日本語の「国」に対応する英語表現は、country、state、nation など、複数の言い方が挙げられます。同じ文脈で言い換え可能な語もありますが、誤解を避けるために適切な語を選ぶ必要のある場合もあるでしょう。
大抵の場合、country や nation のような基礎的な単語で表現すればたいてい無難に通じます。それ以外の表現に出くわす場面に備えるつもりで、他の表現も把握しておきましょう。
英語で表現する「国名」、国の正しい読み方・書き方
「国」の意味で使える主な英単語
country
country は日本語の「国」に相当する意味で使える、最も一般的な語といえます。
国(あるいは国家)は地理・文化・民族といった複数の観点から捉えられる概念といえますが、country は特に地理的側面に焦点を当てて「独立した地域」を指すニュアンスが多分にあります。
純粋に国の所有する領域(=領土)を指す場合には territory の語が用いられます。territory は、特定の主体が占有・管理するような場所を指す語で、動物のナワバリや学問分野(領野)まで幅広い意味で用いられます。
ちなみに、地理的区分を指す語には county ( 州または郡)もあります。country から r の字が抜けた形です。誤読しやすいので注意しましょう。
中国は広大な国だ
外国に一度も行ったことがない
東南アジアの国々の中でいちばん大きな国はどこだろう
nation
nation も「国」を指す一般的な語としてよく用いられる表現です。特に民族・共同体のニュアンスを中心とする語です。
country が地理的要素に焦点を当てる語とするなら、nation は文化的・民族的側面に焦点を当てる語です。民族共同体としての「国」、あるいは「国家」といった意味合いです。
定冠詞を付けて the nation と述べる場合は「国民」を指して用いられます。また、国土の概念を度外視して「民族」を指す場合にも people の代わりに nation の語が用いられることがあります。
nation は、OxfordDictionaries では「A large body of people united by ~」と定義されています。 large の語から、ある程度の規模を有する民族的集団が念頭に置かれていることが読み取れます。
ドイツはヨーロッパ諸国の中で強力な国家だ
その国は軍事力に富んでおり、それによって世界中に強い影響力を持つ
land
国・国土を指す語としては land も挙げられます。主な意味は「陸地」や「土地」といったところで、「国」の意味で用いる場合ももっぱら地理的側面に焦点を当てて用います。
land が指す「国」の意味合いは、ほとんど country と同義で、一般的には country の方が用いられます。land が「国」「国土」の意味合いで用いられる例は稀です。古い文献で見る機会はあるかもしれません。
彼らは自分達の国を、日の昇る国と呼んでいた
若い冒険者らは、長い年月をかけて住み心地の良い理想郷を探していた
とある考古学者は未開の国に入った
state
state は、ひとつの統治機構によって政治的にまとめられた共同体、という意味合いにおける「国」を指す語です。「国家」と表現した方がしっくり来そうです。
英語の state は一概に「国」と訳せるとは限りません。政治主体である「政府」を指している場合があったり、あるいは日本語的には「国」には該当しないものの高度な自治機構を有する「州」なども state に含まれます。
アメリカ(The United States of America)は、州(states)で構成された国というわけですが、その州は国家に準じる程の独立性・自治的性格を持つわけです。
ドイツはヨーロッパ連合体の中の一国である
いくつかのボランティア団体は、政府から小額の基金を受け取った
生徒らは、アメリカ合衆国には50の州があると学んだ
home
home もしくは homeland も「国」の訳語となり得る語です。「母国」「故国」などとも訳されます。「郷里」と書いて「クニ」と読む、というようなニュアンスが感じられます。
home は人やモノが生まれた(ルーツとなる)場所という意味合いがあります。地理的範囲をもっと局限すれば、home は「家」を指すことになります。国と家とどちらも指す感覚は矛盾なく捉えられるでしょう。
go home は「家に帰る」(帰宅する)と述べる場面でも、「ふるさとに帰る」(帰郷する)と述べる場面でも使える表現です。
fatherland 、または motherland
故郷という意味で国を指す語としては fatherland や motherland のような語も挙げられます。故郷を生みの親になぞらえて「父なる祖国」「母なる郷里」と表現する語です。「祖国」あるいは「生まれ故郷」という表現がぴったり来そうです。
fatherland も motherland も、どちらも性別(ジェンダー)の要素を含む表現であるため、昨今では避けられる傾向にあります。性差が意識されない homeland の語の方が好まれます。
