英語には、文頭に置いて文章全体を修飾する表現が沢山あります。こうした表現は、話題の全体像を先出しする「前置き」表現として活用できます。
最初に前置き表現を述べておくと、聞き手は話の大まかな内容(どういうことを言おうとしているのか)を理解しやすくなります。何より、とりあえず一言だけ発しておくことで、いわゆる「間を持たせる」効果が期待できます。
この「前置き表現」、コミュニケーションのちょっとしたコツとして、取り入れてみてはいかがでしょうか。英語でも、翻って日本語でも。
→英会話を上手につなげる「つなぎ言葉」を使いこなそう
→英語の前置き表現「どちらかと言うと」ニュアンス別4フレーズ
どんな表現が「前置き表現」として使えるか
「前置き表現」に期待する効果を「本文を組み立てる間を稼ぐ」と捉えるなら、まずは「本文から切り離して述べても違和感がない」という点が重要な要素です。
言い換えれば、特にそれがなくても文章が成立するような修飾表現が最も適当です。
修飾表現の中でも、特定の語に係る表現は、文章を具体的に組み立ててからでないと適切に扱えません。何より文頭に置くことが困難です。
「文章全体に係る」という部分も重要です。文頭に配置しやすく、とりあえず述べた後で少し間が空いても違和感がなく、さらに文章全体のニュアンスを事前に伝達できるため聞き手はストレスなく待機できます。何より、文章の具体的内容が内心まとまっていない段階でも適当に発することが可能です。
副詞と副詞句
その意味で、文章全体を形容する(文修飾の)副詞または副詞句は、前置き表現としてかなり便利に使えます。
たとえば Maybe, … (たぶん)とか So to say, … (まあ言うなれば)といった言い方です。
副詞とは、副詞句とは
ちなみに、英語における副詞は、動詞や形容詞、文章全体、あるいは他の副詞など、つまり名詞を除くたいていの語を修飾する語です。
英語では副詞は adverb と言います。ad+verb という構成。Collins Dictionary によれば原義は字面通りには added word を意味します。
副詞句は、副詞として機能する句(複数語からなるまとまり)です。名詞以外を修飾する+副詞として機能する+複数の単語で構成された文章上の要素が副詞句です。
そうした副詞や副詞句のうち、文章全体を修飾して用いられるタイプの表現が、前置きのフレーズとしてかなり有効に機能します。
単純なthat節
主語+動詞+(that節) の複文も、前置きとして便利に使える言い方です。I think … や It seems … のような表現です。
従属節は普通の文として成立します。主文はきわめて簡単な主語+動詞でも有効に機能します。時制の一致、のような細かい注意点はありますが、さほど神経質にならなくても英会話は普通にこなせます。
接続詞
会話には脈絡があります。「前置き」というと多少のズレを感じてしまいますが、文章のつながりを示す接続詞表現は前置き表現を十分に代替する表現として活用できます。
直前の話を受けて so, と述べるだけでも、話の展開がおおむね把握できます。積極的に使っていきましょう。
その他の定型フレーズ
In my opinion や as I see it 、あるいは you know といった間投詞的なフレーズも、特定のニュアンスを相手に伝えて効果的に間を埋めるフレーズとして活用できます。
in short、in a word、that is などの表現は、文頭の前置きだけでなく文の半ばに挿入して「つなぎ言葉」としても使えます。
でもスラングめいた言い方が多いので使い所には少し気をつけましょう。
「前置きする内容」から見る使い方のコツ
「前置き表現」として使える表現の趣旨は、ある程度限られます。内容ごとに区分して比較対照しつつ把握すると、複数の表現が効率的に覚えられるのではないでしょうか。
話の確からしさを表現する
たとえば、今から述べる内容が推測だったり可能性の話だったりするなら、まずは自分がどれだけ確信を持って話すのかを初めに前置きしてしまいましょう。
もしかすると、私の間違いかも
きっと、彼は成功します
- certainly ( きっと、確実に)
- perhaps (おそらく)
- maybe(たぶん)
