ビジネスシーンを中心とした英語のメールの書き方は、日本語のビジネスメールとは少し勝手が違います。適切な英語表現の把握もさることながら、英語圏のビジネス文化に適した形式や考え方を把握しておくことも大切です。
実際にメールを作成する場合には、具体的な文例をパーツごとに検索して探して参照してツギハギして作成する方法も有効でしょう。とはいえ基礎固めもないがしろにはできません。
英語メール作成の思想は日本語のメールやビジネス作法にも活用できます。
パーツ別うまい書き方の心得
件名の書き方
メールの件名は、受信者が最初に目にする情報です。件名から本文の内容や重要度がまず判断されます。正しく効果的に内容が伝わるように工夫しましょう。
件名がお粗末だと、本文確認は後回しにされてしまいます。最悪の場合スパムメールと間違われて(本文を確認せずに)破棄なんて事態も起こりかねません。
長すぎず短すぎず、十分な具体性を盛り込む
メールの件名は、受信者の使用する端末の環境にもよりますが、一度に表示される文字数に制限があります。
基本的には60字程度が限界とされています。60字を超えた部分に重要な情報を盛り込んでも、件名一覧の表示では見られません。
件名の情報は「重要な情報ほど先頭(左側)に置く」ように意識しましょう。
英語はもともと主語・動詞といった文章上の重要な語をできるだけ先頭に配置する構造の言語です。大事なことは最初に述べる、補足的な情報は後から付け足す、という心構えが大切です。
簡素すぎる件名も考え物です。案件や差出人が不明瞭になりやすく、怪しいメールと区別できなくなるためです。何の件だろうという疑念は心理的抵抗を生みます。
宛名の書き方
宛名はメール本文の先頭に配置される、従って最初に読まれる要素です。形式上必須といえます。
相手側(担当者)がすでに判明している場合は、男性の担当者には「Dear Mr. (名字)」、女性の場合は「Dear Ms. (名字)」のように書いておけば基本的に問題ありません。
担当者の名前も性別も分からない場合には「Dear Sir or Madam」のように表記できます。
博士や代議士といった特定の肩書きを持つ人へ宛てたメールの場合、宛名に添える敬称は原則的に肩書きを踏襲する必要があります。医師の方なら Dr. 、博士なら Professor を Mr.やMs. の代わりに配置しましょう。
→ 英文メールを恩師・先生に宛てて書く場合の要点と便利フレーズ集
「ご担当者様」と表現するには
先方の担当者名が不明の場合、適切な担当者の元へ転送して欲しいという期待を込めて、部署名のみ指定したり、あえて部署名も担当者名も指定しない宛名にしたりする書き方もあります。
行き先を指定しない場合にも宛名表記は形式上必要です。そういった場合には To whom it may concerns, (関係者各位)のような書き方が使えます。
→ ビジネス英語で「担当者」を正しく表現する単語・フレーズ・表現集
すでに担当者がついている状況で、その担当の方を宛先にしないという書き方は、むろん失礼な書き方なのでやってはいけません。
自己紹介は特殊な事情がある場合のみ行う
日本語のビジネスメールでは、本文は基本的に「(会社名)の(自分の名前)と申します。」のように名乗る所から始めますが、英語のビジネスメールでは、名乗らずに用件から入る書き方が普通です。
自分の名前や会社名は、メールの文末に署名として書き添えて済ませます。
自分が何者であるかをあらかじめ説明した方がよい状況はあります。たとえば、取引のない相手に飛び込み営業的に連絡する場合や、担当者の代理として連絡する場合など。あえて自己紹介する際には、なぜ自分の名前を伝えているのかという点も察せるように事情を伝えましょう。
返事を期待している旨を言い添える書き方
回答・返信が必要なら、それと伝わるように一言添えましょう。
早めにご連絡いただければ幸いです。
返信いただければ幸いです。
英語の手紙やメールで「お返事くださいね」と伝える上手い言い方
本文の書き終え方
メール本文で用件を述べ終えたら、お礼の一言を述べて、スッと切り上げましょう。余談や四方山話は不要です。
ただし最後に一言お礼は述べておきましょう。今後の関係がよりよいものになりますように、という希望的なメッセージも有効です。
Thank you for your understanding.