彼女が故郷に戻ってきてから20年以上が経った
彼らは彼らの歌の中に、故郷への深い愛を表現した
国号(国家の正式名称)に用いられる国の呼び名
国の正式名称には「王国」「公国」「共和国」といった呼び名が用いられる場合が多々あります。日常会話では見聞きする機会はまずなさそうですが、この機会に把握してしまいましょう。
republic (共和国)
republic は日本語では「共和国」と訳される語です。「共和制の国」、すなわち、君主を戴かずに民衆によって支配されている国を指す語です(対義語は「君主国」)。
republic の語を国名に含む国は世界20数ヵ国に上ります。
republic の語は、国名の前方に付いて Republic of ~ の形を取る場合もあれば、後方に付いて「~ Republic」の形を取る場合もあります。ケースの両方があります。(日本語では基本的に「~共和国」と後方に置く形になります)
- オーストリア共和国:Republic of Austria
- アルゼンチン共和国:Argentine Republic
ちなみに、中華民国の「民国」も republic です。「人民共和国」は people’s republic と表記されます。
kingdom (王国)
kingdom は「王国」、国を統治する国家元首として王を戴く国が用いる語です。
- ベルギー王国:Kingdom of Belgium
- スウェーデン王国:Kingdom of Sweden
イギリスの正式名称は The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland です。略して United Kingdom 、さらに略して UK。
principality (公国)
principality は日本語では「公国」と訳されます。公爵を君主とする(公爵が統治する)国という意味合いです。
公国は、諸侯が重要な地位を担った中世ヨーロッパの貴族社会を背景にもつ号です。21世紀の現在、 principality の語を冠する国は3ヵ国だけです。
- リヒテンシュタイン公国:Principality of Liechtenstein
- モナコ公国:Pricipality of Monaco
- アンドラ公国:Principality of Andorra
かつてはキエフ公国(Principality of Kiev)などもありました。今となっては世界史の用語です。
なお、シーランド公国(Principality of Sealand)は自称であり、これを国家として承認している国はありません。建国者が由緒ある公爵というわけでもありません。
grand duchy (大公国)
grand duchy は「大公国」と訳されます。大公の称号を授かった者が君主となり統治する国という意味です。
grand duchy (大公国)の名を冠する国家はルクセンブルク大公国(Grand Duchy of Luxembourg)1ヵ国のみです。
emirate (首長国)
emirate はイスラーム文化圏における君主(=首長)が統治する国家の国号です。中東に特有の国号といえます。
首長国の語を冠する国は、現在ではアラブ首長国連邦(United Arab Emirates)のみです。たいてい UAE と略記されます。連邦なので Emirates と複数形の扱いです。
UAE 以外にクウェートやカタールも首長を君主とする国に該当しますが、国家の名称には Emirate でなく State が用いられています。
- カタール国 State of Qatar
出身国を尋ねる場合「国」の語は特に登場しない
会話の中で「どこから来たの?」と尋ねる場合、あるいは「私は~から来ました」と自己紹介する場合、それが出身国を念頭に置いた発言だったとしても、直接に「国」に対応する語彙を用いることにはなりません。
Where are you from ? と表現するのが普通
出身を尋ねるフレーズとしては、Where are you from ? 、または、Where did you come from ? 、この2つが鉄板です。よく用いられる言い方で、どんな相手に対して用いても失礼のない聞き方です。
What country did you come from ? と表現できないわけではない
敢えて「国」の語を用いるなら、「What country ~?」という言い方は可能です。たとえば What country did you come from ? あるいは What country are you from ? のように表現できます。
しかしながら、出身地を国名では答えたくない人がいるかもしれません。国とは違った地域区分を自分の出身地として誇りに思っている人だっているかもしれません。そういう場合も踏まえて幅広い選択肢を提供する、という観点からも、Where are you from ? の方が無難であり何かと便利な表現といえます。