- possibly(ことによると)
- without fail (きっと、間違いなく)
- in all likelihood(十中八九)
- in all probability(多分)
- in great measure( 大いに)
話についての評価や心証表現する
これから話す内容について、自分がどう思っているか、その話に自分がどんな感情を抱いているかを表現する言い方も、前置き表現として使えます。
残念ですが、ご要望にはお応えしかねます
幸いにも、怪我はありませんでした
- happily(幸運にも)
- naturally(当然ながら)
- accidentally(偶然にも)
- absolutely(断じて)
- by a happy chance (幸運にも)
- in the nature of things(必然的に)
- on accident(偶然にも)
- of course(もちろん)
文章の前後関係・論理関係
直前の会話内容との前後関係や論理的な関係を示す表現も、単発で発して違和感のない表現です。副詞・副詞句および接続詞が使えます。
(つまり、私の家系は長生きだ。)
(だから私はこれを選ぶ。)
- thus(このように)
- namely(すなわち)
- accordingly(それゆえに)
- therefore(こうして)
- in short(要するに)
- so to say( まあ言ってみれば)
- more precisely(厳密には)
- in other words(言い換えれば)
話者の情報に対する態度
これから話す内容を自分はどういった思いで話すか、という心境を軽く披瀝してしまうという手もあります。
(率直に言うと君の言っていることはばかげていると思う.)
前置き表現は丁寧さ柔和さも表現できる
ある種の前置き表現は、文章の方向性を事前に遠回しに伝える表現として機能します。とりわけネガティブな内容を伝達する場面では、「残念なお知らせがあります」的な前置きとしてかなり真摯な姿勢が表現できます、
残念ではございますが、お引き受け致しかねます
これは穏便な意思疎通のコツとしても是非活用されたいところです。
前置き表現を駆使するためのコツ
効果的な前置き表現を使いこなすためには、その表現を知っているだけではなく、とっさに言えるくらい身近な語彙として体得しておく必要があります。
また、話の全容をまずは自分で把握するという思考パターンを身に着けることも必要となるでしょう。何を言わんとしているのかを自覚する、という、普通なら無意識的に行っていることを、あらためて自覚し直す必要がありそうです。
はじめに「言いたいこと」そのものを思い浮かべて、文章の全体像を描く
文修飾表現の役割は、「言いたいこと」への前座、橋渡しです。後に続く文章がどんなことを言いたいのか、それを思い浮かべてから適切な文修飾の副詞や副詞句を選びましょう。
意識的に使用して口で覚える
積極的に英会話の中でアウトプットしていきましょう。文修飾が表す、先の4つの内容(「情報への確信度」など)を意識して、それぞれに当てはまる内容を話そうとするたびに文修飾語を使ってみてください。
(ただし、使いすぎて口癖にならないよう注意!)
知っている語彙が文修飾に使えないか試してみる
知っている副詞や品詞の組み合わせが文修飾に使えないか試してみましょう。一つ一つ文修飾語として新規で語彙を増やすのには、とても時間がかかります。しかし、happilyやclearlyなどそれまで知っていた平易な単語が文頭に持ってくることで、文修飾の副詞として機能することがあります。従来の語彙力で簡単に文修飾の表現の幅を広げられるので、まずは既知の単語から文修飾に挑戦するのも良いでしょう。
学 習中の言語を使ったコミュニケーションは、文章を頭の中で組み立てる(思考を文章化する)だけでもいくらかは手間取ってしまうものです。言い淀みながら話 せば会話も間延びし、話の内容も伝わりにくくなりがちです。もちろん、学習中の身ですから、言い淀んでしまうことは仕方のないことです。
まずは文章の全体像を思い描き、その内容に沿った前置き表現を最初に述べてみるようにしてみましょう。続けて話す内容もまとまりやすくなり、情報もより正確に迅速に伝わるようになるはずです。