明るさと暗さは、英語では「明るい」なら基本的に light 、「暗い」なら基本的に dark で形容できます。明るさ・暗さの度合い(程度)まで表現するなら、少し違った語で表現してもよいかもしれません。
明るさや暗さの表現(とりわけ明るさの表現)の程度の違いは、多分に相対的・感覚的・主観的なものです。目にしている光景のどの部分のどんな様子に着目しているかによっても違ってくるでしょう。実例を見ながら、おおまかなニュアンスを探ってみましょう。
明るさ・暗さの程度やニュアンスがうまく伝わる表現は、会話の雰囲気をぐっと深めてくれるはずです。
→英語の「色」のイメージと、色名を使った慣用句【9色】
「明るい」の基本表現は light
light は「明るい」様子を描写する最も基本的な表現です。日本語で「明るい」と形容できる状況はたいてい light で形容できます。ついでに「明かり」も表現できます。
直接的または比喩的に「明るい」に通じる意味合いならほぼ何でも表現できます。光そのもの、光のもたらす明るさ、光にみちた空間、光源・発光体、色の明るさ・淡さ、人の印象や雰囲気の明るさ、程度の軽さ等々。
light の語そのものには「とても明るい」とか「ほのかに明るい」といった明るさの程度・ニュアンスは特に含まれません。単に「暗くない」という意味合いと捉えましょう。
また、light は名詞として「光」そのものを指します。(光源=灯=ライトも指します)。そのため a bright light(明るい光)とうように他の形容詞を受けて用いられることもままあります。
ちなみに、重量の軽さも light と形容されますが、辞書的な扱いとしては「明るさを指す light」と「軽さを指す light」は別の語義(同綴異義語)と位置づけられるようです。
bright は明るい輝き
bright は「明るい」「輝く」と形容する一般的な語です。いわゆる「積極的な明るさ」を表現する場面なら最も使いやすい表現といえるでしょう。
明るい星々の一つが特に私の目にとまった
bright は「天気晴朗」といった意味でよく使われます。強い日差しのイメージで捉えておくとよいかもしれません。
bright も比喩的な「明るさ」を形容する語彙として多く用いられる表現です。ポジティブな、「輝かしい」というニュアンスがあります。
ソーラーエネルギーの明るい未来が見える
賢明・聡明といった「賢さ」の形容としても用いられます。特にこの意味では子供の利発さを形容する場合によく使われます。
brilliant は眩しいほどのキラメキ
brilliant も同じく「まぶしく輝く」さまを形容する表現として使えます。強い光が目に飛び込んでくるような輝き・キラメキを思わせるイメージ、といえるでしょうか。
brilliant は「技巧が《光る》」というような技術的な素晴らしさの表現としてもよく用いられます。
dazzling は目の眩むようなまばゆさ
dazzle は「目をくらます」という意味の動詞で、dazzling や dazzled の形で「目がくらむほど(まぶしく輝く)」というさまを形容する表現として使えます。
radiant は燦然と輝くさま
radiant は「光(や熱)を放つ」という意味の語で、明るくひかり輝く、燦然と(燦々と)輝く、煌めく、赫耀とする、といった様子を形容する表現として使われます。日本語の「《あかるい》未来」や「《まぶしい》笑顔」と同じニュアンスで、歓喜や幸福、満面の笑顔などを形容することもあります。
さんぜんと輝く日の出を目にした
嬉しそうだね!何か素敵なプレゼントでも貰ったの?
radiant は「放射」「輻射」と訳されることもあります。radiant heat は放射熱を指す語です。
radiant は必ずしも bright ほど強く差す光のイメージを伴うわけではなく、どちらかといえば周囲に光を発散して綾なすというようなイメージがあるようです。
「暗い」の基本表現は dark
dark は「暗い」という意味合い全般を指す形容詞です。「光が少ない」「光がない」「暗い」「闇の」「暗闇の」といった意味から、さらに「腹黒い」「暗愚な」「日の目を見ない」「暗黒時代」というような比喩的な意味でも幅広く用いられます。
外は暗かったので、よく見えなかった
暗くなる前に帰ってきてね
私の将来はお先真っ暗だ
ネガティブな比喩的形容としては、dark と共に black もよく使われます。
dim はぼんやりした薄暗さ
dim は「ほの暗い」および「ぼんやりしている」という意味があります。輪郭がかすんでよく見えないといった意味合いもあります。その意味では日本語の「たそがれ」に近いニュアンスを持った表現といえるでしょう。
人の記憶があいまい・あやふやな様子や、見通しが暗いといった意味でも使われます。
ランプが薄暗い
厚い雲が辺りを陰らせた
彼はろうそくの薄明かりのなかで手紙を読んだ
夕暮れ・黄昏時の暗がりは特に dusk とも表現します。
pitch-dark はまっくらな闇
dark そのものも「闇」を指す言い方ですが、暗さを強調して「真っ暗闇」と表現する場合には pitch-dark のような表現が使えます。
英語辞書などでは pitch dark は「totally dark」(完全に暗い)とか「extremely dark」(極端に暗い)というように解説されています。
彼は、月明りのない真っ暗な夜にやって来た
突然、明かりが消えて部屋は真っ暗闇に包まれた
ちなみに pitch は原油やタールを精製して生じる残滓の呼び名です。
Jorre – Üleslaadija oma töö, CC BY-SA 3.0, Link
black as pitch で「真っ黒」と表現したりもします。
pitch black はさながら無間の闇
暗闇の形容としては dark と共に black もよく用いられます。pitch dark と共に pitch black という言い方も、暗さの表現として使われるようです。
傾向としては、pitch black は pitch dark よりもいっそう深い闇、闇の中の闇といったイメージで使われているようです。
ちなみに、NHK「みんなのうた」で人気を博した谷山浩子の名曲「まっくら森の歌」は、英訳としては Song of the Pitch Black Forest と表記する例が最も多く見られました。
Song of the Pitch Dark Forest と表記している例や、Pitch black forest song と表記している例もあり、定訳があるというわけではなさそうです。もちろん Makkura Mori no Uta という表記も多く見られます。