ご理解いただきありがとうございます
「よろしくお願いします。」は他の表現で言い換える
日本語のビジネスメールでは随所に「よろしくお願いします」の後が挿入される向きがありますが、この「よろしく」はかなり日本語の独特の語彙であり、ぴったり対応する英語表現がありません。また、ビジネスメールで無駄に連呼するあり方も好まれません。
ここぞというポイントに絞って、I appreciate you. (感謝申し上げます)のような感謝の一言を述べると、日本語の「よろしくお願いします」に通じるニュアンスが伝わるでしょう。
→ 英語で「よろしくお願いします」「よろしくね」のニュアンスを正しく伝えるシーン別フレーズ集
末尾の結びの一言として「よろしくお願いします」と述べる場合、英語には定型フレーズがありますので、結びの言葉に代替させて表現しましょう。
結びの言葉の書き方
英語のメールの「結び」は特定の定型フレーズが用いられます。日本語にも一応「敬具」「草々」のような言い方があり、これは半ば廃れつつありますが、英語では電子メールでもビジネスメールでも様式としてしっかり残っています。
結びに用いられる表現は何種類かあります。Sincerely, や Best regards, などが代表的でしょう。必ず直後にカンマを打ち、改行して自分(差出人)の名前を書く、という形式が取られます。
署名欄の書き方
メールの最下部には差出人の情報をまとめて記載します。氏名、担当部署、企業名および所在地、連絡先、といった名刺代わりの情報をまとめて記載する方式が一般的です。
署名欄は個性的な内容にする必要はなく、むしろテンプレートに沿った形式が好まれます。事務的に用いられる部分なので、扱いやすい方がよいのです。
一般的には、名前、部署名、会社名 と所属範囲を徐々に広げるように書きます。記載項目の種類や前後順は多少前後しても支障ありません。
- 名前
- 部署名
- 会社名
- 会社所在地
- Eメールアドレス
- 電話番号・FAX番号
- WebサイトURL
→ 英語ビジネスメールの「署名欄」の正しい書き方・デザイン・フォーマット
これだけ知っていれば結構サマになる定型表現10選
話題を示す表現「regarding ~」(~に関して)
メールの話題をはっきりさせることができる表現です。「regarding the issue of ~」(~の件に関して)、「regarding the problem」(その問題に関して)のように使います。文頭で「I am writing to you regarding ~」(~の件についてご連絡申し上げます。)のように書くこともできます。
確認を求めるための表現「We would like to confirm that ~」(~であることを確認したいのですが)
相手に確認を求める際に使えるフレーズです。「We would like to ~」(~したいのですが)という表現は、要件を述べるための言い回しとして様々に応用することができます。
丁寧なお願いの表現「We politely request that you ~」(~して下さいますようお願い申し上げます)
相手にお願いをする際に使えるフォーマルな言い回しです。「Could you ~?」という言い方でも丁寧にお願いができます。さらにくだけた表現には「Can you ~?」があります。
謝罪のための表現「We apologize for ~」(~について謝罪いたします)
謝罪に使えるフォーマルな表現です。「We apologize for the inconvenience.」(ご不便をおかけいたしましたことを謝罪いたします。)のように使います。「We are sorry for ~」「Sorry for ~」のように書くと、くだけた印象になります。
メールで定番の表現「If you have any questions, please contact us at any time.」(ご不明点等ありましたら、いつでもご連絡ください。)
ビジネスメールだけでなく、様々な場面使われるお決まりの言い方です。必ずしも書かなくてもよいフレーズですが、応用しやすく、「Please call me at XX-XXXX-XXXX.」(私にお電話ください。番号はXX-XXXX-XXXXです)のように電話番号を示すこともできます。
文末に使える表現「We are looking forward to ~ing」(~することを楽しみにしています)
手紙の定型文としても使われるフレーズです。「We are looking forward to seeing you.」(お会いできるのを楽しみにしています。)のように、本文の最後に一言添えたい時に便利です。
結びの言葉「Best regards,」(敬具)
締めの言葉として使われる表現です。慣れている相手に対しては単に「Regards,」とも書きます。さらにフォーマルな締めくくりとしては、アメリカ式では「Sincerely yours,」、イギリス式では「Yours sincerely,」と書きます。
相手の名前が分からず、書き出しで「Dear Sir or Madam」のような表現を使った場合、締めの言葉は「Yours faithfully,」を使うことが一般的です。
英語のビジネスメールでは、手紙よりもくだけた英語表現が使われることが一般的です。そのため、初回のメールではフォーマルな表現、知り合いとのメールではくだけた表現、といった使い分けができるとベストです。
お決まりのフレーズを使いながらビジネスメールをやりとりするうちに、定型表現は身につけることができるでしょう。