には、形が損なわれるという目に見える破損もあれば、機械のように内部が壊れてしまうような場合もあります。
break the computer というと、キーボードが外れたり画面が割れたりといった目に見える壊れ方と、一見正常だが今までのように動かないという機能面での壊れ方の2種類が考えられます。
形のないものであっても比喩的にコワスことができる
break の対象は実体のないモノも含みます。形のないモノをあたかも形があるかのように表現する、メタファーの用法です。
失恋する
失恋することは専ら break one’s heart と表されます。物理的に心が破壊されるわけではありませんが、失恋による悲しみで心が粉々になった、そんな精神状態を見事に表す表現です。
馬を飼い慣らす
break a horse で「馬を飼い慣らす」という意味になります。この表現は馬が元々持っている野性性をコワし、人間との共生を可能にするというイメージから来ています。
同様の用法で、新車を慣らすことは break (in) a new car、また新しい革靴を履き慣らすことは break a new pair of leather shoes という言い方ができます。
単位をコワして小さくする
大きなまとまりでとらえていたものをコワし、より小さな単位としてとらえなおすこともしばしば break で表されます。よく使われるのは、お金を崩すときです。
100ドル札を崩す
ざっくりひとまとめにされている物事をより細かく分類することも、 break down という句動詞で表現できます。大きな単位をコワし、一段階下におろすイメージです。
流れをコワス場合の使われ方
break のもう1つの重要な使い方、「流れをコワス」は実は日本語の日常会話にも度々登場する用法です。
例えばコーヒーブレイクは、作業を中断し仕事の流れを止めるという意味で使われている break です。ウィンドブレーカーの break は風の流れを止める、ブレイクファーストの break は昨晩から続く断食状態(fast)を止める、という意味で用いられています。
車のブレーキも、つづりこそ brake と異なりますが、車の動きを止めるという意味で break の関連語です。このように、これらの聞き馴染みのある break が「流れをコワス」という1つの意味合いに基づいて用いられていることがわかります。
ずっと続いているものを絶つこと
長い期間続いてきたものを止める、絶つ、また保ってきたものなどが壊れるといった場面は break で表されることが多くあります。
悪い習慣を絶つ
やめなければと思いつつダラダラ続けてしまっている悪い習慣を、一念発起して断ち切るような場面で break が使えます。慢心を打ち砕くような強いイメージが感じられる表現です。
君は飲酒の習慣を絶つべきだ
夜が明ける
夜が明けることは day breaks と表現できます。一定時間続いてきた夜を切り開くように、明るい朝が始まるといったニュアンスです。
記録を破る
break the record は「記録を破る」を意味します。
前回記録が塗り替えられてからずっと守られてきた記録が、ついに破られるという状況を表す意味で break がぴたりとくる動詞です。
約束を破る
「約束を破る」は break the promise で表されます。一見この場合の break は「モノをコワス」の方の意味のようにも感じられますが、これを言語学的に議論するのであれば反対語に着目することで解決できます。
反対語「約束を守る」が keep the promise になることから、この「守る」は「維持する」という意味を多分に持っていることがわかります。よって「約束を破る」という場合のこの break も、維持してきた約束を絶ってしまうという意味で用いられていると言えます。
break the contract (契約を破る)や break the law (法律を破る)でも同様の用法で break が使われています。
流れに変化が表れること
break は続いてきた流れが完全に終わる場合だけでなく、何らかの変化が表れる場合にも用いられます。このことから、「変化」そのものを表す名詞や「変わる」を意味する動詞としての用法も持ちます。
変化球
折れ線
気候の急変
My voice broke. というと声変わりしたことを表現できます。今まで持ち続けてきた自分の声に変化が起こったという意味で break が使われます。
悪いニュースを突然知らせる
break a bad news で「悪いニュースを突然知らせる」という意味になります。それまでずっと包み隠してきたものを開くというイメージを持つとわかりやすい表現です。
芸能人などが「ブレイクする」、という日本語もずっと隠れてきた逸材が開花するような、似た感覚で用いられる break の形だと言えます。